228話 女子会と話し合い
「悪役令嬢の妹様」という、元々だらだらと書いていた物を、端折って端折って短編にしたものを先日公開しました。
宜しければお暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しいです!
そして、もし『長編を読んでもいいぞ』と言って下さる奇特な方がいらっしゃいましたら、是非言ってやってくださいませ!!
「「!!」」
もうノリは完全女子学生な会話を、大いに楽しんでいた2人がハッと口元を押さえた。後ろの方に控えるマローネは、主人の元に戻って調子を取り戻したのか、能面っぷりを遺憾なく発揮している。
「済まない、つい話し込んでしまっていた」
「ごめんなさい。私もですわ。とても懐かしくて嬉しくて…」
まぁ前世から考えれば、彼女らは娘とも孫とも言える年齢で、微笑ましいと言えばそうなのだが、だからと言って話が進まないのも困る。
「積もる話があるでしょうから、ささっとするべき話をし終えてから、ゆっくりとお二人で話してください」
「そうだな」
「えぇ、その通りですわね……その、話は聞いていますわ。私の代わりを務めて下さるのだとか……ですが本当に宜しいのでしょうか?」
テレッサが沈んだ表情で問いかけて来る。
「ちゃんと報酬も頂きますし、仕事として請け負ったので心配は無用ですよ」
飄々と答える、まだ少女にもなり切らないような子供に見えるエリィに、テレッサの顔色が更に悪くなった。
「……お仕事とはいえ、私よりも幼く見える貴方に、危険な身代わりを務めさせるのは私……」
「私も侍女の一人として傍に居る予定だ。エリィは私が守る…なんて、そんな必要もないくらいにエリィは強いがな。何しろローグバインもヒースも完封されていた」
重い空気を払おうとするかのように、オリアーナがとぼけて見せれば、テレッサが目を丸くした。
「まぁ! そんなお話は聞いていませんわ」
「恥ずかしくて話せないかもしれないな。当然私も完封された側だ」
明るく言い放つオリアーナに、エリィの方が苦い顔になる。
「あれは私がやった訳じゃないんですが……苦情はセレス達に言ってください」
「いや、精霊を従えていると言う時点で、最早私達の及ぶ存在ではない。
……そんな尊い御身に手を貸して頂き感謝する」
オリアーナが頭を下げようとするので、急いで止めた。
「止めてください。オリアーナさんにはお世話になってきましたし、友達だと言ってくれたんじゃなかったでしたっけ?」
「! ぃ、ぃや、あれは!」
「まぁ盛大にやらかしましたから、距離を置かれても当然だと分かっています」
エリィの言葉にオリアーナが目を見開いた後、気まずそうに視線を逸らし目を伏せた。
「……悪かった。エリィの事は……そうだな、本当に驚いたし、精霊の力を始めてみて恐怖を感じたのは本当だ。
しかし、エリィに対しては恐怖よりも、何と言えば良いかな…私なんかが近づいてもいいんだろうかという…戸惑い? 気後れ? 難しいな」
なるほど……アレか、偶々知り合った旅の御隠居が印籠をかざし、その正体を知った時の気持ちと言うか、単なる居候だと思っていた優男が実は将軍だったと知った時の気持ちというか……例えが時代劇なのは、昭和世代あるあると言う事で許してほしい。
「何処まで行っても私は私で、私以外にはなれません。
以前も今も、私はそんなに変わってないつもりなんです。面倒くさがりで物種で……望んでもいないのに厄介事運は良くて」
自嘲するように肩を竦めて見せれば、オリアーナは、降参だと両手を上げつつ、その眉尻を下げて苦笑した。
「そうだな、私も私だ。
その…ぎこちなくなってしまって済まなかったな、何と言うか、エリィが遠くなった気がして……私の思い込みだった」
あまり関わりたくないし、可能なら避けたい人間種ではあるが、オリアーナには素直に微笑んで返せた。
「じゃあお互い様という事で」
同じように笑みを浮かべるオリアーナに、テレッサが膨れた。
「まぁ! 私だけわからないなんてズルいですわ!」
拗ねたようにそう言ってから、テレッサも微笑んだ。
「ですが、つまり私にも気負うなと言って下さっていると、そう思って構いませんわよね?」
「どう感じ、どう解釈するかまで、責任は負えませんし、お好きにどうぞ」
年相応の笑みを屈託なく浮かべたテレッサだったが、小さく深呼吸を一つしてから話し出す。
「危険を冒してまでナゴレン侯爵家の夜会へ赴くのは、当日姉が何か企んでいるからです。ナジャデールの何者かと接触しているようで……。
