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いたいけなほしくず  作者: 有城 沙生
ウノスとトレサ
17/30

ウノスとトレサ 後編

ウノスとトレサ編。終わりです。

 

 長く伸びた髪を結い、私は自分の肉体使用期間を反芻する。

 本部にウノスと共に来て1241日。

 対攻撃処置に出撃することは無くなっていた。

 ユニット型式ポステア・プロダクタムver.Ⅰとして、稼働開始して99864時間経過している。

 123の筐体を経て、ここに居る私は26280時間の一体の筐体で過ごして、僅かな肉体の経年劣化を、許容している。


「ポステア!来たよ!」

 ウノスとトレサ。

 いずれ番いとなるであろう二人。

 二人の交流は至って正常に行われている。

「では、今からサツマイモを収穫します」

「わーい!焼き芋!蒸かし芋!大学芋にスィートポテト!」

「トレサはよく、そうもポンポン料理名が浮かぶのな?」

「芋羊羹…」

「それにはまず、サツマイモを土から出しましょう」

「はあーい」


 トレサの知識は、ウノスを軽く上回る。

 見たこともない料理名を即座に並べ立てる記憶力もそうだが、それ以上に彼女は興味を持ったことを徹底的に追及する。

 身体の発育に対して突出しているが、本来の才能がうまく折り合っているのだろう。

 ウノスにも良い刺激を与えていて、ドームにいた時よりも、俄然学習意欲が向上している。

 トレサに追い付こうと勤勉な様は以前では予想だに出来ない姿だ。

 …私のしたことは、ウノスを生命の危機に陥らせた事だけだと思い知る。


「ねえ!ポステア!このお芋さんはどうする予定?」

 と、至ってイノセントに語りかけてくるトレサ。

「そうですね。餅米も収穫出来たことですし、少し手間をかけて“かんころもち”はいかがでしょう」


「それはどんなものなの?」

「まず、干芋を作りますから、食せるのは半月は先になりますけど、面白いと思いますよ?」


「食べるまでに半月?凄い!楽しそう!」

「トレサには気になるとお勧めしました。ウノスは直ぐ食べたいですか?」

「なんだよ、人を食いしん坊みたいに!トレサと一緒にやりたいに決まってるだろ?!」


「そうなんですか?」と言えず、私は言葉を飲み込んだ。

 ウノスはトレサを選んだ。

 それでいいじゃないか。


「汚れてしまいましたね」

 私はトレサにそういうと

「お芋を土から出せば、汚れるのは当然。汚れは洗えば取れる!取れるものは取れば良い」

「なんだよ、それ。汚れるのは嫌じゃないのか?なんか、ちっさい時、汚れると怒られた気がするから、おれ、ちょっと怖くて嫌だな」


「怒ったのはポステア?違うでしょ?ママが、手間が増えるから怒ったんでしょ?汚したことに怒ったんじゃなくて、自分の手間が増えるから八つ当たりしたんでしょ?」

「何か…違うのか?」


「トレィスがママって、よく泣いてたのよ。だから“ママ”って何なのか調べたことがあるの」

「それで分かったのか?」

「分かんない!でも、汚れは洗えば取れるのよ」


 ウノスはまだ合点がいって無いようなので、助け船を出すことにする。

「汚れたら洗いましょう!」

 と、思い切り大きな蔓を引っ張ったら、見事な芋が土を飛ばしながら現れて、ウノスを泥まみれにした。


「ポステア!」

 ウノスが泣きそうになっていて、トレサが、大きな声で笑っている。

 私も、トレサにつられて笑ってみた。


「これ、何?」

 ウノスが、泥の中から見つけ出した小さな翅。

「エフェメラの欠片だね」

  トレサは当然の事のように宣う。


「エフェメラって、天井の、あれ?」

 おや?ウノスはやはり勉強していたようです。

 私が教えていないドームのことも、ご存じです。


「これが、寿命を終えたエフェメラの欠片…」

「命懸けで私たちを外界から守ってくれている…まったく、誰が生き物のバリアなんか、考え付いたのかしら!」

「それでも、おれたちが生きるには最善の方法だとしたんだろう。訳のわからない装置の力を借りないために」


 そう言われたトレサは何かを考え込んでいる、と。

「……すごい!ウノス!そうなのね!思い付かなかった!やっぱウノスは面白い!」

 と、トレサは思い切りウノスに抱き付いた、はいいが、お互い泥を擦り付けあっている。


 まだ、このまま。

 子供のお二人を眺めていたくもなる。


 その日の夜。

「わたし、お嫁にいきます」

 と、トレサが居間で宣言した。

 適応型汎用知性制御中枢の端末が、カタカタと態とらしく音を立てている。

 寝耳に水のウノスには周囲の音が届いてないようだ。

 プレマルジナは……夕食の準備に余念がない。


「「何処にいくんだ!!」」

 と、見事なハーモニーを聞かせたのは、端末とウノスだ。


 ウノスの声に、トレサはキョトンとしている。

「ウノス以外の誰がいるのよ」


「な、なんでわざわざ出ていくんだ?ここでも良かろう?」

 …人工頭脳がどもっているのを、初めて聞いた。


「だって、誰もいないドームは動かしてないのでしょう?それはマズイから、ウノスと新婚生活をします!」

 至って、全うに答えるトレサ。


「こ、ここは?」

 人工頭脳…

「お父さん達がいる限り安泰でしょ?プレマルジナはどうする?」

「コピーを置いときますよ。第7ドームのお陰て、コピーでの運用も可能とわかりましたから」

 第7ドームで一体何があったのだろう。私には知るよしもないが。


「ん。じゃあ、お父さん、おじさま、大おじさま。子供が生まれたら見せに来てあげるから、それまでプレマルジナコピーと大人しく待っててね!」

 てきぱきと用件を割り振っていくトレサは、見事としか言いようがない。


 状態が飲み込めていないウノスはほっとくようで、トレサは私に話しかけてきた。

「ポステアは…また戦闘に出ることになるけど、若くなると思って勘弁して頂戴」

「トレサ…」

 私にまで、気を配ってくれると言うのか。

 まだ、十一歳だと言うのに、全く『舌を巻く』とはこの事なのだろう。


「それに今すぐって、訳でもないわよ。早くても二週間後よ。かんころもちが完成しないもの。そうでしょう?ポステア。あ、さるはつれてっても良い?良いよね?わたしのだもん」

 昼間のかんころもち、そんなに楽しみだったのですね。


「我は~」

「さる通すか、お父さんだったら何処にでもアクセスできるでしょう?大丈夫。お父さんは強い子」

 トレサは、皆を信頼しているのだ、と感じさせる軽口。


 さて、わがウノスにもちょっとは花を持たせなければ。

「ウノス、挨拶を」

 と、ウノスを適応型汎用知性制御中枢のモニターの前へ出す。


「う、ウノスれすっ!」

 と、三度目の正直な様子にトレサもプレマルジナも私も、大笑いした。 


 


 

かんころもちをご存じでしょうか?

ご存じのかたは、是非感想をお聞かせくださいまし。

そして、活動報告の名を借りた、茶番劇へと続きます。

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