表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いたいけなほしくず  作者: 有城 沙生
ウノスとトレサ
14/30

序 関心

新しいお話になります。

よろしくお願いします。

理性の切れる音がした。

 その日、彼に振って湧いた些細な出来事は、それまで押さえていた理性をぶち壊した。

 そこからは、俯瞰。

 己の行動が、まるで幼い頃に見た創作物だった。

 己の欲望と衝動の赴くままに行動した。

 世を儚んだ彼は、世界と心中を決め込んだ。

 彼は、世界の命運を握る術を持った人物だった。


 俯瞰の彼は、世の行く末に一抹の後悔は有ったが、止める術は無く――――否、止める気も無く、ただ眺めていた。

 然して世界は炎に包まれた。


 指の1本で始まった争いに、地上の全ての国は後手に回った。

 対処も出来ずに大過に飲まれゆく世界。

 手出しも出来ぬまま、灰となって消え行く世界の、なんと脆いことか。


 そんな中、唯一防戦を掲げていた国が、あった。

 今後、大戦など有り得ないと、創作に長けた国の、限りなく慰みに近い本気で用意されたモノ。

 人々の嘲笑に晒されながらも、それに携わったもの達はいたって真剣に作り上げ、そして、起動させた。


――――急激な人工現象を把握。

 生命至上国家存続プログラムを開始。

 緊急バックアップ体制を起動。

 全プログラムを緊急転送。

 全機構配下ユニットに告ぐ。

 最優先事項、生存者の保護及び警護。

 如何なる外敵要因より生存者の生命の保護を優先。

 その事項厳守の解釈は各ユニットにて随時最大限に拡張せよ。


 なーんて、事が起こって今現在、生存している人間は私を含めて、十二人だとか。

 まあ、前半は私の妄想だけど。


 トレサ、七歳。

 知っとくべき事は知っときなさい、とプレマルジナとお父さん……人工頭脳から口酸っぱく言われ続けている。

 愚かなる人にはならぬように、て言われるけど、産まれてこの方、人工頭脳としか会話してないから愚かが何なのかも理解しかねる。


 目が覚めたとき、というのかな。

 ガラスのなかで、私は液体に漂っていた。

 アムニオンで満たされた器。

 緑色の光が、ぽつぽつと光っていて、暗い部屋のなか、プレマルジナとポステアがいた。

 今でこそ、よく液体のなかで目が開けられたのだなと思うけど、その時私は三才でただ暗いなと、思っていた。


 私の頭の中には、既に基本的学習は施されており、三才で目が覚めるなり、辺りが『暗い』こと、光が『緑色』であることを理解していた。

 そして、もうひとつの器に入っている男の子、トレィスがいた。


「おはよう。気分はどうかな」

 頭の中に、声がする。

 そこに立っている、ポステアとプレマルジナのものではないらしい。

 二人は微動だせず、そこに立っている。


「我はこの国の中枢なるもの。お前達を作りしもの」

 基本的――と言っても十歳児程の学習がされていた私は、記憶をたどる。

 

 子供を作る男のヒト、よね?

 それって、

「お父さん?」

 私がそういうと、声は沈黙した。

 

 暫く、ピーとか、かたかたとか記憶媒体の動く音がしていた。

 今となっては、内部プロトコルで即時処理不能 になってたのかなーとか考え付くけど、その時は黙っちゃったから、間違ったかな?としか思わなかったよ。


「お父さん……」

 “声”は、そう言って。

 ホント、今さらなんだけど、ポステアとプレマルジナが不思議そうな顔をしてた気がするよ。

 多分、気のせいだけど。

 でもそれが、生命至上国家存続の為の国家特別特使――――適応型汎用知性制御中枢T-IPrimaGeneralo――――『お父さん』とのファーストコンタクトだった。


 器、は母体無き人工受精のお腹で、私たちは安定するまで余裕をみて、三年の間その中で育てられた。

 器から出した処で、乳幼児の育成は困難だと判断したらしい、とお父さんが教えてくれた。


 器からトレィスと出して貰って、お風呂に入れて貰って服を着る。

 ずっと裸でアムニオンに浸っていたから、なんだかむず痒かったけど、直ぐに慣れた。

 プレマルジナ曰く、私の学習能力は至って高いとのことだ。

 ここにはいないけれど、別の処には他に十人の子供がいるらしくて、その子達と比較されて、の事だけど、いない子と比べられても、ねえ?


 でも身近なトレィスを見てると、分かる気はするのよ。

 同じ年とは思えないもの。


 ある日、ポステアが読み聞かせてくれた、絵本。

 器の中でも聞いてた話だったけど、ぼくのママは…って泣き出した。

 いるわけ無いのに。

 いや、いるにはいるか。

 でも、そんなもの求めた処で、ママは後から出来ない。

 泣きじゃくるトレィスを、ただぼーっと眺めていたら、プレマルジナが抱っこしてくれた。

 んー。悲しんでるとか思われたのかな?

 ポステアが困ってるから、泣き止めば良いのに。


 頭の中に、お父さんの声がする。

『大丈夫か?』

「何が?」

『……寂しいか?』

「何で?お父さんも、プレマルジナもポステアもいるのに。寂しいてわかんない」

『そうか。プレマルジナにパンケーキでも焼いて貰いなさい』

「わぉ!プレマルジナ!パンケーキ作ろう!!トレィスの分も作ってくるね!ポステアも!一緒に食べよう!」

 って、気をそらそうとしたけど、トレィスはポステアにしがみついて泣いてた。


 そんな感じで、器から出た後の生活は、お勉強もそぞろに、泣いてるトレィスばかり見ていた気がする。

 ので、次第に別々にいることが多くなった。

 私はお父さんのそばで、色々教えて貰う方が有意義だったし、プレマルジナの他の子の話って云うのも、楽しみが見出だせていた。


 そして五歳になった時、トレィスは第三ドームに移っていった。

 ここから、600キロは離れていて、もう再び会うことはないだろう、とプレマルジナに言われた。

 車で一日かかる距離とか、想像もつかない。

 冬は、ここより寒くなるって、向こうでもトレィスはずっと泣くんだろうか?


「…………プレマルジナ!今日は味噌田楽の気分っ!」

 二人で食べた味噌田楽は、美味しかったです。


 そして、遂に今。

 私は七歳になっていて、お父さんが慌てる様子を眺めていた、

「どうしたの?」

『第一ドームの生存者が、生身で外に出たとの連絡があったんだ……』

「バカなの?」

『他の子達は、トレサ程知識を身に付けてないのだよ』

「なぜ?」

『子供……だからだよ』


 私は?て聞きたかったけど、聞いちゃいけない気がして。

 だったら、

「ねえ?お父さん?私、その子に会いたい!」


 お父さんは盛大にかたかたかたかた音を鳴らすし、プレマルジナは湯葉の鍋を落としそうになったよ。

 勿体ない。

 

 


 

 

 

ここまで、お読みいただきありがとうございます。

お話しのストックを出しきってしまって、これまでより遅い更新になりますが、お付き合いいただければ幸いです。


活動報告で、茶番劇始めました。

本編の謎?を解き明かすかも知れない短編です。

よろしければ、合わせてお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