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12. ゼフの道具屋

ゼフの道具屋は商人ギルドから10分くらいの大通りにあった。冒険者ギルドがすぐ近くにある賑やかな通りだ。


「大きい!」

冒険者向けの道具屋で、しかもエフェスで見た道具屋の3倍くらいある。ホームセンターみたいだ。

入り口から入り、近くにいた女性に声を掛ける。


「商人ギルドから依頼を受けてきました、リリーといいます」

「ああ、店長から聞いているわ。案内するわね」

「ありがとうございます」

女性に案内されて、テントなんかの大物が置いてある奥にある扉から中に入る。

中は倉庫になっていてその一角に事務室があった。


「よく来てくれた。店長のゼフだ」

応接セットのソファーを勧められたので座らせてもらう。

店長は背の高い人だった。年齢は40代くらいだろうか。ガッチリした体型をしている。


「リリーです。狐人族で18歳です。薬師見習いで、ストレージを持っています。商人ギルドで依頼を受けてきました」

商人ギルドから預かった依頼書を店長へ渡す。


「薬師見習い?商人じゃないのか」

「商人スキルは一応持ってますが、本業は薬師なので金策のためのアルバイトですね。エフェスから来たばかりです」

「なるほど。依頼のタイミングが良かったな。ストレージ持ちが見つかると思わなかった。助かるよ」

店長は依頼書を確認すると、改めてよろしく頼むと言ってきた。良かった。無事採用らしい。


「明日から3日間店を閉めて、従業員が泊まり込みで清掃と改装、棚卸しをする。リリーに頼みたいのは商品の一時保管と移動と、可能であれば食事作り。大部屋になるけど今日から泊まってもらって構わないぞ」

「ぜひお願いします!」

よし!今夜の宿泊場所ゲット!

「料理が苦手なら、デリバリーにするつもりだがどうだろうか」

「大丈夫です。普通の家庭料理なら作れます」

凝ったものは作れないけど、一人暮らしだったし大丈夫だろう。食材も普通に買えそうだし。


「よかった。では、食事は明日の朝から作ってもらいたい。早速で悪いが買い出しを頼めるだろうか」

「分かりました。あ、キッチンの設備はどんな感じでしょうか」

「一般家庭より少し大きいくらいだな。道具は揃っていると思う。フライヤーやホットプレートもあるから活用してくれ。あと店のエプロンだ。支給品だから返さなくていい」

「分かりました」

エプロンを預かる。首掛けで色は黒。普通に使えそうだ。ありがたい。フライヤーもあるってことは、従業員て、人数が結構いるのかな?

「店の会計所にカールという男がいるから、そいつに金は貰ってくれ」

「分かりました」


カールさんは優しそうなお兄さんだった。さっきマッチョを見たのですごく痩せて見える。

…それはさておき軍資金を預かる。

「明日の朝から3日後の夜までの分で、10,800Gね」

うわ。大金だ。現在の私の手持ち金より多いぞ。

「食事を食べる人数と、どんなものを作ったらいいかお伺いしたいんですが」

「ああ。人数はリリーも入れて12人だよ。男が多いから食事の内容はガッツリ量がある方が喜ばれるかな。朝と昼は簡単でいいよ。飲み物も入れて1食100Gで計算してるから使い切ってね。あ、お酒は買わなくていいよ」

「なるほど…分かりました」

100Gは千円くらいだから1日3千円。予算も結構潤沢。好きなものが作れそうだ。

「財布は返さなくていいよ。不良品なんだ。縫い目が雑で」

「え?いいんですか?」

言われてみれば確かに雑な縫い目だが、言われなければ気にならない。ありがたく貰っておく。

よし、とりあえず買い出しに行こう。

「では、行ってきます」

「よろしくね」


マップを見ながらアハットの街を探索してみる。食材が売っているエリアは、大通りから一本入った割と近い場所にあり、商店街になっているようだ。

所謂スーパーマーケットはなくて、八百屋、肉屋、魚屋などと細かく分かれていて、道の両側に色々な店がずらっと並んでいる。


肉は豚肉とオーク肉が同じ値段だった。100グラム10Gだ。鑑定の新機能が仕事をしていて、相場が豚肉は100グラム10G前後、オーク肉は100グラム10から20Gで変動と出ている。底値だ。せっかくなのでオーク肉を購入。厚めと薄めにカットしてもらう。

