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41話 廃村の探索 その2

曖気:げっぷのことです




 切望していたスライムとの出会いに、やや興奮気味のエリィだったが、まずは落ち着いて鑑定。



名前:なし

性別:なし

種族:クルスス(対応意訳:スライム)

誕生日:白の明月 10日(対応意訳:1月10日)

状況:食事中


 以下体力等の数値は全て『1』が列記されている。

 セラや死体の鑑定と違い、スライムの鑑定は空欄はない。スキルも『捕食』等のありきたりなものが並んでいる。

 ただ少し不思議なのは『年齢』の表記がないのは、何故なのだろう…考えてもわからないので置いておくとしよう。

 よく見れば他にも2体のスライムが、割れた皿の陶器片や座面が壊れた椅子等のゴミに張り付き、食事というか処理をしているようだ。

 

 襲い掛かられてもどうということはない数値に、身を潜めるのをやめる。床に砂でも落ちていたのかジャリッと音が鳴ると、1体のスライムが気づいたようで、張り付いたまま処理を中断し、黒く円らな瞳を向けてきた。

 じっと見つめあう事数分、スライムの方が先に興味を失くしたらしく「ぷほ…」と曖気なのか声なのか、表現に困る音を残して処理に戻っていった。


 スライムの習性も何も知らなので、今知りようもない事だが、廃村とは言え人間種の生活圏にいるという事は、誰かにテイムされていたのかもしれないと考えると拉致監禁する気はなくなっていった。


(捕まえるなら完全野良の方がいいわ)


 階段を上がり外へ出ると、もう1棟ある2階建ての――こちらは些か特徴的だ。屋根や木戸がピンクに塗られている。所々剥げて劣化は感じさせるものの、どうにも目を引く色合いだ。

 気配もなく無人だろうと思われるが、念のために警戒はしつつ中に入る。


 先だって偵察を終えた冒険者ギルド風の建物と違って、こちらは木製のコップや汚れた皿、食べ残しの肉等がテーブルや床に乱雑に散らばっていた。主に食べ残しのせいで、前世でいう『ハエ』らしき生物が集まっており、余計に不快感を煽る。

 完全撤収したというのは噓ではなかったと思って良さそうだ。

 それもかなり急な話だったのだろう、上着等の忘れ物と思しき物がゴミに混ざって散見される。いや、もしかしたら捨てていくつもりの、本当に『ゴミ』かもしれないが。

 奥には厨房、その手前にカウンターがあり、その端っこに先ほども見たファンタジー装置がぽつんと置かれている。

 冒険者ギルド御用達の装置かと思ったが、違うのかもしれない。

 存在感のある階段を上がれば、冒険者ギルド風の建物にあった部屋より幾分広い個室が並んでいて、こちらは使われた形跡があった。


(こっちの建物を拠点にしてたって感じね。まぁ細かく見るのは後回しにしてカーシュとケネスを呼びに行くかな)


 階下へ降りランタンを収納へ入れる。そのまま外へと歩いていくと、カーシュとケネスが、待っているようにと指示した場所で、座り込んでうとうととしていた。


(疲れ切っていたと気の毒に思うべきか、緊張感なさすぎと呆れるべきか…)


 はぁと小さく息をついてから二人を起こす。


「ほれ、起きなさい」

「…ぅん…」

「ぁ…ぅぁああ、悪ぃ」


 座り込んだままコシコシと目を擦っているカーシュに比べ、ケネスは少々落ち着きが足りないようだ。


「ケネス…ちょっと落ち着きなさいって」

「ぅぅぅ…ゴメン、俺」

「いいから村に入りましょ、誰もいない事は確認済みだから」


 そう言ってエリィは、周囲を見回すように顔を巡らせてから見上げた。

 やはり移動時間が結構かかってしまったようで、木々の隙間から降ってくる光は色味を深くしていて、辺りがうっすらと朱に縁取られている。


「今日はここで休みましょ」


 二人が頷くのを見てから、先頭にたって廃村へと歩き出す。


【アレク、セラ、待たせてゴメンね。そっちはどう?】

【こっちは至って平和やで~】

【問題ない】

【良かったわ。こっちは廃村へ向かうところ。そっちからは見えてるかもしれないけど】

【なんや寝とったな、大物なんかただのアホなんか知らんけど】


 にゃははと笑うアレクに脱力していまう。


【まぁいいわ。今日はここで一泊ね、誰もいないからどの建物でも好きに使っていいと思うわ。ぁ、結界石の設置は任せるからね】

【はいよ~】

【了解した】


 エリィ、カーシュ、ケネスは冒険者ギルド風の建物2階の個室で今日は休むことにして、それぞれ決めた部屋へと散った。

 こちらの個室はかなり狭かったと思うが、兄弟は一緒の部屋で休む事にしたようだ。

 寝る前に地下の様子は見に行ったが、スライムたちは地下から動いてはおらず、床でぷ~ぷ~と寝息(?)を立てて眠っている。ただ3体いたはずだが、視認できたのは2体だけだった。




 翌朝エリィが目覚めると、寝台横の窓を開けてみた。

 蝶番部分が錆びていて、すんなりとはいかなかったが、軋む音と共にゆっくりと開いていった。

 うっすらと朝靄のかかる森は、やはりどこか神秘的で美しい…まぁ剥げのあるピンクの木戸ががっかり感を誘うが。

 銀仮面に巻いた布を調整し、フードを目深に被り直してから、静かに部屋の外へと出る。

 カーシュとケネスはまだ眠っているようなので、今のうちにと外へ出る。


【アレク、セラ、起きてる?】

【主殿、如何した?】

【……んぁ…ぁ?】


 アレクはまだ寝ていたようで、念話で届く声がぽやっと浮ついている。


【朝御飯どうする?】

【俺は狩りで済ませてもいいが、アレク殿は…】

【ア~レ~ク~、起きろ~】

【ぅぅ……なんやぁ?】

【朝御飯どうするか聞いてるんだけど】

【……ふぁ…せやなぁ…僕の事も気にせんでええで…なんや、あんましお腹減ってへんねん】

【了解……】

【主殿?】

【どないした?】

【いやぁ…いい加減面倒くさいなぁって】

【【?】】


 エリィの低い呟きに、アレクもセラも疑問符が飛んでいるようだ。


【このままじゃ何時までたっても、一緒に行動できないし色々と手間でしょ!? 何とかして、今日には彼らと別行動を取れるように頑張るわ!】







ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしています(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)


ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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