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6話 始まり

 学院長が「久しぶりだな」と声をかけた後しばらくの沈黙が続いた。学院長はルークの顔を見る事ができなかった。ルークも俯いたままで「学院の災いの時以来だね。」と答えた。「すまなかった。」と言う学院長の声は震えていた。ルークは大きく首を横に振って「全て、僕のせいなんだよ。大預言者になりたいなんて夢を持った僕のせいだよ。子供だったんだ。」取り返しのつかない過ちを心から悔いた静かな声だった。学院長は「でも…、私が預言を現実にできれば大預言者になれるんじゃないかなんて、ルークに軽々しく言ってしまったから…。」。ルークは再び首を大き振って学院長の言葉を遮った。ルークは「いいや、僕自身がそれを聞いて本当に預言の内容が現実になればいいなと願ってしまったからだよ。」と俯いたまま答えた。「でも、僕が預言書に書きたかったことは災いではなく、人々への祝福だったんだ。それに今なら預言を現実にするなんて馬鹿げた事だとわかるけど、あの頃の思慮の足らなかった僕は毎日祝福を生み出そうと部屋で練習してたんだよ。ほんと、馬鹿だよね。」と悲しげに笑って、取り返す事のできない時間を思っているようだった。


 「僕はあの虹色の光が出せるようになった時は嬉しかった。僕にもあの虹色の光は何かわからない。でもそれがすごく綺麗で、見ているだけで祝福が与えられている気がしたんだ。そしてそれを預言書に向ければ祝福になるんじゃないかって…。子供だった。」。ルークは俯いたままだった。昔、学院長はルークの部屋から漏れ出る光を見たことがあった。学院長はルークの次の言葉を待っていた。「始めのうちは祝福が預言書に現れたんだ。でも僕は、もっともっとと…欲張ってしまった。そのうちに僕の虹色の光はどんどん強く大きくなっていった。強く大きくなり過ぎたんだ。」。再びルークは押し黙った。再び長い沈黙が続いた。両手で顔を覆い、苦しそうな声で「預言書に災いの預言が現れるようになって、現実に災いが起きてしまったんだ。そして、その災いを止める力があの虹色の光だともわかった。本当に現実になってしまったんだよ。」。 長い沈黙の後、ルークは静かな声で「災いは虹色の光の副産物なのかもしれない。だから、僕のせいなんだ。だから預言書を燃やしてしまおうと思ったけど、その時には虹色の光と預言書が反発しあって、僕はあの預言書に触れることすらできなくなってた。でも僕は自分の責任で命に変えても止めなければいけないことだけはわかってた。」。


 学院長は「私は預言が現れた時しか、お前の事を思い出せない。そして、どんなに災いの下に行ってみてもお前の放つ虹色の光しか見えない。ただ一度だけ、学院の災いの時にだけお前に会えたのに、その機会を失ってしまったんだ。そしてお前が災いを消滅させると全て忘れてしまう自分が許せない。どんな預言をしたのかさえ残らないのに…ただシュビラムと言う名前だけが記憶に刻まれ、お前自身の事は忘れられてしまう。本当に不条理だ。そんな私も預言書を毎日、訳もわからず確認するだけ…。すまない。」と学院長もまた過ぎてきた長い時間を思って涙が溢れた。


 「ありがとう。災いと共にでも、僕を思い出してくれるのは兄さんだけだよ。それだけでもありがたいと思っている。 だから学院の災いの時に兄さんに会えた時はすごく嬉しかった。」。ああ、だからあの時ルークは私の方に振り向いてくれたんだと学院長は嬉しかった。

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