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物語指南

 


次の日から、公任さんによる古典補習が始まった。


 というか、半雑談みたいな感じ。それプラス公任さんの自慢話。


「『源氏物語』って、こんな話だったんですか⁉ 主人公の光源氏、浮気し過ぎでしょ。いくらイケメンだからって許されないよ」


「お前の時代では受け入れられないか?」


「法律違反ですよ。誘拐みたいなこともしてるじゃないですか。幼い紫の上を自分好みに育てようとか、マジでロリコンですよ。……まさか、公任さんもこういう趣味じゃないですよね?」


「ろりこん……。私には妻も子もいるからな、そんなことは出来まい。もっとも、光源氏は葵の上という妻がいたがな」


「うっわ、最っ低! ……そういえば、公任さんの奥さんとお子さんはドコですか? 一度も見たことないんですけど」


「この時代では普通、妻子とは共に住まんのだ」


「えぇーっ! そんなの別居じゃないですか。離婚秒読みですよ。私の時代ではだいだいの家族は一緒に暮らしますよ。夫が妻と離れて暮らすから、浮気するんじゃないですか? 公任さんもたまには子どもと遊ばないと駄目ですよ」


「まあ、そのうち我が子には和歌や漢詩の手ほどきをしてやってもいいと考えているだな。まだ息子も幼いのでな」


「子どもの頃から英才教育ですか。それで、お受験とか」


「お受験?」


「子どもを良い学校に入れることです」


「学校? 宋の国の大学のようなものか?」


「そうですね。大学って言葉は昔からあるんですね」


「ああ」





「そういえば、公任さん」


「何だ?」


「私、恋愛物のドラマが好きなんですけど、この時代の恋愛ってどんなものなんですか? 公任さんは奥さんと何で結婚したんですか? ちょっと聞かせて下さいよぅ」


「この時代は、ほとんど家同士が勝手に決めた結婚だからな。正式に結婚するまで、相手の顔も分からん。私もそうだ」


「それ、私だったら絶対に嫌です。自分の本当に好きな人と結婚したいですし。もし、結婚相手が公任さんみたいな、超ナルシストの嫌味男だったら最悪っ!」


「何だと。私とて、お前のような阿呆が嫁に来たら嫌だ」


「また阿呆って言った! 本当、あなたみたいな人、家が取り持ってくれなかったら、絶対に結婚はできてないですよ」


「……天才の私でも、恋愛に関しては上手くいかなかった。女はよく分からん」


「ほら、やっぱり! ……なんか、もっとロマンチックな恋愛はないんですか? 家同士の結婚じゃなくて、えっと、駆け落ちとか!」


「ろまんちっく……。駆け落ちなら『伊勢物語』だな。恋愛の話も多い」


「わ~、聞かせてくださ~い」


「在原業平という男の恋愛物語だ。在原業平は六歌仙にも選ばれている歌の名手だぞ」


「ロッカセン?」


「歌に優れた六人のことだ。『古今和歌集』の撰者の紀貫之が選んだ」


「へえ~、で、その業平って人は、どんな駆け落ちをしたんですか?」


「身分の高い女性との駆け落ちだ」


「わあっ、身分違いの恋! 燃えますね!」


「物語上では女性が鬼に一口で食われてしまってな」


「ひいっ! 鬼⁉ そんなの本当にいるんですか?」


「私は見たことはないがな。陰陽師がいることだし、鬼もいるだろう。鬼退治の逸話も、いくつか残っているぞ」


「桃太郎的な?」


「ももたろう?」


「きびだんご持って犬、猿、キジと一緒に鬼退治するお話です」


「犬、猿、雉? 役に立つのか?」


「でも、お話では鬼に勝ってたし……」




 次の日。


「何してるんですか、公任さん?」


「朗詠集を編んでいるのだ」


「ろーえーしゅー?」


「漢詩や和歌に曲節をつけ、歌ったものだ」


「曲節……。あっ、リズムをつけるってことですね! 作曲家みたい」


「りずむ……。元の漢詩や和歌は私が考えたのではないがな。道真公や貫之公なら知っているか?」


「え~っと。……貫之って紀貫之ですよね。たしか、旅の日記を書いた人?」


「『土佐日記』だ。旅か……。そういえば、最近は都に籠もりっきりだな。久しぶりに出かけたいものだなぁ」


「いいじゃないですか! 気分転換になりますよ」



光源氏はやってること中々やばいですね。

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