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神遊び唄  作者: オピオイド
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天の浮橋 前編




世界は闇に閉ざされた。

古い言い伝えによれば、それは古の魔王と言う現象によるものらしい。

起こった理由は二つある。

一つは世界の成り立ちだ、世界が生まれたときにまず光があった。

しかし光がある所には、影がある。

光は天に上り太陽となり、影は地に降り大地になる。

それが一つ、もう一つは世界に生き物が増え、ある一定の水準に達した時だ。

地に降った影が凝り固まったのが大地で、そこより生まれたのが人などの動植物だ。

大地だけで凝り固まっていれば問題はなかった、生まれた動植物が問題だったのだ。

その世界において生物は死ぬ度に見えないほどの影を噴出すのだ、普通の生物の営みだけならば空へと散った闇はゆっくりと大地に降り注ぎ地へと帰るのだ。

しかし、世界にとって予想外の問題が起きる。

人間同士が争いだし、大規模な戦争が起き大量の死が蔓延したのだ。

濃度が濃くなった影『闇』を身体に蓄えてしまった植物や動物がモンスター化し世界を荒らす。

さらに問題なのが闇が生まれる前の胎児に宿った場合、『魔族』となるのだ。

世界の光と闇のバランスが崩れ、世界が混沌に包まれる。

光と闇が混ざり、世界が始まりに戻ろうとしていた。

さすがに、此処まで来ると世界も慌てるせっかく此処まで安定した世界を元の状態にも出されるのは困ると言う事だ。

そしてそれを打開するのが『魔王と勇者システム』だ。




世界の果て、その中でも闇の濃い場所にその城『魔王城』はあった。

その城の最深部、王の間へと続く扉の前に彼らは居た。


「みんな良いか? これが最後だ」


扉の真正面に立つ男が振り返り、自分の後ろに立つ面々を見回して言う。

軽装の皮鎧を着けた彼の後ろに立つ人間は様々だ、戦士風の重鎧を着た男、弓矢を背負ったエルフ、ローブを着た魔術師風の女、何かしらのシンボルをあしらった法衣を着た男、そして魔族の肌をした見目麗しい女。

バラエティに富んだ編成だが、ここまで来るまで色々な事があったのだろう。

それぞれの目には色々なものを越えてきた色があり、何かしらの決意の光があり、信頼を持った表情があった。

扉の目の前に立つ男は、それぞれの目を見回し一つ頷いた。


「俺達の旅を終わりにしよう!!」


そして扉を開く。









マリアージュ・ブランケット、フランス生まれのアラブ系フランス人。

褐色の肌を持つスレンダーな体型で、栗色の長い髪から覗くその美貌はその整った顔つきからは反し柔らかく、聖母のような印象を持つ女性だ。

彼女の仕事はこの地『天の浮橋』のハウスキーパーのようなものである。

何故、様なものなのかそれは…。


「こんにちは。こちらではお顔を見ない方々ですが、どちらさまでしょうか?」


マリアージュはバンと開け放たれた扉から見える六人の男女を見て、深々とお辞儀をした後で笑顔で問いかけた。


「anpanp:a!!」


それに対する答えは意味不明の未知の言語。

どうやらこちらの言葉が通じていないらしいと判断したマリアージュは、ハアと肩を落としながらもう少しコミュニケーションをとろうと思った。

しかし、その思いも空しく一番嫌な形で終わる。

相手の戦う意思が感じ取られたからだ。

仕方がありませんね、とマリアージュはあきらめた顔でスッと右手を水平に上げた。


「stnit:aoahen!!」


何かしらの詠唱と思われる力が後衛の魔法使い風の男から放たれる。

それは人の大きさほどの巨大な炎球、当たればただじゃすまないどころではない人一人が灰になってしまうほどの白い炎だ。

自分の命に関わるほどの高温の炎球、それに対してマリアージュは形の良い細い眉毛を崩さず見えないものを掴むように手を握りこむ。

するとどうだろう、マリアージュへと進んでいた炎球が一瞬にして潰されて散らされる。

それに驚いたのは後衛の魔法使いではなく、それと同時に炎球の影から矢を射っていたエルフの女性だった。

もしも、炎球を受け止められた時の為にと、ノーモーションで気付かれないように三本射っていた。

しかし、それは思いもがけない結果で無駄にされる…それは炎球ごと潰されたのだ。


「vtanoimgpi!!」

「何を言っているか解りませんね。…これは観星さんを待つしかありませんね」


相手もさるもの、動揺も一瞬で落ち着き前衛の二人の人間が神官風の人間から掛けられたので魔法だろう、人ではありえないスピードで突っ込んできた。

重戦士の幅広の剣と皮鎧の男の長剣がマリアージュに迫る。


「!!」

「通りません。我々神に連なる『能力者』には、あらゆる力を減少させる『神域』があります。それと私には見えざる盾と矛がありますので勝ち目はありませんよ?」


前衛の二人が驚きに固まる、それもその筈だマリアージュの目前五センチで見えない何かに阻まれたように剣が止められていたのだから。


「言葉が通じないので一方的になりますが…『西方天』『コンプレッサー』のマリアージュ。それだけを覚えておいてください、いきます…」


殺気と言う程ではないが、優しげな笑みを浮かべるマリアージュのその姿とは裏腹に裂帛の気配が立ち上る。


「ただいまー」


日常の一コマのような声が上がるまでだったが。

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