雲の上 空の中 太陽の下 私は鳥になる
私は、翼を命一杯広げ風に身を任せていた
雲の地平線では沈む太陽が手を振っている
不思議な事に私は前世の記憶が残っている
人間だった私は、幼い頃に両親に捨てられ
施設へ預けられた。でもどうしても施設の
規律に従えず間もなく脱走。身寄りの無い
私は間もなく行き場を失い見知らぬ海に出た
砂浜に寝転がり大空を眺めた。広く青い空は
私を優しく抱きしめてくれた。心地良い波の
音、足をくすぐる小さな波々。その感覚が
薄れ目が覚めた瞬間に私は、鳥の巣で目を
覚ました。人間の時には味わえなかった
温もり、家族の匂いが鼻をくすぐった
大人になり巣立ちした私は、またも孤独な
世界に身を置く事になっていた。これは試練か
いや孤独が試練ではなく、生そのものが試練
なんだと気が付く事が出来た。失敗を繰り返し
狩りを覚え、風の捕らえ方を学び、苦しく大変
でも、何とか生きてきた。何度と訪れた友との
別れ、人間に捕らえられた仲間を助けられず
独り逃げ出した場面は脳裏に焼き付いている
それでも私は、孤独では無かった。人間の時には
巡り会えなかったパートナーと共に生きる道を
開けたのだから。
隣で飛ぶ彼女の顔が夕陽でオレンジ色に染まった頃
私は試練を乗り越えられたのだと実感した。