序・要約
こっそり改稿。
内容は変わってない。
「みてみて、ほら!」
———きれいなものを見た。
撒かれた水。
飛び散る滴。
砕ける光り。
小さな虹。
きらきらと笑う君。
きらきらと笑う、君。
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「きゃー!たいへんなの!いたい?だいじょうぶ?」
———触れた。
小さな手が、私の腕を掴む。
私の薄い皮膚を引っ張って、
細く、でも深く、出来た傷。
君が巻いた包帯は、とても緩く、
治療にはなっていないけれど、
痛みも、血も、すぐに消えた。
けれど、
次の私は、同じ場所に、
傷を作る。
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「おやすみなさい」
———ずっと続くものだと思っていた。
夜。
部屋を出て、
軌跡を追い、
光を受け止める。
一瞬の消失。
――――そして再起動。
それだけだ。
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「治らないね」
———変わらないはずだった。
そう呟いた君の目が、
ひどく優しくて、
どうしようもなく、
胸の奥が、あたたかかった。
だから———
私は、
次の私にも、
その次の私にも、
その傷を刻んだ。
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———それは、きっと。
持っていてはいけないもの。
だから、
消去した。
削除した。
複製した。
持っていてはいけないものは
私が持っていこう。
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「傷、治ったんだね」
なんの事だろう?
怪我をした記憶はあるけれど
傷はすぐに癒えた、はず。
その答えを私は持たない。
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「……ポステア?」
君の声が、
小さく揺れた気がした。
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———おやすみなさい。
君の手が、
私の頬に触れる。
乾いた手のひら。
落ちた滴。
私の中にだけ残る記録。