4-24:マシンドールの暴走
アラフォー女子が異世界転生して第三王子になりました。
いろいろ有りますが、主人公アルムは今日もBLではぁはぁが出来るネタを探して我が道を逝きます。
「あの子は、いえあの十二番目のボディーが問題だったのです」
ルミナ司祭はそう言って左の腕をめくりあげた。
そこには古い傷跡があった。
「これは?」
「エルピートゥエルブにつけられた傷です」
思わず聞いてしまった私にルミナ司祭は悲しそうにそう言う。
そしてエルさんが継いで話を始める。
「エルピーシリーズは記憶媒体を最初期のエルピーワンから流用することで経験値を高め量産化した時にそれまでの経験が生かせるようにしようとしたの。でも度重なる機体の交換に同じタイプの双備型魔晶石核ではだめだと分かり、十一番目の機体から別の精霊の双備型魔晶石核を使い始めたの。それが問題だった……」
エルさんはそう言って詳しく説明を始めてくれた。
従来のエルピー型の双備型魔晶石核は魔晶石内に炎の精霊を封じ込めていたらしい。
なので戦闘などにはとても適した性質を持っていた。
だが逆を言うと細やかな事、穏やかな事に対しての融通が利きにくくどうしても出力が上がってしまっていた。
それがプルツーイレブンで炎の精霊から土の精霊の双備型魔晶石核に変えたら安定を始めた。
しかし動きなどはゆっくりになる分、パワーが逆に上がってしまい今までの記憶媒体の魔晶石で同じくコントロールしてもオーバーパワーになってしまい家事一般が破壊工作に逆戻りしてしまった。
そこで当時最適な精霊について姉のように慕っていたエルさんにルミナ司祭は助言をもらい、エルさんが水の精霊を魔晶石に封じ込めて双備型魔晶石核を作ったのだった。
だがここでエルさんでも想定外のことが起こっていたことを当時は誰も知らなかった。
水と炎は本来相反する力。
それは精霊たちにとっても忌み嫌う対極をなす存在。
精霊力は基本的に
炎は水に弱く
水は土に弱く
土は風に弱く
風は炎に弱い
という特性を持っていた。
エルピーシリーズは最初炎の精霊が核となり始まった。
そして十一番目で土の精霊、さらに最後の十二番目で水の精霊の双備型魔晶石に変わった。
誰もがこれでうまくいくと思っていた。
なので最後にエルピーシリーズとして記憶媒体の魔晶石を一つコピーしてから十二番目を起動させた。
「そして暴走が始まったの。本来記憶媒体の魔晶石は炎の属性、しかし水の性質を持つ双備型魔晶石核であれば心と体が相反するものとなってしまう。あの子は、エルピートゥエルブはそれによって狂ってしまったの。記憶媒体が心臓である双備型魔晶石核から攻撃をされて暴走をした」
「あの子は、苦しかったのでしょう。しかし被害を抑えるためには致し方なかった。契約者である私から見放されたあの子はさぞかし私たちを恨んだことでしょう」
暴走を始めたエルピートゥエルブを押さえるたえにルミナ司祭は強制命令を発するも、体がいう事を聞かず攻撃的になってしまったエルピートゥエルブは水の精霊の魔法によって水の刃でルミナ司祭を傷つけてしまった。
ここにきてこのマシンドールは危険体として排除されることが決まった。
だが、いったん捕らえられたエルピートゥエルブはエルさんの立会いの下、解体をされることとなったがその時にエルさんにも想定できない暴走をしてその場から逃げ出したのだった。
「あの時あの子の絶望と悲しみが伝わってきたわ。それはエルピートゥエルブの記憶媒体だけでなく私が手掛けた双備型魔晶石核の中にいる水の精霊からも。作られて呼び出された子がいらなくなり捨てられる。そうあの子は感じていたのよ……」
仕方ない事とは言え、今まで愛されていた人たちや生みの親から拒絶されたエルピートゥエルブはその後このユーベルトの街自体も恨んでいたらしい。
そしてエルさん曰く、怒りに狂った精霊は人を襲うとの事だ。
それが記憶媒体の魔晶石からの情報も加算され、エルピートゥエルブを狡猾な殺戮マシーンに変えた。
もともとマシンドールは戦闘用。
いくら出力を押さえても双備型魔晶石核から出る魔力により水の精霊魔法が使える。
エルピートゥエルブは神殿の者やマシンドール技師、そしてシーナ商会やユーベルトの領主ハミルトン家を次々に襲った。
「でも最後にあの子は討伐隊に追い詰められ、渓谷で私による手傷を受け落ちて行った。渓谷の下には川があってその先は大きな滝。いくらマシンドールであっても無事では済まないはずだったわ。でも、四十年近くしてまたあの子が現れたっていう事は……」
「今まで何処にいたかは分かりませんが、また私たちに復讐に来るでしょうね」
エルさんの言葉にルミナ司祭は悲しそうに言う。
「あの、でもエルピーがいるってことはマシンドールの開発って……」
「まぁね、その後に風の精霊を核にした双備型魔晶石核にしたので、記憶媒体は炎の属性だから想定以下の出力しか風の双備型魔晶石核は力が出せないの。それは使用人として使うにはちょうどいい条件となり、コピーされた記憶媒体の魔晶石を使って量産が始まったの。ただ、最初のコピーしたものだけは今のエルピーに使っているわ。そしてシーナ商会の中であの子は今もいる。多分、寿命としてはあともって三十年手とこかしら」
「私が先かエルピーが先かですね」
そう言ってルミナ司祭は穏やかに笑う。
だが、四十年間も姿をくらましていたマシンドールが何故今頃?
「とにかくこの神殿にはぐれのマシンドール、エルピートゥエルブが現れたってことは一大事よ。何とかあの子を捕まえて今度こそは……」
「エル様、あの子を……」
「いえ、今ならまだ手立てがあるはずよ。風の双備型魔晶石核なら炎の記憶を持った記憶媒体の魔晶石でも暴走は抑えられるはず。無理に体を動かそうにも風は炎に弱い。きっとあの子も救えるはずよ!」
エルさんはそう言ってぐっとこぶしを握って力説するのだった。
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