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3話 写真

 アリーアの森の家に学院長が預言書を持ってやって来た。学院長は預言書を見せてアリーアに尋ねた「アリーアさん、これに見覚えは?」。アリーアは首を横に振った。学院長はアリーアの様子を見ながら静かに話を始めた。「これは学院の図書館で保管されている預言書なのです。誰の目にも触れないように奥の本棚に置かれています。そして、私自身が常に預言書の存在と内容を確認しているのです。」そこまで言うと学院長の表情から威厳というものが消え、自信をなくした表情になった。「恥ずかしい話なのですが、私はなぜこの預言書をいつも確認しているのかがわからない。でもそうしなければいけないと心が訴えてくるからそうしているのです。いつもこの預言書は空白なのに、毎日確認しているんです。」。アリーアは何かを言いかけたがやめて、学院長の話を聞くことにした。


 学院長は話を続けた。「昨日、預言書を確認した時、いつもと同じ空白なのに、それまではなかった物がこの預言書に挟まっていたのです。」そう言うと一枚の写真をテーブルの上に置いた。 その写真にはアリーア本人と、もう一人がぼんやりと写っていた。顔も姿も判別ができなかったが、ただアリーアよりも身長が高いことから、たぶん男性ではないか…ということくらいしかわからなかった。 アリーアは見た事がないのに、こんなにも懐かしく愛おしく、悲しく、寂しい、複雑な感情が込み上げてきて涙が流れた。嗚咽が漏れそうになる口元を手で覆った。声にならない声を手で押し留めた。学院長は優しく「この写真にも見覚えはありませんか。」と念の為に聞いたが、アリーアはただ首を強く横に振るだけだった。でもアリーアの今の様子から記憶になくても心に刻み込まれているのだろうことは容易にわかった。


 学院長は「あなたも記憶がないのに、心だけが覚えている…。私と同じなのですね。」と言うと、写真だけをアリーアに渡し、「もう帰ります。」と告げて、学院に戻って行った。きっとアリーアは自分と同様に何も覚えていないのだろう。


 アーリアはまた一人、森の湖を訪れていた。あの写真に見覚えはないのに、苦しい。あの写真に写っているもう一人を思い出すのが怖かった。でも思い出したい、思い出さないといけない、忘れたくない…そう思いながら、一人湖を見つめていた。

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