相場が見えるとか商人スキル、思ったよりもかなり使える。現実でも欲しいぞ。

他にも鶏肉やベーコンなんかを大量に購入。割引してくれたうえに、おまけにハムまでもらった。

どんどんストレージに放り込んでいく。賞味期限を気にしなくていいなんて、時間停止付きのストレージなんて便利なの。


「たまご屋さんだ」

鶏卵だけじゃなく、色んな卵が売っている。大きいのとか、色がついてるのとか。魔物の卵らしい。美味しいんだろうか。ちょっと興味ある。

それらを買う勇気はないが普通の卵は買う。あるだけ全部買ったので今日は店じまいするからと、残ってた手作りプリンを4個もおまけしてくれた。やったぁ。


それから牛乳屋さん。牛乳は大瓶で売られてた。

バターやヨーグルトも売られていたので色々購入。アイスも作っているというので予約しておく。

隣にはチーズ屋があった。親族で農場を経営していて、色々作っているらしい。大きなチーズが並んでいた。カットして売っているようだ。日本では見ない大きさだ。

料理に使えるチーズを選んでもらい、トッピング用のチーズも売っていたので購入する。


野菜店では大量に野菜を購入。八百屋かと思ったら野菜だけで果物は売ってなかった。見たことのない野菜をどうやって食べるのか聞いていたら、味見用にと色々おまけしてくれた。ありがたい。

カレー粉はどこに売ってるのか聞いたらスパイス屋にあると場所を教えてもらった。

ストレージに野菜をがんがん放り込んでたらすごく羨ましがられた。重い荷物を持たなくていいなんてストレージ超優秀。買い物楽しい。


スパイス屋へ到着。色んな匂いがしている。カレー粉は紙の箱に入ったルーじゃなくて、スパイスセットだった。カレーのレシピを貰った。胡椒やスパイスソルトも売っていたので購入。


お隣に調味料屋があった。砂糖や塩、醤油などの調味料を一通り購入。出汁やコンソメなんかも売ってた。品揃えは日本と変わらないから楽でいいね。さすがにコンソメから作るとか無理だから。

この世界、ビニールやプラスチックなんかはないんだよね。入れ物は瓶や缶、加工された紙で包むのが主流だ。世界観を壊さないためだろうけど。


それから明日の朝食用に、パン屋で美味しそうなパンを大量に買った。パン粉もパン屋で売っていた。自分の夕食用にサンドイッチを買ったらそっちはサービスしてくれた。人のお金で買ってるのに悪いなと思うけどありがたく頂いておく。まだ生活安定してないしね!


店を回って主食の米や小麦粉も買った。豆腐屋さんはボウルなどの入れ物がないと持ち帰れないとのことで、予約しておく。

色々買ったけど預かったお金はまだ半分近く残っている。みんな相場の価格で売っていて、アハットは健全な街なんだなぁと思う。

楽しく買い物をしていたら辺りは薄暗くなっていた。


とりあえず明日のメニューは決めた。

朝ご飯はパンで、よくある洋食メニュー。

昼ご飯はカレーライスにしよう。

晩ご飯は揚げ物色々。ミックスフライ定食っぽくする予定。


ゼフの道具屋へ戻ると、閉店していた。ドアは開いていたので中に入ると、ピンクの髪の女の子が出てくる。


「あっ、臨時で入る子かな?」

「はい。リリーです。よろしくお願いします」

「かわい〜。孤人族?あたしミレイ。部屋に案内するね。同室だからよろしくね!」

店長に言われて待ってくれていたらしい。

ミレイさんに連れられて倉庫の更に奥に進む。ドアを開けると廊下になっていた。靴箱があってミレイさんが靴を脱いでスリッパに履き替えたのでそれに習う。日本式だな。廊下の両側にはたくさんのドアがあった。


