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229話 探偵フロル、潜入

「悪役令嬢の妹様」という、元々だらだらと書いていた物を、端折って端折って短編にしたものを先日公開しました。


宜しければお暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しいです!




そして、もし『長編を読んでもいいぞ』と言って下さる奇特な方がいらっしゃいましたら、是非言ってやってくださいませ!!



 エリィの問いかけに、マローネが困ったように答える。


「王家主催であれば可能だったでしょうが、他家主催となると……」

「まぁそうよね」


 オリアーナも怪訝な表情で首を傾けている事に気付き、エリィが言葉を付け足した


「悪気騒ぎに巻き込まれたって話したっけ? まぁそれで少し気になって。

 何か紛れ込ませるにも、王城よりただの貴族家の方が色々とやりやすいだろうし」

「あ……あぁ、悪気騒ぎと言う言葉は聞いたように思う。だが終息したと言っていなかったか?」

「その場はね。

 ですが人為的に引き起こされた可能性があると言う話はしましたっけ?」


 正直あれこれ話が飛んでて、エリィは何を伝え、何を伝えていないのかも、もう曖昧模糊としている。


「確かに『引き起こそうとしていた』という言い方をしていたな」


 エリィとオリアーナのやり取りに、テレッサが険しい表情で割り込んできた。


「どういうことですの?

 悪気とか……私は聞いておりませんわ」


 やはりというか『悪気』というのは大層な問題らしい。


「ここまでの道中で、見ず知らずの者から菓子を貰った子供が……どういう言い方が適しているのかわかりませんが、悪鬼になっていたんです。

 丁度居合わせてしまったので、手持ちの薬を渡してその騒ぎはもう収まっています。

 疑うようでしたらデノマイラの手前の町? そこの兵士達が調査に来たので、すぐわかると思いますよ。

 まぁ報告では『悪気ではなかった』という報告だけでしょうけど。

 実際には人々が恐れる『悪気』で間違いなかったと思います。発熱、嘔吐、下痢、それに加えて高い感染性。

 まぁ大事になる前に終息出来て幸いでした」


 眉根を寄せ、何処か苦しげにも見える表情でエリィの話を聞いていたテレッサが、よろよろと立ち上がったかと思うと、両手を祈るように握り込んで床に跪いた。


「テレッサ様!?」

「テレッサ、何をして!?」


 この国の王族は、よくよく膝を折るらしい……なんてことは普通はない訳で、だからこそマローネもオリアーナも慌てている。

 一見落ち着いているように見えるだろうが、跪かれた方のエリィは困惑に呆然自失していただけだ。


「マローネ、オリアーナ姉様も落ち着いてください。

 私はエリィ様に感謝をお伝えしたいのです。

 民を、ひいてはこの国を救って下さった……今この時に悪気など起これば、最早我が国は立ち直れたかわかりません。

 本当にありがとうございます。

 いえ……どれほど感謝しても足りない…」


 貴族達権力層の腐敗、それに続く内乱騒動、そこへ追い打ちをかけるかのような瘴気の広がりやスタンピードにドラゴン騒ぎ等々……。

 そこからやっと立ち直らんと、この国の主力である交易に再び力を入れようとしている今、奇しくもナゴレン侯爵家の夜会はその前哨戦の一つとなってしまった。何しろ内々にではあるがナジャデールだけでなく、他国だけでなく自国の商人の動きも活発になっている。

 そこへ王都ではないとしても『悪気』の話が流れれば、その機運はすぐにでも失われてしまった事だったろう。


 となれば、エリィの行動……というか、アレクのお人好しが、この国を図らずも救う事になっていたのだ。


 テレッサの言葉に、神妙な顔でオリアーナもマローネも頷くと、同じく膝をついて深く頭を垂れた。


「テレッサの言う通りだな。エリィ、私からも再度礼を言わせてほしい。本当にありがとう」


 どこかでみた光景の再来に、エリィは頭を抱えつつ、とにかく目の前の3人を立ち上がらせる。

 御礼を受け取るよりも、まずは先の話をしたいのだ。


 しかしなるほど、仕事として身代わりを請け負ったナシゴレンっぽい名前の貴族の宴会の後、時期は知らないが王家主催の宴が予定されているのなら、確かにここで騒動は避けたいだろう。

