5-11:自室で
アラフォー女子が異世界転生して第三王子になりました。
いろいろ有りますが、主人公アルムは今日もBLではぁはぁが出来るネタを探して我が道を逝きます。
「う~ん、しかしそれって本当なの?」
「はい、うわさどおりであれば間違いありません」
あの後食事も終わり、座談を少しして部屋に戻ることにしてイラマさんたちとは別れた。
食事中はマリーたちが給仕してくれたけど、私としては一緒に食事を提案したものの、マリーがそれを断り、ずっと給仕に勤しんでくれていた。
カルミナさん辺りはお腹を鳴らしていたけど、珍しく空気を読んで大人しくしていた。
後でしっかりと食べさせてもらうって言ってたので、ちゃんと食べているだろうけど。
「イラマ姫、別名チェリーイーター。特に少年を好み、毒牙にかけているとうわさは聞いているね」
タフトはブレザーの上着を脱ぎながらそう言う。
いや、その二つ名って……
「アルム様! どうぞあのお方にはご注意ください、アルム様の初めてのお相手は私と決まっているのですから!!」
「いや、なにその初めてって!?」
なぜか真剣に懇願してくるマリーさん二十八歳。
とぉっても、「お巡りさん、このお姉さんです!」案件なんですけど!
「くーっくっくっ、主がご用命いただければ人知れずに始末してきますが?」
「いやそれしちゃだめだって! 大問題になるって!!」
一緒にいたアビスが悪い笑みを浮かべる。
まったく、この人たちときたら……
「しかし、アルムの事に感づいたかな? アルムは各国でもその名が知られているからね。学園ではその辺を配慮してくれているとは思うけど、王族や貴族は勘ぐってくるだろうね。『魔法王ガーベルの再来』、これは誰が聞いても聞き捨てならないことだしね」
「魔法王ガーベルって、人類史で初めて王になった人でしょ? 各国の基礎を作り上げ、最後にはガレント王国を立ち上げ初代国王になった人でしょ?」
「そう、伝説の御仁だ」
タフトは何故か誇らしくそう言うも、すぐに表情を変えて私に話してくる。
「アルム、考えたのだけど偽名、とはいかずまでも今後君はアルムエイドではなく『アルム』と名乗ってはどうだろうか? 邪推をする連中も名前を愛称の『アルム』にするだけでだいぶ違うと思うのだけど」
タフトとの提案は意外ではあったけど、確かに余計なトラブルなどには巻き込まれたくないし、今の私の状態だとそれは避けたい。
名前を偽名にするのはすでに難しいけど、名乗りを「アルムエイド」から「アルム」にするだけでも確かに印象は変わる。
まぁ、すでにイラマさんのお付きである銀髪の男性にはばれているようだけど……
「そうだね、タフトの言う通りかもしれない。僕は今後『アルム』って名乗ることにするよ」
「うん、それが良いだろう」
まぁ、ばれる時はばれるだろうけど、とりあえずは察してくれる人もいるだろう。
僕はガレント王国の王子様とたまたま同じ部屋になったので仲良くなったと言えばいいだろうし。
「ただ、それだけだと流石にマリーたちの従者の問題もあるからな…… ここはエル姉様を頼ろうと思う。アルムは今のところエル姉様の保護下にあるってことになっているだろう? だったらエル姉様にお願いしてシーナ商会の名前を使わせてもらおう。シーナ商会ゆかりの人物となれば、お付きの一人や二人が付いていてもおかしくない。さらにお付きが破格な力を持っていてもシーナ商会の関係者なら知っている者は納得するだろうからね」
タフトはさらに顎に指をあてながらそんなことを言う。
確かにシーナ商会の人たちは異常だ。
マリーやカルミナさん、アビスでさえあの屋敷にいた時には驚いていた。
それほどシーナ商会は何においても力を持っている。
……まぁ、エルさんの母親が女神様の伴侶でシーナ商会のオーナーらしいから、実質シーナ商会って女神様の配下同然なんだろうけど。
しかしその女神様が秘密結社に参加したって言うのだから訳が分からない。
いったい何を考えているのやら……
