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いたいけなほしくず  作者: 有城 沙生
ドウシィとプレマルジナ
13/30

エピローグ

12月9日、加筆修正しました。

内容は変わってません。

ぴかって、そらがひかって。

どぉんって、おっきなおとがして。

それから、それから。


きらきらの、バッチ。

ぽふってする、ぞうさん。

ぼふってなった、クリーム。

それから、それから。


ああ、そうだ。

プレマルジナの綺麗な笑顔。

優しく綺麗な私だけに向けられた

プレマルジナの微笑む顔――


 ――――――――

「ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻに告ぐ。

No.12に関する保護管理義務に於いて、未許可行動を、重大な計画阻害と認定。

以下に措置に準ぜよ。」


「ver.Ⅻの言動は統制、秩序の乱用とし、脳への直接介入で、貴重なる人類を害するかの言動、許されまじ……主命への明確なる反逆行為に匹敵する。よって……」 


「一、ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver,Ⅻは感情ユニットの制限、我が指揮下での機能優先とする。

二、No.12の心理的安定を維持するため業務継続。但し、直接的な交流及び接触は禁ずる。

三、当該ユニットの活動は、我の厳重監視下にて、No.12が安全に『計画』完遂することによって終了とする。」


「尚、No.12の状態が『不安定』と見なされた場合、ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻは、即時最終停止措置の実行決行とする。」


 …………要するに、今まで通りと言うことか、ぼくは頭に響く声に答えた。


「ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻ、現個体に異常無し。適合率問題なし。宥免により外部脅威対応を解除とする。但しこれ以降、現個体にて活動限界まで機能せよ。感情ユニットの修復、及び個体の修復は自己責任にて行うこと」


 ……要するに『老いる』と言うことか。

 問題ない。

 


 ドウシイの部屋へ行くと、彼女はベッドに座っていた。

 彼女はぼくに気が付くことはない。

 頭部に被せられたシールドに阻まれた、彼女の顔色を伺うことはできない。

 

 彼女のバイタルは、至って落ち着いている。

 若干のストレスは致し方ない。


 彼女を抱き上げ、椅子に座らせる。

 怯える様子も言葉も、ない。

 椅子に座らせたまま、全身清拭をする。

 身を捩らせるが、構わず行う。

 新しい寝巻きに着替えさせる。

 敷布を取り替え、ベッドメイクする。

 再び彼女を抱えベッドに横たえると、

「ありがとう」と小さく言う。


 下腹部に掌を当て、温波を当てると、彼女の唇の両端がわずかに上り、微笑みを見せている。

 毎月、施術の前後三日……一日二十分だけがぼくらに許された時間だ。


 日に日に軽くなっていく体。

 針の跡で青黒くなった腕、

 シールドから覗く、白く伸びた髪。

 明日は、爪を切ってあげよう。

 ぼくは部屋を後にする。


ぽかぽかする、お腹。

ずんと、重たいお腹がほんの少し軽くなる。

ほぉーと、温かい背中。

知ってるよ。

知って……お母さんだっけ?

そんなわけないか。

お母さんはずっと前からいない。

だあれ?


綺麗な笑顔をしてるみたいなのに、影になって見えないよ。

首に、きらきら。

ぽかぽか。

あれ?ふわふわはどうしたろう?





 ぼくの頭に三十年の年を経て、声が届く。

「生存者No.12、本日をもって役目を終了とする。ユニット型式プレマルジナ・プレイトゥver.Ⅻに告ぐ。役目を完遂されたし」


 走ってドウシイの部屋に急ぐ。

 シールドのないドウシイの顔。

 加齢による面変りは否めないが、ドウシイがそこにいた。

 ベッドに座り、ぼくを見ている。


 困惑。


「お兄ちゃん、だあれ?」

 掠れた声で、五歳の頃のような口調。

「プレマルジナです」

「プレ……むづかしい。お兄ちゃんで、いい?」

「勿論です、ドウシイ」

「ドウシイ?だあれ?わたしね、むつかっていうの。むっつの花でむつか。雪って、意味なんだよ」

「クリスマスイブがお誕生日だものね」

「どうして知ってるの?」

「ぼくも、同じだから」

「ホント?すごーい!いっしょにお祝いできるね」

「ケーキを焼こう」

「ケーキ!作るの!?」

「そうだよ。大きな象のぬいぐるみも用意するよ。ぽふってできるやつ」

「ほんと?」

「ああ、あなたの好きで埋めよう」


 ドウシイの指が、ぼくの首に伸びる。

「きらきら!」

 ぼくは首のチョーカーを外し、ドウシイに着ける。

「いいの?」

「構わないよ」

「へへ……あのね、わたし、ここ、いや。お外に出たい」

「いいよ、行こう」


 座っているドウシイに手を伸ばす。

 三十年の病床生活で、立つことが出来ず、よろける。

「いいよ、背中においで」

「おんぶ!」


 ドウシイを背負って、部屋を出る。

「へへ、あったかい…………お兄ちゃん?首、どうしたの?傷があるよ」

 ドウシイが触れたのは、感情ユニットの取り出し口。

 彼女のつけた傷は疾うに自然治癒している。

「痛い?」

「痛くないよ、ありがとう」


 建物の外に出て、ドームの作られた空を見る。

「お兄ちゃん、わたし眠たくなってきたの」

「もう少しだけ、お話ししようか?」

「いいよ!」


 庭にある、ベンチに腰かけ、ドウシイを膝に乗せる。

「赤ちゃんみたいだよお」

「冷えますから、このままで」

「ゔー」

 幼い頃の癖。

 散り散りの破片が、最適化される。


 がこっと激しい音が、脳に響く。

 外部メモリの剥離を確認。

 途端、感情ユニットから溢れ出すストレージの断片。

「お兄ちゃん、痛い?」

「痛くないよ」

「だって、泣いてるよ?悲しい?」

「ホントだね。でも、悲しくないよ」

「さみしい?」

「…………嬉しい、かな?」


 ぼくはドウシイの唇にキスをする。

 真っ赤になって、目を見開いて。

「あのね、わたし、お兄ちゃんのお嫁さんになってあげるよ!」

「あなたの望むままに」

「“あなた”って。大人みたい!」

「いや?」

「いやじゃないよ。お兄ちゃんの“あなた”て声。すき!」

「良かった」

「へへ」


『破顔一笑』

 照れながらも、ぼくの涙を手で拭ってくれる。

 その手が、力を失い落ちて行く。

 

「ねむい……」

「……おやすみ」

 ぼくの胸に頭を乗せ、静かに眠る。


「ぼくは、いつでもあなたの最適解を探します。これがぼくの最適解です」


 ドウシイを抱き上げ、ドームの出口へと走る。

 頭の中に、警告音が鳴り響く。

 ドウシイを渡せと、警告音が鳴り響く。

 走って、走って。

 ドームを出て、数キロ走ったところで、ぼくはドウシイを抱きしめたまま、体内にある自爆装置を稼動させた。



「………………コレハ失敗デハナイ。コレハ間違イデハナイ。作戦ヲ続行セヨ。現計画ノ瑕疵ナシ。」 


 

 

ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。

ドウシイとプレマルジナのお話はこれにて閉幕でごさいます。

御意見、御感想など、ぜひ頂けたらと思います。

続きは、………それ次第かな?なんて。



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