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25話 地鶏を探して

 

 

  

 昨夜は、しっかりと温泉を堪能した後、陽が落ちると早々に全員が就寝した。

 思った以上に疲労は蓄積していたのだろう。何しろ昨日、日の高いうちに遺跡へ侵入し、休憩も挟みながら通路・転移を繰り返し、延々歩き続け、最後の転移紋から外へと放り出されたときには、太陽はかなり高い位置にあった。

 つまり遺跡内部で、図らずも一泊してしまっていたという事だ。


 外に出てからも、休めそうな場所を探して歩いていた時に、エリィが硫黄の臭いに気づいて、温泉休憩の後野宿となったわけだが、エリィとアレクが目を覚ました時にはセラが居らず、慌てることになった。

 荷物の回収も後回しに探し回っていると、セラが真上から地面に降りてきた。


「どこ行ってたんやあぁぁああ!? めっちゃ心配して、めっちゃ探してたんやで!!」

「怪我もなさそうでよかったわ」


 最初に出会ってからまだ数日だというのに、セラはもう、しっかりと仲間になっていた。


「すまない、これを見かけたのでな、つい」


 人なら眉尻を下げて申し訳なさそうな表情をしているだろうセラが、足元に置いた塊を前足でずいと差し出してきた。

 何々?とエリィが素早く屈んで覗き込み鑑定にかけたようだ。


「ソ…ソヴェる、ぬばぁーし?」


 パネルを見ながらたどたどしく読み上げたのは、それの種名だろうか。


「ほう、人間種はそう呼ぶのだな。これはなかなか旨いのだ。主殿がいつもの肉に飽きていたようなので狩ってきた」


 セラが更に前足でゴロリと塊を転がすと、大きな翼と大きな嘴が目に入ってくる。

 灰色の体毛、顔の幅と同じ大きく長めの嘴、顔だけ見れば…


(ハシビロさんじゃん!)


 そう、顔はハシビロコウにそっくりだった。身体の方はハシビロコウのようにスリムではなく、ずんぐりとしていて、脚も太い。

 見た感じ重そうに見えて、飛べない鳥なんじゃないかと思ってしまうが、セラ曰く、飛ぶ速度はそこそこ速い魔物らしい。

 魔法は使ってこないが、上空から太陽を背に目眩しをしつつ急降下して獲物を狩っているんだとか。

 生態はどうあれ、折角セラが狩ってきてきてくれたのだから、朝食として頂くことにしよう。


 まずは一旦収納へ入れて解体、素材化する。

 1羽で結構な量の肉になった。

 調理方法は現在『焼く』一択なので、いつもの手順で枝に刺す。肉質も柔らかく臭みも強くないので、食材として扱いやすそうだ。

 セラに聞いた所、彼も焼いたものを食してみたいというので、せっせと焚火で焼いていくと、とても美味しそうな匂いがしてくる。

 香りからして想像していたが、触感も味も鶏だった。それもブランド地鶏級の美味しさだ。


「何やこれ、めっちゃ旨いな!!」

「ぁ~日本酒ほしい…」

「そのままでも旨かったが、焼くだけでこうも変わるものなのか」


 早朝、空を飛ぶソヴェなんとかをセラが木々の合間から見つけ、狩ろうと思ってくれたことに感謝しかない。


 「塩にタレ、ぁぁ~ご飯が恋しい…ねね、もうこの辺に居ない?」


 こんなに美味しいならもう少し狩っておきたいとは全員が一致するところなので、セラに聞いてみる。


「群れを作る魔物ではないが、探してみれば居るのではないかと思う」

「もう探して狩るしかないわよね!」


 言うが早いか、簡易拠点の解体を始めるエリィに、アレクが呆れ気味に声をかける。


「寄り道もかまへんけどな、急ぎすぎて警戒忘れとかはやめてや?」

「フ、抜かりはない。もうやってるわ。欠片のおかげか探索スキルの精度もあがったし、集中しなくても展開出来てるのよ」


 胸元辺りで、グっと握り拳をつくる。


 敷物の毛皮をバサバサと叩いて埃を落として収納へと放り込み、結界石を回収する。地面に埋めて処分しようかと思った枝は、存外油が残っており香りも強いため、収納へ一時保存することにした。

 折角の温泉地なのに、匂いで動物やら魔物やらが寄ってくるのは、何となく嫌だなぁと思ったのだ。

 再びこの地を訪れる事があるかどうかは、わからないけれど。



 探索スキルの精度も上がったので、エリィの警戒だけでも事足りそうだからと、セラに上空で探してもらおうと思ったのだが、これにはセラが首を横に振った。


「ハシビロさんは警戒心が強い。俺の存在を感知されれば姿を現すことはないだろう。いつも『偶々見つけた』で狩るだけだからな」


(うん、やっぱり『ハシビロさん』に変わっちゃうのなぁ、面白いな)


 セラの言葉に、内心別の事を考えながら返事する。


「じゃあ皆で『上を向…』なんでもない」


 とても有名な歌に乗せかけたが、ウッと堪える。

 そんなエリィとさっぱり理解していないセラを置き去りに、アレクが楽しげに歌っていた。



―――アレクよ、何故その歌を知っているのだ―――








 欠片の在処はアレクが感知できる。

 だが、かなりふんわりと、大雑把な方向くらいしかわからないらしい。何の手掛りもないよりはマシだが、最初の遺跡と違って、最短距離で効率的に向かうことはできない。

 温泉から南の方向とアレクが言うので、ハシビロさんを探しながら歩いていると、気づけば昼時になっていた。

 とは言え、今朝は若干寝過ごし気味で、朝食も遅めだったので、すぐに休憩する必要はなく、ついでに良い場所も探しながらもう少し進む事にした。


 なかなか良さそうな休憩ポイントを探せないまま歩いていたが、アレクが何かを蹴飛ばした。

 翼を収納できるようになったので、アレクも時々地面を歩いているのだ。


「ちょ、大丈夫?」


 地面を這う木の根か石でも蹴飛ばしたのだろうと思ったのだが、コロコロと妙に軽い音が聞こえてきた。

 何だろうとエリィが音を発したもの近づく。


「これって…瓶? 陶器というか、土器っぽい?」


 手のひらサイズで円筒形の茶色いものが落ちていた。

 開口部分にネジのような細工はなく、本当にただの焼き物の筒で、ひびが入っているのが見えた。


 



ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。




そしてブックマークありがとうございます!

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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