 つまり仕掛けられた『悪気』という種は、何処かで芽吹けばよかっただけで、恐らく『ハッファの光軌』という一座を狙い撃ちしたものではない。

 ならばなおの事、夜会に饗される飲食品の事は調べたい。


 そう言えば怪しい人物に深森蜂の一匹を監視につけていたはず。どうせ誰にも見えはしないのだからと堂々とパネルを呼び出して確認すれば、どうやら監視対象者は、同じく王都に入っているようだった。


 そういえば、エリィが王都へ転移するより先に、フロルをここ、王女の宮へ向かわせたはずだったがあれきり姿を見ていない。


【フロル?】

【エリィ様? どうなさいましたの?】


 無事な事は感じていたが、念話で返事があった事にホッとする。


【ぁっと……王女の所へってお願いしたと思ったんだけど、姿を全く見なかったから】

【まぁ! 私ったら、申し訳ございません!

 そういえばエリィ様に何も言わずに行動してしまっていましたわ】

【無事ならそれだけで十分よ】

【何てこと……心配をおかけしてしまっていたのですね、本当に申し訳ございません……でも、心配して下さってとても嬉しいですわ】

【ぃゃ、あのね……もう、いいや…。何事もなかったみたいだし、異空地に戻ってくれて良いからね?】

【それなのですが……私】

【『私』?】


 何だろう、そんなに言い渋らなければならないような事態になっているとでも言うのだろうか…。

 エリィは仮面…それを更に覆う包帯とフードのせいで、誰にも気づかれる事はないが、眉根を顰めてしまう。


【私……】

【……】








【私、今探偵さんとやらをやっていますの!】







【……………はい?】

【ですから探偵さんですわ!】




 これもエルフレイアの影響の残滓だろうか……まぁいいけど。



【王女とか言う輩が私にはわかりませんでしたの……ですから、とりあえず大きな建物を目指して飛んだのですけど、途中でエリィ様のおっきな蜂さんと会ったのですわ】


 あぁ、これはエリィの失態だ。

 エリィは勿論、こちら側の者は王女とか言われても分かるはずがない。


【ふむ、それで?】

【お話を聞くと、エリィ様に言われた通りに監視しているのだとおっしゃって】


 なるほど、フロルは深森蜂と直接話が出来るという事か。


【そうしましたら、そこへ妙に見覚えのある色味の人間種が来ましたの】

【見覚えのある色?】

【はい。そっちにいた…なんだかパッとしない金髪にオレンジの瞳って言うアレですわ】


 パッとしないって……まぁなるほど、その色味となるとトタイスとか言う男性がそういう色合いだったなと思い出す。


【………】

【エリィ様?】


 思わず思考の海に沈み込んでしまったが、フロルの声が頭に響いてハッとする。


【あぁ、ごめんなさい。ちょっと聞きたいんだけど、スーとはどこであったの?】

【箱みたいな建物が並んでいましたわ。ただそこへ誰かが来ましたの】

【ふむふむ】

【少し何か話していたようなのですけど、2人して何処かに向かって歩き出したのですわ。だから蜂さんと一緒に追いかけることにしましたの】


 『誰か』というのは『パッとしない』とは違う人物という事だろうか……話が良く見えない。もう少し聞き役に徹しよう。


【そうしたら何だかゴテゴテした大きな建物に入って行ったので、姿の消せない蜂さんにはお外で待っててもらって、私だけ中まで追いかけたのですわ。

 そしたらそこに、そのパッとしないアレが居たんですの】


 『パッとしない』という言い回しが気に入ったのだろうか……何にせよトタイスはソアンの離宮に居るはずで、そうであるならフロルが見かけた人物は、ホスグエナ伯爵その人ではないだろうか。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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