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27話 嗚咽に揺れる背中

やっと、エリィ以外の人型キャラ…


 

 前方に見える建物は、どちらも木造の平屋建てで、それほど古そうには見えない。ただ急いで建てたのか、使われている建材もあまり整形されておらず、歪みや傾きの原因になっていそうだ。

 2棟は並んで建てられていて、西側にある方は木製の扉が見えるが、東側の方には見当たらないので、西か南の方向に取り付けられているのだろう。何故扉を異なる面に取り付けたのか、その理由が見当もつかず落ち着かない気持ちになるが。

 窓は一つも見当たらず、家屋と言うより倉庫なのではないかと思われる。

 その横に木製の荷車が置かれているのだが、所々黒い塗料でも零したかのような汚れが見えた。

 

 

 建物のかなり手前で、感知するためか、エリィが足を止める。

 暫くして同じように気配を探っていたセラと、示し合わせたように顔を見合わせた。


「…主殿」

「うん、人間種…だね。たぶん人族」


 エリィの足元に座っていたアレクの、窺うように見上げてくる視線を感じて、セラからアレクへと顔を動かした。


「弱々しい反応の主、かな。東側の建物の方にいるみたい。ただずっと動かないし…何してるんだろ」

「どないするんや?」


 右手の人差し指を、への字に曲げた下唇に押し当てて考え込む。


「正直に言って良ければ、関わりたくないというのが本音。でも気になると言えば気になるのは確かかな」


 そう言うと、右手でフードの先端をつまんで少しばかり引き下げた。


「そうだな。主殿の言う通り、確認しておいた方が良いように思う」

「アレクはどう思う?」

「せやな…なんや歪な感じするし、ちょっと覗き見るくらいやったらええんとちゃうかな」


 意見が一致したことで、それぞれが足音を忍ばせ、物音を立てないようにしながら速やかに、建物の壁に張り付くように身を寄せた。

 静かに壁に片耳を押し付け、内部の音を探る。


 ……ッェ…ゥ………ック…


 聞こえてきたのは微かな嗚咽。

 アレクが微妙な表情で、問うようにエリィとセラを見る。


「厄介事の予感しかしないんだけど」

「同意するしかないな」


 微妙に訴えるような表情を崩さないアレクに、エリィは突き放すような冷たさで小さく呟いた。


「薄情と言われようが何と言われようが、面倒事に首を突っ込む趣味はないのよ…」


 エリィがイライラと、フードの布を掻き毟る。

 ぐしゃぐしゃと、ついには両手で掻き毟ってから、盛大に肩を落とした。


「はぁ…そんな顔するのは反則だからね? 見知らぬ他人で、その上敵かどうかもわからないのに、何で関わろうとするんだか…」

「…ごめん……そないなつもりは…」


 アレクは情けなく眦を下げて目を伏せ


「僕かて人は嫌いや…嫌いなんや、せやけど…」


 エリィは溜息を一つ落としてから、口元に苦笑を浮かべ、アレクの頭をわしゃわしゃと思い切り掻き撫でた。


「ハイハイ、とりあえず中に入って確認しよ、話はそれから。だけど敵だったら…わかるよね?」


 アレクが首を縦に振るのを見てから、そっと壁沿いに移動する。

 何もいないだろうとわかってはいるが、一応周囲の警戒も怠らないようにしつつ、自分たちの気配を殺して扉まで移動した。

 見た感じ、鍵穴などのない取っ手にそっと手をかける。

 蝶番の向きから、引けば開くとわかったので、静かに、そしてゆっくりと扉を引き開け、その隙間から更に様子を窺う。


 ……ぃちゃ………ないで…や…


 途切れ途切れに幼い嗚咽が聞こえ、胸が悪くなるような嫌な臭いが流れてきた。

 扉の可動に影響はなさそうだが、近くに大きめの木箱がいくつか置かれており、その奥から声は聞こえている。

 緊張を強め、セラには殿を務めてほしいと、手で制して伝えてから、エリィとアレクは隙間から中へと身を滑らせた。

 慎重に一歩ずつ進むと、木箱の合間から奥を覗くことができた。


 しゃくりあげる小さな背中が見える。

 その背中が抱きかかえている人物が一人。だらりと伸びた手足は、子供の嗚咽に合わせて揺れるだけで、微動だにしていない。

 よくよく見れば、床に直接座り込んだ子供の足元は何かで染まっていた。


 考えるより先に身体が動いたのだろうアレクを、咄嗟に抱え止めると、諦観に塗れた溜息を零してから、エリィが立ち上がった。

 木箱がエリィの頭近くまで隠しているので、子供らの方から彼女達の姿は見えない。このまま姿を見せれば、驚かせてしまうことは確実なので、わざと足音をたてた。


「ヒッ!…だ、誰!?」


 ビクンと大きく子供の背中が跳ねた。


 目の前の光景で彼らを敵認定するのは難しい。仮に敵だったとしてもこちらへ襲い掛かってこられるかどうか怪しいだろう。

 それでも念のために、アレクを両手で抱きかかえているように見せながら、その実右手はローブの縁で隠して短剣を掴み直す。

敵意はないと、子供らしく見えるように気を付けながら、彼らの方へととてとてと歩き出た。


 しかし近づく足音だけで怯えたのだろう、抱きかかえた人の頭部を庇うように、覆いかぶさっている小さな背中が見えた。








ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしています(そろそろ設定が手の平くる~しそうで、ガクブルの紫であります;;)




そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しくて、こんなに励みになるとは想像していませんでした。

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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