5-7:学生寮
アラフォー女子が異世界転生して第三王子になりました。
いろいろ有りますが、主人公アルムは今日もBLではぁはぁが出来るネタを探して我が道を逝きます。
「無詠唱ができる者が来るのは久しぶりですね」
そう聞こえてきた凛とした声の主は、この学園の学園長だった。
身の丈百六十センチあるかないか。
長髪の黒髪はつややかで、肌も色白だ。
見た感じは女子高生位だが、うわさでは年を取らず、すでに千年近く学園長の座にいるらしい。
「これはこれは、学園長が自らお越しになるとは。お初にお目にかかります、タフト=ルド・シーナ・ガレントです」
タフトはそう言いながら貴族式の礼をする。
私もそれにつられて、同じように名乗る。
「えっと、アルムエイド=エルグ・ミオ・ド・イザンカです」
私が名乗ると、学園長は私たちの前まで来て言う。
「話は聞いています。タフト王子もアルムエイド王子もここでは一介の学生として魔道を学んでもらいます。それと、アルムエイド王子、あなたは無詠唱魔法が使えるようですがこの学園では許可なく魔法は使わないように。他の学生同様『戒めの腕輪』は着けてもらいます。それと……」
学園長はそこまで言ってから仮面を外す。
そこには黒い瞳の完全に東洋人の顔があった。
正直美人でもある。
いでたちがこちらの服装だが、和服がとても似合いそうな人だった。
しかし学園長は私を見る目をいきなり金色にぼうっと輝かせてじっと見つめてくる。
「ふむ、確かにエル殿のいう通りですね。アルムエイド王子の魂はとても複雑です。なおかつ体と魂の連結が上手くいっていない…… これは鍛えがいがありそうですね?」
「まぁ、ほどほどにお願いしますよ。一応イザンカの王子様だし今のところ私が保護者なんで」
学園長とエルさんはそんなことを言っている。
そして学園長はまた瞳の色を黒く戻すとマスクをはめる。
「短期間でどこまで鍛えられるかは分かりませんが、受講以外でも私の直接の鍛錬は受けてもらいます。アルガス副学園長、後はよろしく頼みます」
「心得ております」
そう言って学園長は踵を返してこの場を離れて行ってしまった。
「さてと、入試も問題なく合格したみたいだから落ち着いたら色々話しましょう」
そう言ってエルさんはウィンクして学園長の後に続いて行ってしまうのだった。
* * *
「ようこそ、新人。私はロディマス=コーン。この男子寮の管理人だ」
アルガス副学園長に連れられてきたのは学生寮だった。
「よろしくお願いします。タフト=ルド・シーナ・ガレントです」
「よろしくお願いします。アルムエイド=エルグ・ミオ・ド・イザンカです」
管理人というロディマスさんにあいさつすると、人差し指を立てながら言う。
「君たちの事は聞いているが、ここでは貴族王族も平民と同じ扱いになる。その辺は君たちがたとえ王子であっても変わらないから覚えておいてくれ」
「ええ、分かってますよ。どうぞ今後もよろしく」
「よろしくお願いします……」
なんか豪快な人だな。
ここで魔道を学ぶのはいいとして、生活費と学費について尋ねると、タフトの意向ですべてガレント王国が面倒を見てくれるという事になった。
流石にそれは悪いと思い、マリーと相談したがマリーとしては受けておくべきだと言う。
「ま、将来的な投資みたいなもんだよ。アルムと僕は良い関係を築き、将来両国の間でもいい関係をつなぐ架け橋になりたい。イージム大陸はガレント王国からも遠く、現在は連絡もなにもままならない。そんな中、友好国としてアルムとの関係を良好に保つことは将来的な投資と同じだからね」
「そう、なの? なんかタフトって大人みたいな考えするんだね……」
「王族に生まれた者の宿命さ。王族は国の為なら命も惜しまない。その代わり多少の贅沢はさせてもらう。それがガレント王国の教えだからね」
そう言いながらロディマスさんにくっついて行くと、一つの部屋にたどり着いた。
「私に考えがあってね、君たちはまずは同じ部屋で住んでもらおうと思う。本来王族は上の階で従者の部屋もあるが、タフト君とアルムエイド君は同じ王族、まずは同部屋で下々の暮らしを体験してもらい、それから上の部屋に移ってもらおうと思う。従者の人には先に上の部屋を用意するから、そうだねひと月くらいはここで共同生活とは何かを学んでもらいたい」
ロディマスさんはそう言って人差し指を立てる。
私もタフトも勿論それに同意をするのだが、ここでマリーが声をあげる。
「すみませんが、それでも私はアルム様のお付きメイド。お世話をさせていただきます」
「すまんが、ひと月は我慢してくれ。この学園に入るならこの学園のやり方に慣れてもらわないとだからね」
「しかしッ!」
「マリー、落ち着いてよ。大丈夫だから。それに会えなくなるわけじゃないんだしね」
「でもアルム様ぁ……」
今まで姉のように、そして母のようにやさしくしてくれたマリーには悪いけど、決まりは決まりだ。
それにひと月だけって話だし、そこまで我慢してもらうしかない。
「ロディマスさんも言ってる通り、ひと月だけだから我慢してね?」
「……アルム様がそこまで言うなら」
しょぼ~んとしてマリーはそれでも頷いてくれた。
「よろしい、それでは君たちの採寸をする。まぁ、初等科の生徒は同じような年ごろの子もいるからストックの学生服もあるだろう」
そう言ってロディマスさんは私たちの採寸をし始める。
そして数値を見てうんとうなってから、「これならストックがあるな」と言って取りに行く。
その間私とタフトはアルガス副学園長に部屋の中に案内されて、いろいろと決まりなどを教わる。
「待たせたね、さぁこれを着てくれたまえ」
ロディマスさんはそう言って私とタフトに包みを手渡してくる。
「とりあえず着てみてくれ。問題が無ければこの後アルムエイド君、それと……やはりタフト君も一緒の方が良いな。学園長が呼んでいるので一緒に来てもらおう」
「学園長が?」
「そうだよ。さぁ、早く着替えてくれたまえ」
ロディマスさんに促され、私とタフトは顔を見合わせてから着替えるのだった。
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