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80話 ポーション作りの続きとあれこれ




 テーブルの上にずらりと並ぶポーション瓶。

 陶器製容器の方はもちろんだが、ガラス製容器の方もまだ透明度は低く、中に何が入っているのかわからない。

 一応制作時に容器の形状を変える努力はしているのだが、微かな違いでしかないので、エリィ以外には言われれば気づく程度の事でしかない。

 自分用ならそれで困らないが、納品用である以上、そこはどうにかしなければならないだろう。

 3等級が作れるようになったばかりだから仕方ないとはいえ、容器のデザインも今後の課題だ。

 

 何をどう言い繕ったところで、傷用なのか、解熱用なのか、それ以外なのかがわかり難い事実に変わりはない。

 仕方なく、道中何かに使えるかと作っておいた紙と色インクを、収納から取り出すとテーブルに並べた。

 一々手描きと言うのも面倒だなと、ラベルもスキルで作ってしまう。ポーションの用途ごとに、色を変えて作ったラベルを張り付ければ完成だ。


(次からラベルも同時に作れるように、素材を用意すれば良いかしらね。ガラスの透明度が上がればそれも不要になりそうだけど……ぁ、ポーションだけじゃなく軟膏とか散剤なんかも作っておこうかしら…だけど、とりあえず休憩しないと)


 エリィは良い思い付きだと思ったが、如何せんスキルを使用し続けたせいで身体が重い。

 修復程の疲れとまではいかないが、結構な疲労感に襲われている。


(少し休んでから…かな。それにしても薬品類なら量もかなり作れるようになったわね)


 テーブルの空いた部分に突っ伏すと、そのまま意識が遠くなっていった。




 ―――ピチュ、ピチュチチチ


 鳥の囀りにハッと意識が戻って来ると同時に身を起こした。


(いけない…いつの間にか眠ってたわ。でもおかげで身体も軽くなったし、続きと行きますか)




 気づけば色とりどりのラベルが目に喧しい程、小瓶や小壷、散剤を包んだものによって、テーブルが制圧されている。


(うん、調子に乗って作りすぎたわ)


 すっかり素材の残量も少なくなってしまい、エリィは若干顔を引き攣らせながら唸った。


(採集に出ることもできない軟禁状態なのに、やらかしちゃったわね……)


 そんなエリィに気づいたのか、ムゥがエリィを見上げながら足元に近づいてくる。


【主様ぁ、どうしたのぉ?】

【ぅん? ぁ~…今ここに軟禁状態でしょう? なのに素材を使いすぎちゃったから、どうしたものかなぁって考えてただけ】

【なんきん? かぼちゃぁ?】


 ムゥが首を捻っている様子が、本人には申し訳ないがとても可愛らしい。


【そっか…話しただけで、ムゥにはちゃんと説明してなかったわね……まずムゥはどこまでわかってる?】

【さっきお話ししてた事ぉ? んとね、主様は強くなるのよぉ! ムゥも頑張るるの! そんでセラさんも皆も、ずっと一緒なのよぉ!】

【そっか、うん】


 ムゥはハレマス調屯地で出会ったスライムだ。

 あそこは魔物除けも結界石もあったが、魔物除けはスライムに効果がなかったのだろうし、結界の方も敵意がなければ入村可能とか、何らかの条件付けでもあったのだろう。

 もうこれ以上ない程粉砕した後なので確かめようもないが。

 だが罠が刻まれていた―――行きは良い良い帰りは恐いってやつだ。

 入ってしまったら出られない。

 ムゥがどういった理由であそこにいる事になったのかはわからないが、もしかすると他に居たスライムは家族なんじゃないかと、あの時も考えた記憶がある。

 彼らの増殖方法など知らないので、それが正解とは限らないが、少なくとも仲間ではあっただろう。そう考えて今になって一瞬後悔が過った。


(もし一緒に連れてきていれば、もっとスライムの事を知ることが出来たかもしれない……まぁ、彼らは行きたいと意思表示してくれた訳じゃないし、今更な事だわね。

 それにしても、やっぱりムゥって子供な印象よね。誕生日は鑑定で分かるけど、年齢はわからないから断言はできないけれども)


