5-4:学園都市ボヘーミャ
アラフォー女子が異世界転生して第三王子になりました。
いろいろ有りますが、主人公アルムは今日もBLではぁはぁが出来るネタを探して我が道を逝きます。
学園都市ボヘーミャ。
ウェージム大陸の南端にある場所で、海峡を越えればサージム大陸も近い。
港町に隣接している学園都市で、どこの国にも属していない完全な中立でもある。
ここの特徴として、城壁に囲まれた学園が街の中心にあって、そこから周辺に街が広がっている。
街の管理も学園がしているらしく、有事には学園が指揮をとることがあるらしい。
魔術を学ぶ者には貴族も平民も関係なく、その実力だけを基準に門を開いている。
この学園で開発された魔道具などはかなり貴重で、全世界でも使用されている。
代表的なのは「風のメッセンジャー」という、現在この世界ではなくてはならない通信魔道具。
そのほかにもいろいろあり、学園はそう言ったマジックアイテムを販売したり各国の魔道研究の依頼を受けたりして成り立っている。
また、学園では各国の支援を基に地政学や政治学なども教えており、単に魔道を学びに来る以外の留学生も多い。
「見えてきたね、あれが学園都市ボヘーミャだ」
タフトはそう言って窓の外を見ている。
私もそれにつられて見ると、少し小高い丘の上にお城のような城壁があり、その中にとがった屋根の建物や塔が見て取れた。
「なんかお城みたいな学園だね?」
「もともとはあの学園しかなく、安全確保のために外壁が作られたらしい。しかし時代と共に人々が集まり周辺に街が出来たらしいね」
タフトはそう言って読みかけの魔導書と閉じる。
歴史ある学園だという事は何故か知識で知っていた。
そして私にも大体の学園に対する知識があった。
「でも、どこにも属さないでやっていけるとは、ほとんど一国家みたいなものじゃないかな?」
「そうね、ボヘーミャはある意味国家と同じね。中立で各国も不可侵条約を提携しているけど、その実、女神の加護はあるわ。世界で必要となる魔道具はここでしか作れないし、『鋼鉄の鎧騎士』の素材となるミスリル合金ですらここでしか大量生産できないわ。だからボヘーミャの機嫌を損ねると大変なことになるからね」
率直な意見を述べると、エルさんがさらにとんでもないことを言ってきた。
「あの、それってかなりの事なんじゃ……」
「そうね、万が一ボヘーミャがどこかの国の支配下にでもなったら世界のパワーバランスが崩れるわ。だからここ千四百年位前から女神の加護もついたのよ。要はボヘーミャに手を出すと女神様が黙ってないぞってね」
それ、究極の防衛システムなんじゃないの?
この世界で女神様相手に喧嘩売るって相当なもんだよね?
「ま、中立とはいっても運営に関与する費用は各国から捻出してもらわないといけなからね、持ちつ持たれつの関係でもあるわけよ」
エルさんのその言葉に私はどこの世界も大人の事情ってのはあるんだなと改めて思うのだった。
* * *
「エル姉様、すみませんが大使館によってから学園に向かいます。よろしいですか?」
ボヘーミャの街に入り、タフトはエルさんにそう言って許可を取る。
エルさんもすんなり了承して、私たちはいったんガレント王国の大使館に向かった。
「ここにはガレント王国の大使館があるんだ。あれ? そうするとイザンカ王国のは?」
「残念ながら運用コストの関係からイザンカは大使館を設置しておりません。他国もボヘーミャに大使館を設置している所は少ないでしょう。何かあれば今までは『風のメッセンジャー』で連絡は取れましたから」
私の疑問にマリーが応えてくれた。
確かに通信手段があるなら急ぎの件については事前に連絡が取れる。
ゲートとかもあれば人の往来だってできそうだ。
しかし今現在通信手段である「風のメッセンジャー」と緊急時の往来に使える「ゲート」が使用不能になっている。
「着いたようだね」
改めて今おこっている問題が大きいことを感じていると、タフトが大使館についたことを伝えてくれた。
見れば街中の一等地だと言うのに、大豪邸にしか見えない。
「これ、大使館なの?」
「ああ、我がガレント王国の大使館だよ」
タフトがそう答えてくれる中、私たちの馬車は豪邸の門をくぐるのだった。
* * *
