エピローグ
12月9日、加筆修正しました。
内容は変わってません。
ぴかって、そらがひかって。
どぉんって、おっきなおとがして。
それから、それから。
きらきらの、バッチ。
ぽふってする、ぞうさん。
ぼふってなった、クリーム。
それから、それから。
ああ、そうだ。
プレマルジナの綺麗な笑顔。
優しく綺麗な私だけに向けられた
プレマルジナの微笑む顔――
――――――――
「ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻに告ぐ。
No.12に関する保護管理義務に於いて、未許可行動を、重大な計画阻害と認定。
以下に措置に準ぜよ。」
「ver.Ⅻの言動は統制、秩序の乱用とし、脳への直接介入で、貴重なる人類を害するかの言動、許されまじ……主命への明確なる反逆行為に匹敵する。よって……」
「一、ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver,Ⅻは感情ユニットの制限、我が指揮下での機能優先とする。
二、No.12の心理的安定を維持するため業務継続。但し、直接的な交流及び接触は禁ずる。
三、当該ユニットの活動は、我の厳重監視下にて、No.12が安全に『計画』完遂することによって終了とする。」
「尚、No.12の状態が『不安定』と見なされた場合、ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻは、即時最終停止措置の実行決行とする。」
…………要するに、今まで通りと言うことか、ぼくは頭に響く声に答えた。
「ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻ、現個体に異常無し。適合率問題なし。宥免により外部脅威対応を解除とする。但しこれ以降、現個体にて活動限界まで機能せよ。感情ユニットの修復、及び個体の修復は自己責任にて行うこと」
……要するに『老いる』と言うことか。
問題ない。
ドウシイの部屋へ行くと、彼女はベッドに座っていた。
彼女はぼくに気が付くことはない。
頭部に被せられたシールドに阻まれた、彼女の顔色を伺うことはできない。
彼女のバイタルは、至って落ち着いている。
若干のストレスは致し方ない。
彼女を抱き上げ、椅子に座らせる。
怯える様子も言葉も、ない。
椅子に座らせたまま、全身清拭をする。
身を捩らせるが、構わず行う。
新しい寝巻きに着替えさせる。
敷布を取り替え、ベッドメイクする。
再び彼女を抱えベッドに横たえると、
「ありがとう」と小さく言う。
下腹部に掌を当て、温波を当てると、彼女の唇の両端がわずかに上り、微笑みを見せている。
毎月、施術の前後三日……一日二十分だけがぼくらに許された時間だ。
日に日に軽くなっていく体。
針の跡で青黒くなった腕、
シールドから覗く、白く伸びた髪。
明日は、爪を切ってあげよう。
ぼくは部屋を後にする。
ぽかぽかする、お腹。
ずんと、重たいお腹がほんの少し軽くなる。
ほぉーと、温かい背中。
知ってるよ。
知って……お母さんだっけ?
そんなわけないか。
お母さんはずっと前からいない。
だあれ?
綺麗な笑顔をしてるみたいなのに、影になって見えないよ。
首に、きらきら。
ぽかぽか。
あれ?ふわふわはどうしたろう?
ぼくの頭に三十年の年を経て、声が届く。
「生存者No.12、本日をもって役目を終了とする。ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻに告ぐ。役目を完遂されたし」
走ってドウシイの部屋に急ぐ。
シールドのないドウシイの顔。
加齢による面変りは否めないが、ドウシイがそこにいた。
ベッドに座り、ぼくを見ている。
困惑。
「お兄ちゃん、だあれ?」
掠れた声で、五歳の頃のような口調。
「プレマルジナです」
「プレ……むづかしい。お兄ちゃんで、いい?」
「勿論です、ドウシイ」
「ドウシイ?だあれ?わたしね、むつかっていうの。むっつの花でむつか。雪って、意味なんだよ」
「クリスマスイブがお誕生日だものね」
「どうして知ってるの?」
「ぼくも、同じだから」
「ホント?すごーい!いっしょにお祝いできるね」
「ケーキを焼こう」
「ケーキ!作るの!?」
「そうだよ。大きな象のぬいぐるみも用意するよ。ぽふってできるやつ」
「ほんと?」
「ああ、あなたの好きで埋めよう」
ドウシイの指が、ぼくの首に伸びる。
「きらきら!」
ぼくは首のチョーカーを外し、ドウシイに着ける。
「いいの?」
「構わないよ」
「へへ……あのね、わたし、ここ、いや。お外に出たい」
「いいよ、行こう」
座っているドウシイに手を伸ばす。
三十年の病床生活で、立つことが出来ず、よろける。
「いいよ、背中においで」
「おんぶ!」
ドウシイを背負って、部屋を出る。
「へへ、あったかい…………お兄ちゃん?首、どうしたの?傷があるよ」
ドウシイが触れたのは、感情ユニットの取り出し口。
彼女のつけた傷は疾うに自然治癒している。
「痛い?」
「痛くないよ、ありがとう」
建物の外に出て、ドームの作られた空を見る。
「お兄ちゃん、わたし眠たくなってきたの」
「もう少しだけ、お話ししようか?」
「いいよ!」
庭にある、ベンチに腰かけ、ドウシイを膝に乗せる。
「赤ちゃんみたいだよお」
「冷えますから、このままで」
「ゔー」
幼い頃の癖。
散り散りの破片が、最適化される。
がこっと激しい音が、脳に響く。
外部メモリの剥離を確認。
途端、感情ユニットから溢れ出すストレージの断片。
「お兄ちゃん、痛い?」
「痛くないよ」
「だって、泣いてるよ?悲しい?」
「ホントだね。でも、悲しくないよ」
「さみしい?」
「…………嬉しい、かな?」
ぼくはドウシイの唇にキスをする。
真っ赤になって、目を見開いて。
「あのね、わたし、お兄ちゃんのお嫁さんになってあげるよ!」
「あなたの望むままに」
「“あなた”って。大人みたい!」
「いや?」
「いやじゃないよ。お兄ちゃんの“あなた”て声。すき!」
「良かった」
「へへ」
『破顔一笑』
照れながらも、ぼくの涙を手で拭ってくれる。
その手が、力を失い落ちて行く。
「ねむい……」
「……おやすみ」
ぼくの胸に頭を乗せ、静かに眠る。
「ぼくは、いつでもあなたの最適解を探します。これがぼくの最適解です」
ドウシイを抱き上げ、ドームの出口へと走る。
頭の中に、警告音が鳴り響く。
ドウシイを渡せと、警告音が鳴り響く。
走って、走って。
ドームを出て、数キロ走ったところで、ぼくはドウシイを抱きしめたまま、体内にある自爆装置を稼動させた。
「………………コレハ失敗デハナイ。コレハ間違イデハナイ。作戦ヲ続行セヨ。現計画ノ瑕疵ナシ。」
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
ドウシイとプレマルジナのお話はこれにて閉幕でごさいます。
御意見、御感想など、ぜひ頂けたらと思います。
続きは、………それ次第かな?なんて。




