60話 とうとうギルドに到着!
高さが4、5m程だろうか、そそり立つ壁が現れてきた。
壁の一番上には何かが動いているのが見える。恐らく一番上部分は通路にでもなっていて、兵士か何かが警備にあたっているのだと思われる。
下部は石が組まれて頑丈な造りになっているが、上半分は木製で強度に不安がありそうだ。とは言え図らずも前線拠点となってしまった村としては、最大限努力した結果なのだろう。
オリアーナが壁に近づき、閉じられた鉄製らしき扉をガンガンと叩いた。
その途端上の方から、声が聞こえた。
「少し待っててくれ~」
「……あれ? その声ザイード?」
オリアーナの知った声だったのか、上を見上げて声をかけるが反応はなく、暫く待っていると鉄製の奥から声が聞こえた。
「右にある隙間から証札かギルド証、もしくはそれに準ずる身分証明書を差し入れてくれな~。あぁ、手は離さないでくれよ~」
鉄製の扉の右側にある壁部分に、言われた証が入れられる細い隙間が横に入っている。
そこへオリアーナが自分のギルド証を首から外し差し入れると、隙間から微かに光が洩れてきた。
エリィが不思議そうにそれを見つめていると、オリアーナが小声で説明してくれる。
「隙間のすぐ奥に、証札を作るときに見ていないか? あんな装置があってな。それで札と、札の持ち主に相違がないか確認しているんだよ。まぁ一人目の確認が終われば兵士が出てくる」
何があったのかわからないが、奥から物を倒すようなドンとかガンとか言う音がしたかと思うと、重そうな扉が大きく開かれた。
「ティゼルト隊長!!」
「久しいなザイード」
「久しいなじゃありませんよ~! いったい何時になったら戻ってこられるんですか~! そして『ザイード』と呼ばないでください! 俺の事は『ザイ』で!」
「お前…開口一番それか…」
「いゃ、あの…ですけどね、なかなか報告にも戻られませんし~、もしかしたらナゴッツに住み着いちゃうんじゃないかとか噂になってたんですよ~。それから強そうな名前は俺の名前と思えないんですってば~」
「名前の件は置いておくにして、なんだその無責任な噂は……それなんだがな、ナゴッツ自警団の訓練自体は終わってるんだ、しかしモナハレ団長の腰痛がな…」
「腰痛って……えぇ!?…まさかまたナゴッツに行かれるんですか~?」
「その予定だよ」
オリアーナの言葉に、目に見えて萎れる様が遠目にもわかって、エリィ達は吹き出しそうになっている。
「それでだが、そろそろ入村させてくれないか?」
「ぁああ、失礼しました! どうぞ…って、そちらは?」
「ぉぃ…ザイードお前…さっきから隣にいたのに気づいてなかったとか言わないよな?」
何とか誤魔化そうとしてはいるが、目の前のザイードと呼ばれた兵士(本人はその名で呼ばれたくないようだ)が、オリアーナしか見ていなかった事は間違いないだろう。
その様は大好きなご主人様の前で、良い子に座り『構ってアピール』をするちょっと間抜けな…いや、一途な大型犬の如し。
しかし、エリィ達を乗せた荷車は兎も角、こんなに大きく白銀という目立つ色をしたグリフォンをどうやったら見落とせるのか、理解に苦しむ他ないが…。
そんな彼はオリアーナに言われて初めて、セラを見て腰を抜かしている。
「ぅ、ぅえ! な、ま、魔物ぉぉ!?」
「お前なぁ…落ち着け! こっちはギルド門だろうが」
ハッと動きを止めた兵士は、オリアーナとセラを交互に何度か見てから、飛び掛からんばかりの勢いのまま土下座をした。
「す、す、すすす、すみません~~~!!!! でも、でもですね、こんな辺境で従魔連れなんて見ることないんですよ~~」
「はぁ、説教は後だ…とにかく外は危険だから先に入らせてくれないか」
眉根をきつく寄せ、額を右手で押さえながら、オリアーナが言うと、ビシッと立ち上がって敬礼する。
「ハ、ハイ! どうぞであります~!」
ザイードにエリィも証札の確認をして貰い中へと通される。
オリアーナがザイードにあれこれと伝え、ギルドの方へも連絡を入れて貰った。
そこで更に待たされるのかと思えば、通路を道なりに進むように言われ、そのままザイードの見送りを受けた。
「じゃあエリィはこのまま真っすぐに進んで、扉をノックすれば後は職員が対応してくれるから。手続きが終わったらギルドで待っててくれ」
「オリアーナさんは?」
オリアーナは荷車を引きながら、横通路の方を指さした。
「私はこっちだ」
「ぁ、はい。色々とありがとうございました」
エリィがムゥを抱えて頭を下げると、アレクとセラもお座り姿勢で頭を下げた。
「はは、エリィのお供は皆賢いな。それじゃまた後でな」
「はい、行ってきます」
ガラガラと武具と農具を乗せた荷車を引くオリアーナが、通路の暗がりに見えなくなるまで見送ってから、教えられた方へと足を進めると、目の前に観音開きになっていそうな、2枚の木製扉が見えてきた。
その前で立ち止まり、恐る恐るノックをしてみると、少しして扉が1枚動いて開かれた。
「トクスギルドへようこそ。ここの職員でケイティと言います。ティゼルト隊長のお知り合いと連絡を受けています、どうぞお入りください」
開かれた扉の先に居たのは、茶色の髪にオレンジ色の瞳をした若く可愛い感じの女性で、大きな眼鏡が印象に残る。
その人物の立つ場所の奥は大きな広場になっていて、奥にボロボロの等身大人形が幾つか見えるので、傭兵業のギルド員の訓練場か何かなのだろう。
ついキョロキョロと見回してしまうが、自分とケイティ以外に人影は見えない。タイミングがずれただけか、それとも従魔がいる事で一旦締め切りになったのかわからないが、とても静かだ。
(ぉぉぉ……ここが冒険者ギルド、正面じゃなく裏から入ったって感じなのが少し残念だけど)
「お名前はエリィ様と伺っていますが、そうお呼びしていいですか? たまに難色を示される方もいらっしゃるので」
「ぁ、はい、それで大丈夫です」
「ありがとうございます」
オリアーナから色々と伝えてもらえているようで、本当にありがたい事だ。
「まずはギルド証を作成しましょう」
脇に置かれた机の上にあるのは、証札を作ったときに見たあの装置より、やや大きな装置だった。
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修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)