「ここだよ!」

ドアを開けて部屋に入ると中に2人の女性がいた。ミレイさんが紹介してくれるので挨拶する。1人は最初に来た時に案内してくれたお姉さんだ。シーラさんというらしい。金髪のスラッとしたお姉さんだ。

もう1人はアンナさんといって、猫人族の女の子だった。薄茶色の髪に同じ色の猫耳と細長い尻尾が付いている。うーん、モフモフだ。触りたい。…やはり触ったらセクハラになるだろうか。我慢我慢。

ミレイさんとシーラさんは人族らしい。


「そうだ。キッチンを確認したいんですが…」

「こっちだよ!」

ミレイさんが案内してくれて、みんな着いてきた。

店舗の入口に一番近いドアから中に入る。

中は食堂のようなテーブルと椅子が並んだ部屋だった。


「ここが従業員の休憩所だよ。食堂にもなるね。キッチンはこの奥」

奥にあるドアを開けるとキッチンだった。結構広い。


「従業員は泊まり込みなんだ。食事もお酒も出るしちょっと楽しいよね。私達以外は男性だから明日の朝から来るよ。ほら、朝早いと準備が大変じゃない?私達は今日から泊まれるようにしてもらってるの」

「そうなんですね」

女性は4人で、あと8人は男性か。


キッチンを確認させてもらう。コンロが4口。シンクと作業台も広い。業務用のフライヤーと、バーベキューできそうなグリル台。ホットプレートと卓上のコンロも3つあった。大きめのオーブンにレンジ、冷蔵庫。大人数にも対応できそうだ。鍋やフライパン、調理器具などの場所も確認する。