【軟禁っていうのはね、ざっくり言うと、ここから出ちゃダメですよ~って事なのよ】

【出ちゃダメなのよ?】

【そう。理由もなくそう言われたわけじゃないから、大人しくしててね】

【むにゅぅ……ムゥと同じのが居たら良いなぁ】


 唐突に話が別の方向へ吹っ飛んだので、エリィは一瞬ポカンと呆けた。

 『わかったのよぉ』と言いながら、テーブルの上に所狭しと置かれた物の間を器用にすり抜けたり、ペチペチと腕のように伸ばした触手でそれらを叩いたりして遊んでいるムゥを見つめていると、ストンと腑に落ちるものがあった。


(そっか…同族のお友達が欲しいのかもしれないわね。どこかに私についてきてくれるスライムが他にも居れば良いのだけど、どうにもこの世界、スライムってレアっぽいからなぁ)


 そんな事を考えていると、部屋の扉がノックされる音がした。


 オリアーナとゲナイドの気配が近づいている事には気づいていたので、すぐさま開いても問題はないだろうが、一応念のために扉の外を無言で窺う。

 出会った時、オリアーナは気配を消していたので気づけなかったが、あれ以降彼女も気配を消したりしていないし、エリィの気配察知能力も向上しているので気づけるのだ。


「オリアーナだ。ゲナイドも一緒なんだが、今いいか? もう昼食って時間じゃないが食べ物を買ってきた」

「はい、少しお待ち下さい」


 エリィはそう言うと、扉から急いで離れ、テーブルの上を占拠している小瓶達を収納へとまとめて放り込み、やや駆け足で扉の方へ戻ると、そっと鍵を開けて扉をすかし開いた。

 隙間から見えたオリアーナも何やら包みを片手で抱えているが、ゲナイドの方は両手一杯に、串焼きやら大きな竹のような木筒等を抱えている。


 その様子に扉を大きく開いて、せめて一部なりとも受け取ろうと両手を伸ばしたエリィを見て、ゲナイドが笑って言う。


「エリィには重いぞ。ただ持つのは大丈夫なんだが、皿とか準備してくれたら助かる」


 エリィは頷いて部屋から出ようとしたところで、足を止めオリアーナ達を見上げた。

 オリアーナが『どうした?』と訊ねてくる。


「……手持ちの食器では小さそうなので、宿の物をお借りしようと思ったのですが、部屋から出ても問題ないですか?」

「あ、もちろんだ。宿の中なら出歩いてくれて構わない。部屋だけじゃ息が詰まるだろう? 庭の方も出ていいからな。あ~ただ庭は昼間だけにしてくれるか?」


 オリアーナが慌てた様子で返事をしてくれた。

 一つ頷いて、エリィは厨房の方へと向かい、お皿やカトラリー等一式を借りてきた。

 テーブルにそれらを置き広げるたびに、オリアーナとゲナイド二人して、どこかの店か屋台で買ってきた料理を並べていく。

 料理を並べ終ると、ゲナイドはどこかからか椅子を2脚とってきた。

 全員テーブルに着くと「まずは腹ごしらえしよう』と言って、すぐに前の二人は食べ始めた。

 エリィはと言うと、自分のお腹に左手を軽く添えて考え込んでいた。


(まぁそっか…あれだけ作ってたんだから、それなりに時間は経ってるわよね…その割に減り切ってるって訳じゃないみたい? ん~減ってはいるのは確かだし、まぁいっか)


 何気なく庭の方へと顔を向けて、そこでエリィは固まった。


 見覚えのあるフォルムをした円らな瞳と、見つめあうことになったからだ。

 




ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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