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いたいけなほしくず  作者: 有城 沙生
ドウシィとプレマルジナ
6/27

プレマルジナのこと、1

「むーちゃん、むつか」

 お母さんの声がする。

 まだ眠い。

「……むつか、げんきでね」

 お母さん?どこいくの?


「ドウシィ、どうしました?」

 目を覚ますと、お兄ちゃん。

 お兄ちゃんのおなまえ、むづかしくていえない、だから、お兄ちゃん。

「?どうか、してた?」

「うなされてました。怖い夢、見ましたか?」

「…わかんない」

「夜明けまで、まだ時間があります。眠れないようなら、ミルクを温めますか?」

 ぼーとしたあたま。

「んー、これでだいじょうぶ」

 お兄ちゃんのむねに、ぽふっ、てする。

 とろとろと目がとじる。

 とんとんって、せなかをたたいてくれて。

 ふわってなって。

 

 むーちゃんて、だれだろう?

 ドウシィて、だあれ?


 わたし。


 むーちゃん、は、わたし。

 ドウシィ、は、わたし。


 わたし、だあれ?



「わあお!すごい、すごいねえ!」

 ぽふっ、てすると、うまっちゃう。

 ふかふかで、きもちいい。

 けど、これ?

「なんの、どうぶつ?」

「……象、です。大きくていいかと。嫌ですか?」

「ううん。わたしのしってる、ぞうさんはつるつるしてるのに、このぞうさんはもふもふだから、ちがうのかなーっておもったの。ぞうさん、せいかい!」

「そうですね。本来、象に体毛はありませんね。大きい、が良いかと象を選んだのです」

「いーよー!ありがとう!」

 お兄ちゃん、先生みたい。

 わたしがわらうと、お兄ちゃんもえがお。

 バッチが、きらきら。

 お兄ちゃんも、きらきら。


「うー」

 たのしいばっかりじゃない。

 おべんきょう。

 きらいじや、ないよ。

 でもね、ゔー、たのしいのがいい。

「ぼくの名前を覚えるのはどうですか?」

 お兄ちゃん!むずかしいお名前!

 プレマルジナ

 ご本みたいに、きれいな字。

 カタカナ、よめるよ!

「ぷれまるじな。どうゆういみ?」

「お兄ちゃん、です」

「お兄ちゃん、お兄ちゃんなの?」

「そうですね」

 お兄ちゃん、にこにこしてるけど、してない気がする。

 うーん、そうだ!

「おたんじょう日はいつですか?」

「12月24日、クリスマスイブですね」

「わたしとおなじ!」

「えっ?」

「いっしょに、おいわいしようねぇ」

 お兄ちゃん、今度のにこにこは、にこにこ。

「そうですね。お祝い、しましょう」

 にこにこは、うれしくて、たのしい。

 


 おほしさまもきらきら。

 ?

 お兄ちゃん?首、赤い。

 ちょびっとだけど、ぬるっとした赤。

 みず。

 お兄ちゃん、なにかいってるけど、

 きこえない。


 お家だけど、ガラスのなか。

 口に、いたいのはいってる。

 ガラス越しのお兄ちゃん。

 くるしそう。

 わたしが、いいこいいこしてあげるよ。

 けど、すごくねむい。

 おきたら、いいこいいこするね!


「ケーキ♪ケーキ♪」

 今日はクリスマスイブ。

 だけど、私とお兄ちゃんはちょっと違う。

 お誕生日。

 お兄ちゃんが、ケーキを作ってくれる。

 もちろん、お手伝いはするよ。

 たまごを割ったり、バターとかしたり。

 生クリームだって泡立てちゃう。

 泡立て……

 はい。無理でした。

 お兄ちゃんが、くるくるってして。

 あっという間に、ミルクはクリームに変わった。

「へへっ」

 私が笑うと、お兄ちゃんも笑顔。

 フルーツ切って、スポンジ切って、

 生クリーム塗って、フルーツ並べて。

 スポンジのせて、生クリーム塗って。

 絞り出すの、失敗してぶほって出たけど、

 お兄ちゃんがきれいにしてくれて。

 お兄ちゃん、すごいなあ。

 なんでも出来る。


 ねえ、サンタさん、お願いがあるの。

 サンタさん、来るの明日だけど。

 お願い、聞いて。

 あのね。

 ぬいぐるみも、ケーキもいらないから。

 

 お母さん、いなくなっちゃったけど、

 お兄ちゃんといると楽しくてうれしいんだ。

 だから。

 

 お兄ちゃんと、ずっと一緒にいさせてね。

 

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