伯父も今の所参加すると言う話は流れてきているのですが、真偽までは確認できていません」
訥々と呟くように言葉を紡ぐテレッサが口を噤む。
「ふむ、タッシラ殿が参加するかしないかは置いておくとして、私もテレッサには参加せず身の安全を第一にしてほしいと思う」
「で、ですが!」
オリアーナの言葉にテレッサが、思わずと言った体で身を乗り出した。
「…ですが……夜会に参加しないと……エス……」
「ん?」
「ですから! そのヴェルザン様と……」
「テレッサ?」
何故か顔を真っ赤にしているテレッサの様子に、オリアーナが首を傾げている。
「もう!! ビレントス様の苦労がわかりましたわ!!」
ぷいっと顔を赤くしたまま横を向いたテレッサに、更にグゥっと首を傾けていると、マローネがそっとオリアーナに何かを耳打ちした。
それに何度か頷いた後、顔をテレッサに向ければ、満面の笑顔でオリアーナが口を開く。
「ヴェルザンはここに置いて行けば良いだろう? エスコート役もエリィがきっとどうにかしてくれる。何なら私が変装して務めると言うのでも良いかもしれない」
謎の自信で言い切ったオリアーナに、クッションが間髪入れずに飛んできた。
流石に軌道修正が必要と判断したのか、尚もクッションを投げようとするテレッサからマローネがすっとクッションを取り上げた。
「この後は私が。
当日エリィ様とエスコート役の方には、こちらで準備をして頂きます。
ナゴレン侯爵邸まで馬車で移動しますが、移動は夜になってからになりますので、警戒は緩めないで下さい。
ドレスなど必要なモノがあれば、全てご用意いたします。
会場では大抵は当主の挨拶があり、今回は第2令嬢の成人のお披露目という事で、暫くは挨拶回り等した後、主役たちによるダンス…という流れになるかと存じます。
王族であるテレッサ様やカレリネ様が参加されると言う話は既に広まっており、恐らくそのダンス辺りまでは手出ししてこないのではないかと思っております」
マローネの言葉にオリアーナも頷く。
「そうだな。参加の話が広まっているなら、会場に姿を見せない等にでもなれば、夜会が始まると同時に大騒ぎになるだろうからな」
「なるほど…進行的には挨拶、ダンスと流れて、三々五々になってからが危険の本番という感じです?」
頷いていたオリアーナだったが、問いかけにエリィの方へ向き直った。
「そうだな、メインの進行さえ済んでしまえば、後は皆自分の利益の為に動くか、夜会そのものを楽しむだろうから、確かにその辺りから危険は増すだろうが……ナジャデールの商会だったか? そっちの動きは掴んでいるのか?」
オリアーナが、エリィから再びマローネに顔を向ける。
「イエヤンス商会は、食料輸入について足場固めと言うか顔繫ぎに来ると言う話は囁かれています」
マローネの言葉に、テレッサが続けた。
「これまで食料は主にノークヴェーンに頼っていました。
我が国は瘴気の森が広がり、魔物も溢れたために、かなりな土地を手放さざるを得なくなりました。何より先の内紛の影響もまだ残っていて、荒れた農地にまで手が回っていません。
しかし気候不順はノークヴェーンにも影響は出ていて、ケクターナトからの輸入量を増やすか、新たな取引先を探すか検討中という状況です。
理由としてはナジャデールが接触してくるのに不自然ではありません」
「だがナジャデールは輸出できるほど食料が豊かではないだろう?」
オリアーナの言葉にテレッサが頷く。
「………ナジャデールの話は、叔父様…ソアン様から聞きました。
私達の祖先の犯した罪……いえ、現在もかも、ですが……彼らがそうせざるを得なかった話は……ですので、考えなしに盗賊国家だなどと、もう言う気はありません。
しかしそれでも、これまでナジャデールが、食料が輸出できるほど豊かで安定していると言う話は聞いたことがありません」
「まぁそうだな、ただの布石だろうな」
彼女らの話を聞きながら、エリィはふと思い出したことがあった。
悪気騒ぎだ。
「そのナジャデールの商会が、今回の夜会に持ち込む予定の品がわかったりしませんか?」
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。
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修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)