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31話 碌でもない光景

想像すると胸が悪くなるかもしれません><

ご注意ください。

なんか嫌なものがあったんだなと思って読み飛ばしても大丈夫です!



 やはり何の気配もしない。

 西側にある建物に近づき、まず外観を観察する。

 板張りの壁は東側の建物と変わらない。整形されないまま張られた板は隙間だらけだ。

 だが、その隙間から建物内部を覗き見ることはできなかった。


(板壁の内側にもう一つ壁?)


 カーシュ達のいる東側と比べて、厳重な様子にもう一度気配を探ってみる。


(探索には引っかからない…気配も……壁に何か施されてたらわからないか…)


 東側とは違う向きに扉があるため、まずは扉へと壁沿いに気配を殺しつつ向かう。見えてきた扉を観察すると、鍵が設置されている。扉の取っ手と壁側にある部品を繋いで閉じるだけの簡単なもののようだ。そして施錠されてはおらず、鍵本体が取っ手の方だけに引っ掛かるような状態でぶら下がっているだけだ。


 鍵はそのままにして静かに扉を引くが、まるで土蔵のように厚い扉は重く、取っ手の位置も高い為、エリィでは力がうまく入らず開けられない。仕方なくアレクにお願いと場所を交代するが、飛びながら引っ張るもなかなか開かず、少し隙間ができたところでセラが爪をひっかけて加勢した。するとそれ自体の重さに軋むような音と共にぐっと開いた。


―――その途端流れてくる鉄臭い臭気に、思わず鼻をおさえた。


 臭気に狼狽えたものの、すぐに気を取り直して行動する。

 生き物の気配がないことを確認し、全員内側へ身体を滑り込ませると、閉じるために再度手をかけたところでエリィに躊躇いが走った。


(セラも反応してないし、私も察知していないから大丈夫だとは思うけど…閉じて万が一内部で戦闘になったらこれ…出るに出られないよな。どうしよ…だけど扉が開いてるのを見られるのも…何よりこの臭い…ぅ~ん)


「エリィ?」


 小さく伺うようなアレクの声に、何でもないと首を横に振った。


(ま、なるようになるでしょ)


 扉の内側は照明の魔具が生きているようで明るい。扉から左手の通路にように狭い場所の方に夥しい量の血だまりがあった。

 セラを扉のところに残し、エリィは少しでも血を踏まないように気を付けながら進む。アレクの方は浮遊移動のままだったので足元を気にする必要はなかった。

 通路の行き当たり右側にもう一つ扉があった。


(室内に2重扉…開けるのは気が進まないわね、碌でもないものなのは間違いないでしょ)


 意を決して2つ目の扉を、1つ目と違ってアレクと協力しつつゆっくりと、こちらは押し開くタイプだったので、少しだけ楽に開くことができた。

 そして流れてくるのは、何かわからないが胸が悪くなるような甘い臭い。その甘い臭いに血と腐敗臭のような据えた臭いが混ざって、その場に蹲りたいほど気分が悪くなる。

 その衝動を抑え、内部を覗き見ると、扉直ぐに階段が2段あり、区切られたその部屋が全体的に低い位置にあるようで、室内を一望できた。そこは野戦病院のように複数の木の台が並んでいた。

 浮遊移動してエリィに並んでいたはずのアレクは、目の前の光景に口や鼻を耳手でおさえながら壁際まで後退している。


(これは…寝台? でもシーツも何もないただの木の台。それにこびり付く黒い跡…)


 木の台の間を縫って更に奥を見れば、簡素な衝立が置かれている。行き当たった壁でずるずると床まで落ち込むアレクを置いたまま、エリィはその足を進めた。


 衝立の奥にあったものは、手前にあった寝台よりも高い木の台。当然何か知りたくもない汚れが黒くこびり付いている。

  壁際にはいくつかの棚とチェスト、木製の丸椅子が3つ。棚を見てみようと、丸椅子を一つ引き寄せ、その上に乗って立ち上がった。

 チェストの上には陶器のバットのようなものの中に、特殊な形をした鋏や刃物があった。


(極小型のナイフに、あれはメス? こっちはクーパーっぽいな)


 汚れの目立つ、見ようによっては手術用器具のように見える刃物類やハンマー等が雑然と置かれている。その上の方には濁った色合いの、小さな…直径5㎜ほどのビーズのような石が5つほど。どれも色合いが違っている。


(魔石っぽいけど、透明度は悪いし色味もくすんでて…どうみても屑魔石だよねぇ、何でこんなところに…?)


 その横には外で見つけた陶器の筒が2本。未使用なのか、上部を何かの革で蓋をし、それを紐を巻き付ける事で固定している。浄化魔法だけさらりとかけてから手にとってみると、やはりチャプンと液体の音がした。

 紐をほどいて蓋を外し、鑑定にかけてみると――


(睡眠効果があって中毒性あり、品質は…1級にも満たない粗悪品と…一応麻酔薬なんだろうか…それとも…)


 蓋を開けたものをチェストの上に戻し、蓋をしたままの方を手に取って収納へと入れてから棚の方も見るが、数枚の書類が残されているにすぎない。その内容も汚い字で走り書きされているだけだ。

 文字も数字も当然ながら日本とは違うのだが、自動翻訳のおかげか問題なく読めているのは有難い限りだ。


(えっと、失敗、適…合……ミス? 魔…なんだ? 読めないな。…ただのメモみたいだし、どうするかな…処分するか、放置するか…放置でいっか)


 丸椅子から降りて来たルートを戻ると、未だにアレクがへたり込んでいた。


「大丈夫? 戻るよ」


 ぐったりとしたまま動かないアレクを、仕方なく両手で抱え持ち出口へと進む。

 セラの横に辿り着くと、外へ出ようと促した。

 薄く開いたままの扉から外に出て、それをしっかり閉めた後、アレクを地面に下ろして最初にしたのは深呼吸だ。もう肺から腐っていくんじゃないかと思いたくなるほどの臭気だった。カーシュ達の所へ戻ればまた血の臭いはつくかもしれないが、とりあえず今の臭いが我慢しきれず浄化魔法をかける。かけるのだが、鼻の奥に臭いが居座っているようですっきりしない。


「何から話せばいいか…あの臭いで分かり切ってたけど、あそこで何らかの手術がされてたみたい。ただ病院って言うより実験施設ってな印象よ。魔石があったから対象は魔物かもしれないけど、カーシュが囚われてたことを考えると…ね」

「ぅ…せ、せやな…はよ離れよ」


 えずきそうになりながらも必死に耐えているアレクを見て頷く。


「離れるのは当然として、あの二人よね、どうしよう…」

「このまま離れてはいけないのか?」

「ん~『待ってて』って言っちゃったからね、一旦戻ろ」


 動けないアレクをセラが銜えると、エリィと共に東側の建物の方へと歩き出した。



ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしています(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)



そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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