5-8:状況説明
アラフォー女子が異世界転生して第三王子になりました。
いろいろ有りますが、主人公アルムは今日もBLではぁはぁが出来るネタを探して我が道を逝きます。
「失礼します、連れてきました」
私とタフトはロディマスさんとアルガスさんに連れられて学園長室へ来ていた。
扉をノックし、入室許可の声がして中に入ると、応接セットの奥に大きな机に座った学園長がいた。
ちなみに応接セットのソファーにはエルさんが座っている。
「よく来ましたね、イザンカ第三王子アルムエイド殿下。おや、タフト殿下もですか?」
学園長は何か書き物をしていたらしく、最後に封印の印を押して封を閉じていた。
そして立ち上がってエルさんにその封を手渡す。
「ありがとうございます。これで動けますね。しかし、ママたちと学園長も連絡が取れなくなっているとは…… 失礼ですがマーヤさんのエルフのネットワークは?」
「そちらもダメですね。エリリアにも相談してますが、打開策が見つかりません。現状ではギルド、シーナ商会を頼りにするしかありませんね。ソルミナ教授も風のメッセンジャーの回復もしくは代用方法を考えています」
学園長とエルさんはある程度話が進んでいるようだ。
となると私だが……
「すみません、エルさん状況を教えてもらえますか?」
「おっと、そうそう、アルム君たちには来てもらったのは他でもないわ。学園長といろいろ話をして現状とその対策についてね」
エルさんはそう言って私を見てから学園長を見る。
すると、学園長は手をかざしソファーに座ることを進める。
「まずはお座りなさい。アルガス副学園長、ロディマス寮長はご苦労様です。この後は彼らと込み入った話があるので」
学園長がそう言うと、アルガス副学園長とロディマスさんは一礼をして部屋を出て行くのだった。
* * *
「こ、これって緑茶!?」
「おや? アルムエイド殿下は緑茶をご存じで?」
学園長直々に入れてもらったお茶は、まさしく「緑茶」だった。
異世界から召喚されたと聞いてはいたが、これで確実に彼女が日本人であると理解した。
「さて、まずは現状なんだけど、ボヘーミャも同じ状況になっていたわ。そして一番の問題がエルフのネットワークが使えなくなっているってことよ」
エルさんはそう言って湯飲みを置く。
「現在ボヘーミャでも通信と緊急時の転移が使えなくなっています。エリリアにも調べてもらっていますが、かなり大きな力が関与して両方とも機能が出来なくなっているようです」
お茶を飲みながら学園長はそう続ける。
そしてエルさん同様湯呑をテーブルの上に置いてから話す。
「正直ここまでの問題は私も初めてです。事が事だけに女神であるエルハイミにも連絡を取ろうとしているのですが、肝心のエルフのネットワークも途絶え、マーヤとエルフの村の連絡も取れなくなっています。つまり、精霊力自体にも制限がかかっています」
学園長がそう言うとタフトが大いに驚く。
「精霊力にまで影響があるだなんんて……」
「そんなに驚くことなの?」
思わず小声でタフトに聞き返すと、タフトは頷きながら言う。
「精霊力は古い女神様に由来する。地、水、火、風の四大精霊が有名だが、これらはすべて古い女神様がおつくりになっていると聞いている。つまり、女神様の力に相当するほどの力が働いているという事になるんだよ」
「女神様に相当する……」
いやそれって、思っていた以上にとんでもなってこと?
古い女神様がどれほどのモノかは知らないけど、今の女神様にも匹敵するのかな?
「ほんと、ママたちどこ行っちゃったのよ? お母さんの力が必要だっていうのに、変な宗教に加入してどっかに行っちゃうだなんて!!」
「そういえばエル殿、エルハイミたちはどこの宗教に加入したのですか?」
「ああぁ、そうでしたね…… えっと、たしか中から直さなければどうしようもない宗教だって言ってました。宗教団体の名前は……」
エルさんはそう言いかけてしばし難しい顔をする。
「たしか、「じゅ」何とかって言ってたような気がするのだけど……」
「宗教団体の名称が分からないのですか?」
「すみません、ただ、面倒な連中で女神信教の教えをわざと歪曲させたり、偶像の女神を他に作り上げたりと現在の女神信教自体にも影響を及ぼし始めたと言ってました」
「女神信教にですか……」
学園長はそう言って難しそうな顔をする。
そして軽くため息を吐いてから言う。
「まずはエルフの村と連絡を取ります。精霊魔法に関してはエルフ族が長けていますからね。我が校のソルミナ教授にも協力をしてもらいましょう。それとエル殿、ジルの村やティナの国に関しては何か?」
「ティナの国にはすでにうちからも連絡が行っています。全面的に協力は惜しまないそうです。特に例のエルフの少女についてはティナの国の『鋼鉄の鎧騎士』の提供もしてくれるそうです」
「そちらも問題ですが、どうも気になるのです…… そ、その、その娘は『あたしは最強』と確かに言っていたのですね?」
なぜか学園長は額に汗をびっしりとかいている。
そして動揺の色が私でもわかるほどだし。
「それについては、我が国の砦のスパルトス隊長の証言もあります」
動揺をしているような学園長にタフトがそう言うと、学園長はびくっとなってタフトに振り向く。
「ま、間違いないのですね……」
「ええ、我が国の兵が間違いを言うはずはありません」
「そ、そうですか……」
さらに汗をびっしりとかいている学園長。
いったい……
「と、とにかくそちらの件に関しては色々と確認も必要ですね…… そ、それでエル殿、うちの娘たちはシェルの下で元気にやっていたのですね?」
「え? ああ、リル姉さんとルラ姉さんですね? 私はジルの村で修業させられていたからぁ…… いや、ちょっと待ってください学園長! ルラ姉さんって!!」
「ま、待ってください! 心の準備がまだです!!」
エルさんは何かに思い当たったかのようにやはり額に汗をびっちりかいて、学園長を見る。
そして学園長も胸を押さえてエルさんに向かって手のひらを出し、待ったをかける。
「ふむ、話を総合するとそのガレントの国境の砦で『鋼鉄の鎧騎士』を倒したのはルラみたいだね?」
またまた別の女性の声がしてくるのだった。
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