【満腹度が20%を切りました】

見回っていると空腹メッセージが出た。そうだ、夕飯を食べないと。パン屋で自分用のサンドイッチを買って(タダだけど)いたんだ。


「あっ、ご飯ここでいただいてもいいですか?」

「何か作るの?」

「いえ。サンドイッチがあります」

「私達も今日は簡単に済ませるつもりで持ってきてるの。一緒に食べましょう」

シーラさんがそう言って、冷蔵庫に入れてあったお弁当をレンジに入れた。と思ったら一瞬で出した。

「???」

レンジを見ると、温め強・弱と解凍のボタンのみだった。時間の表示がない。


「冷蔵庫とかレンジは自由に使えるんだよ。この休憩所はお昼休憩で使ってるんだ」

ミレイさんがおにぎりを冷蔵庫から出してレンジに入れる。温め弱を押して、そしてすぐ取り出した。…温まっている。


そういえばこの世界の家電は魔道具だ。電気は使っていないし、マイクロ波も発生していない。

食品を温めるとなると「ヒート」あたりを利用した魔道具だろうか。それなら私も使える魔法だ。


私もサンドイッチをストレージから出した。ローストビーフと野菜のサンドイッチだ。結構ボリュームがある。

「おー、ストレージすごい。初めて見た」

ミレイさんが興味津々で亜空間から出てきたサンドイッチを見ている。

頷くアンナさんはツナサンドだ。猫だから魚が好きなんだろうか…かわいい。

「リリーのサンドイッチおいしそう。あたしのツナサンドと交換できる?2個あげるから」

「ふふっ、いいですよ」

1つをアンナさんのツナサンド2個と交換してもらう。

「おいしいね」

サンドイッチを頬張るアンナさんはかわいい。尻尾が揺れている。

「いいな〜」

「ほらミレイ、一口」

わいわいしながらご飯を食べた。楽しいな。

デザートがあればよかったかも。あ、そうだ、プリン。


「実は、おまけでもらったプリンがあります。なんとちょうど4つ」

ストレージからもらったプリンを出す。瓶入りのプリンはとても美味しそうだ。

「うわぁ、おいしそう!」

ミレイさんとアンナさんが歓声を上げた。

「飲み物あったかしら」

シーラさんも嬉しそうだ。


「あ、いただいた薔薇の紅茶がありますよ」

「なにそれ美味しそう」

「飲みた〜い」

食器棚からティーポットとカップを出す。お皿の種類や数もたくさんあるようだ。色はシンプルに白が多い。

やかんに水を汲み、コンロの摘みを回すと火が着いた。これで水道もガスも通ってないなんてファンタジー。


「経費で買ったもののおまけだから、店長に報告しないとダメですかね?」

「そんなこと気にする人じゃないよ」

ミレイさんの言葉にシーラさんが頷く。

「店長は元冒険者なのよ。怪我で引退した後、店を始めたんですって。最初は小さなお店だったらしいわよ」

シーラさんが教えてくれる。元冒険者かぁ。

「へー。だからあんなにガッチリした体格なんですね」

「そうそう。実際強いよ。冒険者相手の店だからたまに荒っぽいやつもいるしね〜。この間も……」

ミレイさんが店であった出来事を教えてくれている間にお湯が沸いたので、頂いた薔薇の紅茶を淹れてプリンを手に取った。

「いい香りね…」

シーラさんが紅茶の匂いを嗅いでうっとりと言った。確かにすごくいい香りだ。

「おいしい!」

シンプルに作ってあるプリンはとても美味しかった。紅茶も美味しかった。


プリンを堪能した後、茶葉をゴミ箱に捨てようとして蓋を開けたら何かが動いた。

……動いた?

「わぁ!?スライムがいる!?」

「あ、リリー、知らないの?スライム式のゴミ箱だよ」

「ス、スライム式?」

ゴミ箱は大きめで蓋がピッチリと閉まるやつだ。そして底にスライムがいる。ゴミはない。

「生ゴミとか紙とかガラスとか何でも食べてくれるんだよ。餌のゴミを与えないとゴミ箱から脱走するから管理に注意だよ。あとたまに増える」

「えぇ~…?」

危険じゃないんだろうか。足に張り付いた記憶が蘇って背筋が寒くなった。まぁ、便利だから使うけど。


食器を片付けてから部屋に戻った。

お風呂はなかったけどシャワーブースは自由に使えたので助かった。シャンプーとかは手持ちがなかったけど、ありがたいことに皆が貸してくれた。


「えーっ、リリー、そのままの格好で寝るの!?」

いつもの格好でベッドに入ろうとしたら、ミレイさんに止められた。

「これしか服ないんで……あ、ローブはあります」

魔法使いの初期装備のローブを出す。ちなみに色は黒だ。

「あー、それはない」

ミレイさんがそう言い、他二人も頷いている。…そんなに駄目かな?寝るだけだし。

「あたし、着てないパジャマとかあるから明日持ってくるよ!ほら、リリーは獣人でしょ?普通の服だと尻尾のおさまりが悪いんだよね〜」

猫人族のアンナさんがそう言った。

「じゃああたしも何か見繕ってくるね!リリー、可愛いんだからオシャレしないと!」

「それなら私もアレを持ってきちゃおうかしら…」

3人に気を遣われて申し訳ない気分になる。確かに下着くらい買った方がいいかと思ってはいたけど、そんな余裕もなかったしな。


「いやいやそんな。悪いですよ」

「ホント気にしないで!明日からの食事期待してるからね!」

3人に笑顔で押し切られた。善意だろうしあんまり断るのも悪いか。


明日は早起きしなきゃな。

今日もたくさん動いて疲れていたので、ベッドに入るとすぐ眠りに落ちた。

その後3人が何を着せるかで盛り上がっていたことを私は知らない。

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