「よくぞお越しくださいました、殿下」
「ご苦労、スパルトス隊長にも言われてね。顔を出しに来たよ」
大使館という建物に入り、広間で出迎えを受ける。
真っ先にあいさつに来た人が大使のアイゼン=ハルトマンさんという人らしい。
少し頭に白いものが混じって入るが、オールバックのそれは清楚感があり結構なイケオジだった♡
ボヘーミャにはもう五年ほど大使として滞在しているそうだ。
「殿下がこれより学園で魔術を学ぶ手続きは整っております。ガレントは代々魔道に長けている王族をボヘーミャで学ばせる風習があります。殿下も先達に負けぬよう学ばれますよう」
「わかっているよ、僕としてもさらに魔道を学ぶ必要を感じている」
そう言って何故かタフトは私を見る。
「アルム…… 君も学園で魔道を学ばないか? どちらにせよ今の君がイザンカに戻っても魔法を自由に使えないのであれば問題となるだろう。それにここでいろいろ調べれば君の失った記憶も取り戻せるかもしれないよ?」
「え、えっとタフト?」
タフトは私をじっと見て答えを待つ。
確かに、今の私は魔力が多くあってもそれを自由には使いこなせない。
さらに言うならイザンカにいた時の記憶が全くない。
こんな状態でイザンカに戻って大丈夫なのだろうか?
「まぁ、いったんここで情報収集をすることを進めるわね。イザンカに戻るにせよ、途中ドドス共和国を通らなきゃでしょ? 戦争には勝ったとしても、そこを記憶を失った、そして魔法が自由に使えない第三王子が通っていると知ったらドドスが黙ってはいないでしょうね?」
私が悩んでいるとエルさんはそんなことを言ってくる。
「しかしエル殿!」
「まぁまぁ、ずっとここにいろってわけじゃないわよ。ボヘーミャにもシーナ商会はある。ここから先について情報収集は必要でしょ?」
マリーがエルさんにかみつくと、それをなだめるようにエルさんはそう言う。
確かに、今まではエルさんがいたからシーナ商会の情報が回ってきていた。
風のメッセンジャーが使えない今、情報収集は今後の行動にとっても重要な事となる。
「確かにドドスを通るとにゃると、アルムの正体はばれたらまずいニャ」
「くーっくっくっくっくっ、その時は目撃者をすべてこの私が抹殺してあげましょう!」
カルミナさんもアビスもなんか言っている。
私はマリーを見ると悔しそうにしているが、不意に私を正面から見て言う。
「アルム様、確かに今後を考えると旅費の確保も必要ですし、ドドスを通過するならそれなりの準備も必要です。しばしここボヘーミャにとどまり、軍資金の調達をしたいと思います……」
マリーはそう言って私に頭を下げる。
「わかったよ、野盗から摂取した資金も減る一方だしね。ずっとエルさんのご厚意に頼っているわけにもいかないもんね。僕も手伝うよ!」
「いえ、アルム様にはタフト殿下の言う通り、短期ですが学園に入っていただき魔術を学ばれるのがよろしいかと思います。イザンカにお戻りの時にアルム様が魔法を使えないとなれば問題となりますし」
うーん、そういえば私は無詠唱ですごい魔法を扱えたって言ってたな。
記憶が無くなっちゃって魔法が自由に使えないけど、魔法が使えないまま国に戻っても足手まといにしかならないかもしれない。
それに魔法って確かに興味はある。
私はタフトに向かいなおって言う。
「うん、わかった。僕も学園にしばらく滞在して魔法を学びなおしてみるよ!」
「よし、話は決まった。アイゼン! アルムも学園に留学する。準備をしてくれ」
「御意」
こうして私は学園でしばし魔道を学ぶことになるのだった。
面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。
誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。
*読んで頂きありがとうございます。大変申しわけございませんが本作は不定期更新となります。どうぞご了承いただけますようお願い致します。
*すみませんが年末年始の本業の関係の為に当面の土、日曜日の更新を止めさせていただきます。どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします。