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神遊び唄  作者: オピオイド
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説明してみよう!! 後編

「山から染み出る水がエネルギーとすると川の流れのように纏まったエネルギーは何処に行くのか?水ならば海、漏れでたエネルギーなら?その終着駅の一つが此処なのよ。」

「今一よく解りません」

「だよねー」


なんか専門的な話が間にあって、それを抜いて話して貰っているのであろうけど私について行ける頭がなかっただけだ。

まあ、なんか変な雰囲気になったけど、空気が抜けて妙に軽くなった感じだ。


「まあ理論はともかく、ぶっちゃけあらゆる世界から流れた様々なモノが集まる場所って認識してればいいわ」

「何か凄い所ですね」

「それぐらいの認識でじゅーぶんよ」


話しながらも大分課題の方も終わった様で彼女は手を止めると簡単に纏めて脇においていた鞄へと入れる。

それが終わると今度はテーブルへと手をかざしお湯の入ったポットとティーセットを文字通り出現させる。


「便利だよねその力、以前もそんな力を使う人とあった事あるけど…すごくスムーズだ」

「そう?私ぐらいの存在になると、これ位は当たり前だと思ってたけど?」

「どの世界の当たり前だ、馬鹿者」


突然の声に私は振り向いた。

大広間の天井を支える四方の壁にある観音開きの扉から一人の男が入ってきていた。


「誰?」

「うちの居候兼私のボディガード」


彼女に顔を近づけて聞けば、あっさりとした返答が帰ってくる。

あいにく夜の帳が落ちているので、その人物像はハッキリしていない。

しかし、その男が近づけばその輪郭はハッキリして細部もよく解る。

筋骨隆々とした上背のある身体、特徴的なのはそのアッシュレドッシュの髪の色とふれるもの全てを焼き尽くすような精悍な瞳だった。


「誰だ?」

「オリ子ちゃん」

「そうか」

「ちょっと、流さないで欲しいんですけど。それと私の名前は…」


相変わらず私の名前を捏造する彼女、そしてそれをさも当然のように流して椅子に座る二人に私は慌てて名乗ろうとする。

が、唐突に差し出されて手によって遮られるた。


「はじめまして、私の名はエルフェルトと言う」

「あ、えっと。初めまして私は…」

「ストップ」


そして気を取り直して名乗りを出ようとするとまた遮られる。


「ちょっと何で私の名前を聞いてくれないの?」

「何でと言われても、ねえ?」


つどつど遮られる事に文句を言うと彼女はエルフェルトと呼ばれた男を頭を傾げながら向く。

顔を向けられた男は小脇に挟んでいた雑誌をテーブルの上に置くと、いつもの場所と言わんがばかりの自然さでテーブルの端の椅子に座る。


「悪く思うな、我々高位の神にとって君ら人間の名前は簡単に呼べんのだ」

「どう言う事ですか?」


目の前でゴールデン~ゴールデン~ル~ル~と歌いながら紅茶を淹れる彼女とは違い、目の前は厳格さを感じた私は思わず姿勢を正して聞いてしまう。


「君は物理学や量子論は得意かな?」

「…えっと、ごめんなさい。物理は苦手です…さわり程度ならば、後量子学は全然…」

「ならば、簡単に話そう。あらゆる物にはエネルギーが宿る、それは君ら…ああ、すまないもっと簡単なほうがいいか」

「はい、異界の魔法とかはそう言うのは学んだんですけど物理とか化学はこれくらいしか」


そう言いながら私は手伝わされた彼女の宿題を見せる。

すると、彼は眉間に皺を寄せながらも優しげな声で答えてくれた。


「根本は変わらない、ただ日本語が英語やマシン語に変わったぐらいにしか過ぎないんだ。例えばだ、炎を出せるか?」

「はい」


炎を出す事は問題ない、力の大元・大気中のマナを取り込み自分のイメージする炎を思い描いて出すだけだ。

幸いこの世界のマナは異常なまでに濃い、さっきの説明どおりならばこの世界のエネルギーレベル最高位にあるのだろう。

私は炎を掌に出し掲げ見せる。


「ふむ、詠唱も無しに出すとはそれなりの腕は持っているようだ。」

「ありがとうございます」

「さて、今出してもらっているその炎、君の認識としては炎を作っただとおもう。しかし、それは見方を変えれば違う。君のイメージが君の認識したエネルギーの低い空間を、支配して炎と言う事象を引き起こしているに過ぎない」

「?」


難しい…私は彼が何を言っているのよく解らない。

しかし、何となく解った事もある。

以前魔法を学んだ時に、先生に言われた事がある『我々の認識した世界はその個人個人にしか解らない。だから、お前が赤と認識していたとしても他人には青と同じ色だと思っていてもある人間には同じ色と思うだろう』と。

恐らくは、今言われた事もそれと同じなのではないだろうか?


「まあ、何となくでいい。ようするにだ、神とはエネルギーの頂点であり『確定するもの』なんだ。そんなモノがエネルギーレベルが低い人間の名を呼ぶのは支配力が溢れんばかりの我々が安易に呼ぶと、存在レベルで支配しかねないと言いたい訳だ。解ったかな?」

「何となく…ちなみに難しく言うと?」

「量子トンネル効果や量子ジャンプによる共鳴効果の説明…ああ、この世界の波動学の『存在と波』の講義で全35コマ…だが」

「すみませんでしたー」


何となく、平謝りしたくなって素直に謝っておくことにする。

そして、気づいた事もあり私は彼女に向き合う。


「それと、ありがとう」

「ん?何が?」

「貴女が私の名前を呼ばない訳、私に友達だって言ったのが本気だって解ったから…ごめん」

「別にいいわよ…」


それは彼女なりの優しさで、対等な友達と言う関係になりたい意思の表れだったんだと私は思った。

だから、私は気付けなかった事に対して謝った。

そうすると彼女は、桜色の小さな唇を尖らせ、顔を他所へと向けていた。


「もう、謝罪ぐらい素直に受け入れてよ…それとオリ子はやめて、せめてもうちょっとカワイイ愛称を…」

「却下ー」

「ちょっ、何で!?」

「今の流行だからー」


騒ぎながら、夜の闇はさらに深くなる。

今日はなんだか楽しい日だ。

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