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53話 オリアーナの提案

 



 タルマが『はぁぁぁぁ』と、思い切り貯めてから息を吐いた。


「すまないねぇ、どこもポーションなんかは不足しててねぇ、そのせいでがっついちまったんだろうけど」

「申し訳ない、ほんとつい……」

「いえ、大丈夫です」


 エリィは座り直してから首を横に振る。


「それに…ごめんなさい、作れると言っても恐らく期待外れです。2等級がやっとですから」


 申し訳なさそうな声音で頭を下げるエリィに、オリアーナとタルマが被せ気味に食いついた。


「2等級なんて作れるのかい!? そりゃぁ凄いじゃないか」

「あぁ、凄いよ。ここらの村で使える薬品類なんて、粗悪品でも回ってくればマシな方だからな」


 二人の様子に、この村を含めた近村での薬品類の不足は、切迫した状態なのだろう。


【これは暗に働けと言われているのだろうか…】

【エリィに働けっちゅうよりは、感嘆してるだけちゃうか? すごいすごい言うとるやん】

【主殿の意に添わぬのであれば、俺がすぐに迎えに行こうか?】

【ポーションは知ってるのぉ~!】

【どうかしらね…あぁ、セラはそのまま待機してて、ムゥは元気だなぁ……】

【主殿…何気に疲労が溜まっている様子】

【まぁ作ることになっても練習になるし良いんだけど、素材採取からとかだと面倒…ぃゃ、反対にチャンス、かも】

【【【チャンス?】】】

【そう、今回の人間種との接触は事故みたいなものだけど、これからも旅を続けるなら避けて通れないモノがあるわ…お金よ、オ・カ・ネ】


 二人には見えない身体の陰で、エリィは片手をグッと握りしめた。


「あの、もし良ければ作りましょうか?」

「ぇ…あ、それはとてもありがたい申し出だ…が…」

「作ったものは納品しますので、技術料だけでも頂ければ幸いです」


 オリアーナが一瞬タルマの顔を窺うが、直ぐに視線を落とし考え込むように腕組みをする。


【あっれ…もしかして無償奉仕を求められてたのかしら】

【どないやろ】

【無償奉仕なんてしないわよ! ぁ~スープ代分はしても良いけど】


 エリィの勢いが急降下する様子に、アレクとセラからは笑いを堪えている空気が漂ってくる。ムゥだけは『奉仕、奉仕!』と楽しそうにしているが。

 念話会議ではなく、現在進行形で流れるリアル沈黙に、エリィは『ぁ』っと小さく声を漏らした。


「あの、もしかして見えてないから無理だろうとか気遣って下さってます? もしそうなら大丈夫です、ちゃんと…」


 エリィが捲し立てる姿に、オリアーナが慌てて椅子から腰を浮かせる。


「そんな心配はしていないから落ち着いて。魔力で視界を補うなりしているんだろう? もし魔力を使う方法じゃなくても他にやりようはあるし、変な誤解とかはしてないから安心してくれ」


 固まったエリィに、オリアーナは落ち着いたと判断したのか、苦笑交じりに浮かせた腰を下ろした。


(……やっべ…魔力で補うのってこの世界じゃ普通の事だったんだわ…ドヤ顔で設定話さなくて良かったぁ。それに他にもやりようがあるって、この世界の医療水準って意外に高いのかしら……ふむ、やっぱりアンバランスな印象を受けてしまうわね)


「えっと、ごめんなさい…このスープ代も持ち合わせていないんです…『お金』って言うモノが必要なんですよね?」


 ついでとばかりに『お金』に言及する。

 考えればこっちの世界に転生させられてから今に至るまで、『お金』と言うモノを見た事がない。

 厳密に言えばなくはないのだが、小屋にあったのは随分を古い時代の貨幣らしく、現在も通用するかは甚だ怪しい。通用したとして前世の骨董品扱いだとしたら、出所の追求とかそれはそれで面倒そうだ。

 もちろん使えるお金なら、持ち出して来てはいるので、懐が暖かくなってありがたいのだが、望み薄だろう。


 詰まる所、現在の貨幣についてエリィは何も知らないのだ。小屋にいた間は必要なものは魔法で出せたし、それ以前に近隣に人の姿などなかったから、使う必要にも迫られなかった事が災いしている。


「そうか、エリィは森の奥で御婆様と自給自足の生活だったのだな?」

「……はい(違うけど頷いておくとしましょ)」

「ん~……そうだ、それがいいな」

「オリアーナさん?」


 オリアーナが両手をパンと打ち合わせ、笑顔を向けてくる。


「諸々上手くいくようにできそうだ」


 そんなオリアーナにタルマが怪訝そうな面持を向ける。


「ちょいとオリアーナ…本当に上手くいくんだろうねぇ?」

「え? 何? 私はそんなに信用がないのか?」

「いやぁ、腕っぷしは安心してるんだけど…あんたはちょっと抜けてるからねぇ」

「抜けてるって…そんなはずないだろう…」

「忘れたって言うのかい? 任せろって叫んで収穫に向かったら未熟芋を掘り返すし、農作業の手伝いに向かったら向かったで農具を壊す、他にも連絡用の鷹から伝書を抜かないまま飛ばしたりとかさぁ」

「は、はは…散々な言われようだな」

「枚挙に暇がないってのはあんたの事さね」

「ぅ…ぅぅ…」


 タルマには悪気はないと思いたいのだが、オリアーナは完全に撃沈してしまった。


「ちょっとやだよぉ、オリアーナのそれはいつもの事だし、誰も咎めたりしないんだから凹まないどくれよ」


 ケラケラと笑うタルマは、彼女の心を抉りまくっている自覚がないようだが、オリアーナもめげない心の持ち主のようだ。


「今回は上手くいく! 大船に乗ったつもりでいてくれ」

「はぁ、流石に今回は失敗じゃすまないからねぇ…で、どうするんだい?」


 口角を片方だけ上げて不敵に笑うオリアーナが、バッとエリィに向き直りその小さな両肩をガシリと掴んで顔を近づける。




「エリィ、ギルドに登録してみないか?」




ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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