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11話 役目

 アリーアは、学院長の言葉を何度も何度も繰り返し、自分の役目を考えながら街を歩いた。その道は、かつてルークと一緒に歩いた道を辿っていた。神殿のところまで来ると、あの震えたルークが蘇ってきた。すると街の人々が上を見ながら恐怖に慄き、叫び声をあげながら散り散りに走って行くのに気づいた。アリーアも街の人が逃げてくる方向の空を見ると黒い雲が広がっていくのが見えた。アリーアはこれが災いだとすぐに認識できた。過去にも見たことがある。アリーアは呆然と立ち尽くしてしまった。すると、人とぶつかった。相手はすごい形相でアリーアを見ると彼女の腕を掴んだ。


 彼女の抗う声は災いから逃げ惑う人々のそれと同化してしまった。少し離れた古い建物に連れ込まれるとそこには男の仲間たちがいた。固く扉を閉め、窓から黒い雲を見上げていた。黒い雲は収まらず、次第に近づいてくると「ここはやばいんじゃないか?」と言う者も出てきた。アリーアは奥の薄暗い部屋に投げ込まれた。目がその暗さに慣れてくると、子供や女性のエルフたちが震えていた。アリーアはそこで最後の学院長の言葉を思い出した。ああ、自分が災いの真っ只中にいる、このままでは自分の役目は絶対に果たせない事に動揺した。自分の身に起こっている恐怖よりも、ただルークの為になんとしても役目を果たさなければと思っている自分がいた。なのにこの醜態はなんだ、ルークの悲しみを取り除けない自分を呪った。それでも「大丈夫よ。きっと助けが来るわ。」と囚われた人たちを励ましながら自分自身にも言い聞かせるしかできなかった。


 街の人々は、この大風を凌ごうと家に入り、固く戸を閉めた。学院長もまた災いの地に迎い、人々の避難を促していた。するとフードを深く被りマントを羽織って、災いの強い風が吹き荒ぶ街を「アリーア」と名前を呼びながらアリーアを探しているルークに出会った。学院長は彼女がまだ森に戻っていないことを聞いて、言葉を失った。「アリーアさんはあの災いの雲の下にいるかもしれない。」。ルークのマントが煽られ、フードから顔が見えた。その額には「刻印」があった。学院長は一人の青年の、ルークの逃れられない運命を再び目の当たりにした。


 オーランもまた預言書を抱いて、災いの地に向かっていた。どうか、子供たちが無事でいますよう、連れ去られた人々皆、無事でいますよう、天の神に祈り続けながら進み続けた。そしてこれまで何度も災いに立ち向かってきた一人の青年を助ける事ができる、たった一人の女性に会うために前に進んだ。その女性はどんな人なのかも知らない。それでも、自分の役目を果たすために進んだ。災いの大風は行手を阻むように、強く吹き荒れていた。


 黒い雲はどんどん大きくなっていった。エルフの血を集める者たちもその恐怖に慄いていた。逃げようと建物から出ていこうとする者は黒い雲の塊となった災いに飲み込まれていった。残った者たちは戸を固く閉ざし、戸の前に家具を置き、戸が開かないようにしたが、あっという間にその戸は家具ごと吹き飛んでしまった。次の瞬間、男たちは大風に吹き飛ばされ、災いの中に消えていった。聞いたことのない叫び声がアリーアたちをさらに恐怖に陥れた。アリーアたちは必死で吹き飛ばされた家具の陰で耐えた。今、私だけがこの災いの中で倒れれば、ルークを助けるチャンスを永遠に失ってしまう。そうなればルークの戦いがずっと続くことになってしまうのだと、今はっきり、学院長の言葉の意味の全てを理解する事ができた。なんとかここから出なくては。


 その時、一瞬、風が弱くなった。小さな風が「アリーア」と呼ぶルークの声を運んできた。「ルーク」と必死で答えた。ルークはアリーアの声に気づいた。飛ばされた家具の下敷きになったアリーアを助け出すと「ごめん。時間がないんだ。もう行くね。」とアリーアに口づけし、災いに向かっていった。額にはアリーアの知らない「刻印」があった。ああ、学院長が言っていたことは本当だったんだと、涙が溢れた。でも私には預言書がない。ルークを助けられるのは私だけなのに。「だめ、今行ってはだめ…。」その声は風にかき消された。

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