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35話 テントを物色




 内部は外観の大きさと違い、人族の大人が数人いても余裕がある広さがあった。流石魔具、前世の常識など見事に打ち砕いてくれる。。


 そこに置かれていたものは、寝袋のようなものを始めとした旅の必需品に武器。隅の方には使い込まれた鞄が2つと大小の背負い袋が置かれている。広さに対して荷物が少ないのは気になるが、不測の事態に備えブーツは浄化魔法をかけて脱がずに上がり込む。まずは背負い袋の方から中を確認してみることにする。

 

 小さいほうには包帯のように切って巻いた布が3巻きとポーションが3本。こちらは鑑定して傷と体力回復の2級ポーションだとわかった。あとはボロボロの本が1冊。植物の図鑑…冒険者用だろうか、線画で書かれた植物の絵に、用途など説明文が添えられている。水で濡らしたりでもしたらしく、一部のページが張り付いてしまっていた。管理が杜撰すぎるだろう…本は丁寧に扱うべきものだというのに。まぁ有難く頂いていくとしよう。包帯のような巻き布は後で使用するので、それ以外を収納へ放り込む。

 小さい背負い袋は小柄なエリィでも引きずらずに背負える大きさだったので、これも今後収納の取り出し口隠蔽用として、頂戴していくことにする。


 大きい方には同じポーションが5本と、着替え用の肌着。ポーションは収納に放り込み、肌着の方は大人用だから仕方ないが、大きい上にヨレすぎて使い物になりそうになく、後で始末することにする。背負い袋の方はこんなものだろう。


 鞄のほうはそれ自身も魔具で、所謂マジックバッグだ。見た目より容量が大きいので、持ち運びに煩わされずに済む。一つ目に開けた鞄には魔具が入っていた。火熾しの魔具や起動させれば水が湧く鍋に浄化の魔具等々、今後使えそうな物ばかりだったので、鞄ごと貰っていくことにした。

 2つ目に開けた鞄も魔具だが、こちらには携帯食に水筒、そして衣服が入っていた。衣服の方はどれも使い古されて少々ボロくなっているが、こちらは携帯食ごとカーシュ達兄弟に渡すことにしようと考えたところで、一枚の布に目が留まる。引っ張り出してみれば同じくボロいフード付きでポンチョのような形をした藍色の上着だった。


 羽織ってみれば当然ブカブカで引きずってしまうが、袖と裾はたくし上げて紐で縛るなりすれば問題ない。

 早速ローブを脱ぎ収納へと入れてから、包帯のような巻き布を銀仮面部分に巻き付けていく。こうしておけば仮面を隠せるだろう。そしてボロいポンチョを羽織って、着物のように重ね合わせてから、残っている包帯のような布でたくし上げつつ縛り止めれば、一見とっても貧乏人な幼児の一丁上がりだ。


 このテントの物色は一旦止めて次へ移ろうと立ち上がった。何しろまだ4つも残っているのだから。



 テントから出て、一応鍵は起動させておく。習慣は転生したからと言って早々に抜けるものではないので、戸締りはしないと落ち着かない。

 

 左隣のテントには鍵はなく、入り口部分が大きく開かれており、すんなりと中が覗ける状態だ。荷物は何も置かれておらず、また鍵付きテントと違って外観と内部の広さに齟齬はない。更にその左横のテント2つは小さな木箱が置かれているだけだ。木箱は上部が開放していた為、中が見られるのだが、どれもこれも何も入ってはいなかった。ただ微かに漂う臭気は、あの陶器の筒に入っていた粗悪な薬のものだ。

 最後のテント、最初の鍵付きテントの右隣のテントだが、こちらも鍵付きだった。魔紋は最初のものと全く同じだったので、同じ者の手によるものか、もしくは量販品として売られているのだろう。あっさり解紋して中を覗く。

 木箱が一つとその上に書類が置かれている。

 あの施設で見つけたメモもそうだったが、一応『紙』だ。もっとも植物の繊維を格子状に置いて乾燥させただけの、所謂『パピルス系』が使われている。

 ややゴワゴワとした手触りで、書き心地はあまり良くないだろうと一見してわかる。製作工程を省くか手抜きをしたのだろうと思われる。


(紙が用いられている世界か…他を知らないから比較できないけれど、文化水準はそこまで低くないのかな…いや、カーシュ達を思えば反対に低そう…魔法や魔具のおかげで前世でも不可能なことが可能になってたりするし、なんというかアンバランスな世界に思えるなぁ)


 思い耽って気が抜けてしまったことに、ちょっと自戒する。ある意味敵陣に潜入している状態なのだ。気を抜いていてはいけないと、一旦深呼吸をすると、今一度気配も探りながら探索を注視する。引っかかる影はなし。気配も警戒するようなものはなさそうだ。

 探索の常時展開はまだ慣れていない為、どうにも気が抜けがちでいけないと、少し項垂れてしまうエリィだった。

 


 改めて木箱の上の書類を確認する。

 まだ書いている途中だったのか、数行しか書かれていないが、メモのような走り書き感はなく、報告書なのかもしれない。



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 研究員及び雇った冒険者については、緑明7夜には処理を完了予定です。

 上記以外は同日昼までに眠薬にて半数の死亡を確認。残りについても夜までにはほぼ終わります。しかし

 

 



-------------------------



 やはりこのテントにいた者は、カーシュ達の敵で間違いなかったようだ。

 一番上の紙に文字が書かれているのみで、それ以外は白紙のままだったが、触れたことで紙の下に何かがあることに気づいた。幅が1㎝程の赤いリボンで、よく見れば魔紋が小さく見える。

 詳しく見てみないとわからないが、ざっと見た感じある種の転移紋のようだ。遺跡で見た転移紋と似ている部分がある。

 しばし考えた後、個別設定で時間停止、発動不可とした上で、そのリボンも収納へ放り入れた。


【おーい、大丈夫か~?】


 頭に響くアレクの声にハッと顔を上げる。


【ごめん、ずっと無言だったものね】

【無事なんやったら、それでええねんけどな。今いけそうやったら、どないなってんのか、少し教えたってくれへん?】

【一通りは調べ終えたわ。見つけたものは服とか色々、合流した時に見せるわ】

【なんや、もうぽっぽないないしとんのかいな】

【有効活用するためよ。大体その言葉の意味セラにはわから…】

【どないした?】


 探索には何も引っかかっていない。気配もつい先ほどまで何も感じなかったのに、今はそう遠くない距離から、恐らく人族が近づいてくるのを感じる。



 その瞬間エリィの脳裏によぎるのは『まずい』の一言だった。

 




ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしています(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)



そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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