とは言え、女神様の考えなんて普通の人である私にわかるはずはない。
もともとは人だったらしいけど、ならば余計に何を考えているかだなんてわかるはずがない。
娘であるエルさんですらその真意がわからないと言うのだから。
「アルム様を『アルム』と名乗れと? しかしそれは私たちの間での愛称、他人にアルム様の愛称を使われるのは腑に落ちません!」
そんなことを考えていたらマリーが声をあげてきた。
「マリー、別にいいじゃないか。僕の素性が変にばれるよりはいいと思うけど?」
「しかし! アルム様をアルム様とお呼びできるのは私たちの特権、それを赤の他人に簡単に呼ばせるのは……」
「まぁまぁ、君たちはのつながりはそんな事くらいで変わることはないのだろう? 身分を隠し、それでもアルムはアルムのすばらしさを誇示すると考えれば、このくらいの事はむしろアルムという存在を王族であるなし関係なく人々に知らしめることになるのだから。むしろ人知れず『アルム』という名を広め、最後にその『アルム』が実はイザンカの王子である『アルムエイド』だったと言う方が人々の心にその偉大さが残るだろう?」
納得のいかないマリーだったが、タフトの言葉にはっとなる。
「た、確かに今はアルム様の正体を知られるのはまずい。今後ドドスを通過するときにもそのことを考慮すると、今アルム様の所在地を知られるのはまずいですね…… しかしアルム様の偉大さは人々の心に残り、最後にその正体を人々が知れば、確かに好印象が沸き上がる。アルム様の偉大さが後々に称えられる!!」
「くーっくっくっくっくっ、いいではないですか!! 我が主が最後にその名を世に知らしめる。まさしく覇王となるお方をを人々が後で知るとは、これはいいではないですか!!」
「うーん、アルムの呼び名は短い方が楽ニャ」
うんうんとうなずくマリー。
なんか悦に入りつつあるアビス。
どうでもいいけど、楽な方が良いと考えるカルミナさん。
いや、君たちちょろいな……
まぁ、私は呼び名なんかどうでもいいし、カルミナさんの言う通り短い方がいろいろ楽だし。
「それじゃぁ決まりだね。明日には僕たちも授業に参加することになるだろうから、今後『アルムエイド』は『アルム』で通そう。これでいいかな?」
「そうだね、そうしよう!」
最後にタフトがまとめたが、その時部屋の扉がノックされる。
タフトが先に返事して扉をマリーが明けると、エルさんがそこにいた。
「ここにいたのね、アルム君にタフト…… はぁ~、ママたちほんとにうやってくれるわ…… 今後私は学園長と協力してママたちを探すけど、ここを拠点にすることにしたわ。とにかく直接ママたちに会ってその真意を聞きださないと始まらないからね。という事で、私はゲストハウスに寝泊まりすることにしたわ」
「ほう、エル姉様もここに滞在しますか。ならちょうどいい、アルムの後ろ盾としてシーナ商会のお力を借りたいのですが?」
「はぁ? 何それ??」
「はい、実はかくかくしかじかで~」
肩を落としたエルさんが入ってきて、あの後の事を話してくれたけど、タフトはさっそくエルさんにシーナ商会が私の後ろ盾になってくれることを言い出す。
それを聞いていたエルさんは頷いてすんなりと了承してくれた。
「確かにアルム君が今ここで正体をバラすのはよくないかぁ。まぁ、学園長にはもともと訳ありで経緯は話してあるから問題ないわ。私はいなくなることもあると思うけど、とりあえず何かあったら私に相談してきなさい。力になるわ」
「はぁ、ありがとうございます……」
シーナ商会の後ろ盾は嬉しいかもしれないけど、なんかエルさんもここにとどまると言うのは一抹の不安が残ろうのはなぜだろう?
私の学園生活は始まるわけだけど、なんか最初からトラブル臭しかしないのはなぜなんだろう?
私は何となく窓の外の空を見るのだった。
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