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226話 いざ王宮へ



 魔力ナシと言われ、忌避されたり軽んじられたりしてきた面々は勿論、それ以外の人族も言葉が出ない。


「あっれ……あたし、またなんかやらかしちゃったぁ~?」


 パトリシアが眉尻を下げて困ったように呟いた。流石にその言葉を無視するのも躊躇われ、エリィが首を横に振る。


「今回は大丈夫だと思うけれど………何と言うか、話を続ける雰囲気では、ないかもしれない……わね」


 押し黙ったまま微動だにしない人族達を、ぐるりと一瞥してからエリィは肩を竦めた。アレク、セレスとも視線で頷きあうと、パトリシアに宛がわれた部屋に戻ろうと提案しようかと口を開いた所で、少し気になった事を先に聞いておくことにする。


「それはそうと、あんなわかりやすい実演をして見せたって事は、彼らに協力してあげるのかしら?

 さっきはエルフが協力するかどうかわからないと言っていたけれど」


 エリィの問いかけに、パトリシアは困ったように口をへの字に曲げた。


「それねぇ~、んん~~~……母や他の同族達はどうかわかんないですけど、あたしはそこまで人族に嫌悪がないんですよぉ~……ずっと補佐してくれてるのも人族ですし、なんならあたしら母娘を助けてくれたのも人族ですしねぇ~。だから何が何でも拒否りたいって訳じゃぁないですねぇ。まぁ何にも感じないって意味じゃぁないですけどぉ~」


 飄々と言葉にするパトリシアだったが、その内心はすっかりエリィに忠誠を誓ってた。

 自分が仕掛けた事とは言え、恐らくあの攻撃は、エリィには完全に見切られていたように思う。

 もうそれだけでも平伏するに値する。

 更に『竜の碧石』の現所持者だ。

 そして何よりエルフ族は精霊を敬愛している。それは里を追われ、散り散りバラバラになった今でも変わらない。自然を愛し自然と共に生きる、その姿勢は精霊に対しても同等だ。

 そんな精霊達を従えるエリィを、敬いこそすれ、逆らう気も疑う気もない。あるのは純然とした忠誠だけだ。もしかすると、最早崇拝と言って良いレベルかもしれない。

 だから、そんなエリィの役に立てるのなら、本来広く知らしめるべきではない、エルフの秘術でもある神樹の問いだって、行使するのに躊躇いはない。

 それに知られたところで、結晶草の葉なんて激レア物を、いったい誰が用意できると言うのだ。今回はエリィが精霊から貰っていたらしいから可能だっただけだ。

 まぁ精霊セレスの様子から、どうにも嘘くさいな話ではあるが。


「それにエリィ様が良いってんなら、さくっとやっちゃいますよぉ~? うふっ♪」


 グーに握った両手を口元に充てて、身体をくねらせるパトリシアに溜息しか出ないが、種族として大事に継承してきたモノについて、外野が口出しするのは如何なものだろうと、エリィは思う。


「私がどうこうって言うのではなく、エルフとして、何より貴女自身として選択してね?」


 命じるのではなく、パトリシアを尊重しようとしてくれる気持ちが、更に崇拝を深めることになってしまったようで、彼女の瞳が無駄にキラキラしい様子に、エリィはじりと身を仰け反らせた。







 あの後、結局話は進展せず、一夜明けてから、再度集う事になった。

 ソアン側から神樹の問いの正式依頼を受けた後、トタイスとホスグエナ伯爵家の嫡男ヘネトの血縁確認が、パトリシアによって行われ、その結果はソアンらに託された。


「本当に感謝する。

 貴女の事も、神樹の問いの事も口外はしないと誓う。ここに居る全員の誓文を渡しておこう。

 ただ済まない……私を始めとして魔力ナシと言われている者は、人族の誓文では魔力を通すことが出来ない為、最も効力の高い誓文は用意できず、魔紋紙での代用となるが許してほしい。

 もし他に何か良い手段があれば、そちらを検討する事も吝かではないという事は伝えておこう。

 後は報酬についてなのだが、そちらの……フードも未だ外してはくれないし、名も不明なままだが神樹の問いを行ってくれたのだから、エルフ族と言うのは間違いあるまい、なのでエルフの君とでも呼ばせてもらおう。

 その、エルフの君は夜会の方も手を貸してくれたりは難しいだろうか?」


 話を振られたパトリシアは、やれやれと両手を上げる。


「昨日の話聞いてたぁ~? あたしと関わるのはお勧めしないって言ったよねぇ~? こっちとしても適当な貴族家程度なら兎も角、王族とかややこしいのとは関わりたいわけじゃないのぉ~!

 そのくらい察しなさいよねぇ~」


 心底面倒くさそうに言われて、ソアンは苦笑を浮かべた。

 流石に昨日の今日なので、ヒースも荒ぶらずぐっと堪えてくれている。


「ではエリィ嬢、提供してもらった……結晶草の葉だったか、それの代金含め、諸々の話は王都に入ってからでも良いだろうか?」


 急に移動の話になってエリィはきょとんとした空気を隠せない。


「ここも王家所有だし、警備はしっかりとしているが、王都の方もあまり空けておけない…というか空けたくないというのは本音だ。

 王宮内もなかなかに魔窟になっていてね」


 ソアンの表情が一瞬暗く沈む。

 そう言えば控えているマローネとか言う侍女? メイド? は王女付きだとか言っていた気がする。つまり狙われているらしい王女の警護が手薄になっている可能性があるなら、それは一刻も早く戻りたいだろう。

 念のためフロルとアンセに、先んじて王女の元へ向かってくれないだろうかと、念話で頼んでみておく。


 結局朝食を済ませた後、ここから直接転移紋を使って王都へ向かう事になった。

 転移紋はこのデノマイラの邸に設置されている物で、当然王家所有となる。それもあってソアンがここまで来ていたのだ。

 王族の繋がる者が居なければ、ここの転移紋は使えないという事だ。


 パトリシアはここで離れると言う。

 小声でエリィ達だけに伝えられたが、聖英信団にも独自の転移紋があり、それを使って王都の拠点に戻るとの事だ。

 ただ邸を出る前に、パトリシアからエリィには通信用の魔具が渡された。どうやらパトリシアはかなりな魔具コレクターのようで、通信機能を持つ魔具がずらりと並べられたのだが、どれも意匠が違い、一つ一つ御丁寧な解説付きだったのには苦笑いするほかなかった。


 パトリシアが去った後、ギルド員である『大地の剣』面々もトクスへと戻る事にしたようだ。流石に王宮なんて御免だろうし、今、村マス村サブが戻ったとはいえ、実質回していたヴェルザンはここに居るし、西方砦の要であるトタイスもこの場に居る。瘴気が後退したらしいので、少しは不安要素は減っているだろうが、やはり心配なのだろう。足取り軽く戻って行った。


 残りは王都へ向かうべく転移紋へ移動するが、それぞれが三者三様の様子ながら全員が無言である。

 ソアンとヴェルザンは流石と言うか、平然としたものだ。

 ヒースとマローネは、どことなく表情が硬い気がする。

 オリアーナとローグバインは、互いにどこかぎこちないが、それはまた別の御話なので割愛。

 トタイスはあまり変わりないように見えるが、ヘネトとドマナンは顔色悪く見える。ヘネトについては殺されかけたわけだし、いい思い出もないだろう、ドマナンについては王都と言うだけで緊張するものらしい。

 エリィ達については特に記す必要もなく平常運転である。


 案内された先で転移紋を使用すれば、あっさりとソアンの離宮へと到着した。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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