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神遊び唄  作者: オピオイド
14/43

間話 頂上決戦 一回目

時は遡る事、五日前の飛騨高山。

名古屋の北にある高山盆地の中にある町。

その中の森林の比率は高く、約九割近くと森林に囲まれている緑の町。

その町の端、深い森に囲まれた無機質な建物。



[館山科学技術研究所]



地下通路




栞は対峙していた。

目的の場所は目の前だった、10メートル先に見える分厚く物々しい雰囲気を対爆扉の向こう。

彼女の目的は扉の向こう側に居るとされている、とある人物を倒す事だった。

ここまで来るのは彼女にとっては簡単だった。

警備員をこちらが認識するより先に一瞬にして打ち倒し、何十もの特殊合金製の扉を能力と励起法による力任せで難なく打ち壊しここまでたどり着いた。

そして後は目的を達するのみだった。


中に入り、この中である実験を行う中核人物を栞の両手に携えられた刀──小太刀──で切り倒すだけだった。

それには目の前に居る、扉の番人の様に立ち塞がる人物を打ち倒す事のみ。


「退け」


目の前に立つ長身の男が口を開く。

低く静かな声色だが、有無を言わせぬ力がある。

白銀に輝くレインコート、黒いインナーと黒いカーゴパンツに身を包んだ男。

コートのフードを深く被り目を隠す、その視覚的な異様さとは対照的に存在感は擦れる様な幽鬼の様に立っていた。


「あなた何者?」


栞が聞く言葉は男には届かない。

いや、彼女は最初から話が通じるとは露とも思っていなかった。

目の前の男から栞は自分と似たような臭いを感じ取ったからだ。

その証拠に男は開いたレインコートの左腰に手を持っていき、腰から鈍色の塊を引き抜く。

それは鉄の塊、二尺五寸の反りを持った刀剣。


「退け」


とりつくしまもなく、ゆっくりと持ち上げる切っ先は真っ直ぐと栞へと向く。

フードに隠れて薄っすらと見える眼光は剃刀の様に鋭く、射抜くように見ていた。


「それは出来ない相談ね!!」


爆発のような突進、それと同時に極限まで捻り込まれる身体。

ギインッと打ち付けられる鉄と鉄。

栞の左手に握られた小太刀が斜めに構えられた刀で止められる。

擦れ合うような軋る音が通路に響いた。

それはリノリウムの床を踏みしめる音であり、鉄と鉄が軋む音でもある。


「やるわね。それじゃあ・・・これはどう!!」


心臓狙う右手の刺突。

だが男は左足を後ろに引いて避け、同時に閃く左脚。

閃光のミドルキックは空を切る、栞の左脇腹を薙ぐように動く足は彼女の遥か頭上。


「あっぶな!!」


栞は左脚が閃くのを見るより早くしゃがんで避けていた。

そして男の足が伸び上がると同時に、栞の左の内薙ぎ。

だが男はトンッと右足一本の足首を使ったのステップを踏み軽く下がる。

その独特のステップに栞は目を見張った。


「…あんた、その歩法は…神道流…」

「退け」


見覚えのある歩法に驚く栞。

それもそのはず、その歩法は自分も無意識に行っている歩法だからだ。

だがそんな事は栞にとって、どうでも良い事だった。

己の今為す事を為すだけ、ただそれだけだと小太刀を握る手に力をこめた。


「おもしろい…あなたと私の神道流、どちらが強いか勝負だっ!!」


ダンッ!!


再び踏み込む、今度は床を踏み砕き破裂する程の強力な突進。

先程の踏み込みとは比べようも無いほどの速さ。

周りに人間が居れば驚愕していただろう、それほど普通の人間なら目にも留まらぬ速さだったのだ。

だが、その人間離れした驚愕すべき速度をを叩き出した栞は逆に驚いていた。

異常なスピードと限界まで絞られた身体の捻り、それから生み出される神速の一撃が避けられたのだ。


「遅い」


一瞬にして栞の目的地へと続く扉の前に移動する男。

そして、栞と同じ様に体を捻り。

マズイと栞が思うよりも早く、


爆ぜた。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


気付いた時には目の前どころではない。

胸の中央に突き刺さる足の裏。


「ガアッ!!」


瞬間的に身体を硬質化する『儀式』と励起法による瞬間的な肉体強化でガードしたが、10メートル近くを刹那で跳び抜けるスピードから繰り出された蹴りは衝撃となり身体を貫いていた。

衝撃と共に吹き飛ばされる栞、その脳裏には蹴られた事よりも相手の動きが見えなかった悔しさだけ。

その事象を引き起こしたレインコートの男は靴音を響かせながらゆっくりと近づいて、倒れる彼女の目の前で見下ろすように止まった。


「…」

「…今の技、噂に聞いた霧島神道流蹴技『雷光』ね。…解ったわよ、退く、退くわ」


見上げながらやや自嘲気味に言う栞に投げかける視線は、酷く冷たく鋭い。

だが見詰め合う時間はそうも長くない、彼女の言葉を聞くやいなや踵を返し対爆扉を文字通り『切り裂いて』中へと踏み込む。


「ねえ、あなた名前は? 私の名前は守部栞」


男は歩みを止めて、振り返る。


「霧島葵」


男は呟く様に喋ると扉の向こうに消えていった。

白銀の陽炎を残して。

白銀のレインコートや霧島の名前で気付かれた方も居ると思いますが内緒ですww

同じ執筆している『変わる世界』もしくは『いつもの日々に戻るまで』のとあるキャラクターの知り合いとなっております。

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