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221話 情報共有 その3



「う~わ、タッド爺ちゃんは話の分かる人だったのになぁ~。

 だけど……何者……ねぇ~、まだあんたらが信用できるかどうか、あたしも判断に困ってる所だから、とぼけちゃっていいぃ~?

 でもさぁ~その『神樹とか…』にやらにはちょっと心当たりがあったりなかったりしてぇ~?」


 何故か身体をくねっと捩ったりしている。

 正直理解不能と言うか、エリィには気持ちの悪い体操くらいにしか見えない。が、他人の趣味をとやかく言うつもりもない。自分に被害が及ばないなら、何の問題もないからだ。


「な!?」


 ヒースが思わず身を乗り出しかけたのを、ソアンが座ったままの姿勢で制する。


「ヒース、詳しく話を聞かせて貰う方が大事だろう?」

「!………はい、申し訳ございません」


 一瞬息を詰めてから、身を引き姿勢を正す様子を、全員が黙ってみていたが、その後に訪れた静寂を破ったのは、やはりパトリシアだった。


「やっだもぉぅ~、それで本当にタッド爺ちゃんの跡継げるのぉ~? あんたの家は裏とも繋がりのある家だったよねぇ~? 簡単に動揺してど~すんのさぁ~?

 ほんっと萎えるぅ~」


 ケラケラと薄っぺらい笑い交じりに身を捩っているパトリシアに、エリィが軽く額を押さえながら嘆息する。


「そのくらいにして……あちらを怒らせる目的も必要もないでしょう?」

「…てへ♪ エリィ様、すみません!」


 途中まで間延びした声だったが、途中から真面目な言い方に切り替えたパトリシアに、アレクとセレスも同時に溜息を零した。


「済まないね、ヒースが失礼した」

「いえ、煽ったのはむしろ彼女の方なので……とはいえ別に彼女は私の身内ではありませんので、謝罪は本人から貰ってください」

「そ! そんなぁ~、あたしはエリィ様に認めて頂けないんですかぁ!?」


 やはり間延びした言葉使いが彼女の素なのだろうか、閉栓と切って捨てるエリィに、パトリシアが情けない声をあげる。


「ところで話の続きを聞きたいのだが、そちらの女性は続きを話してくれる気はあるのだろうか?」


 何とも言えない空気感が漂う中、軌道修正を図るソアンは流石王族と言った所だが、空気を読む気がない事については、パトリシアといい勝負だろう。


「あ~ん、ど~しよっかなぁあ~♪ な~んて、これ以上ふざけたらエリィ様にほんとに見限られちゃうわね。

 話をするつもりはあるわよぉ~。

 あたしは一応この国に長く住んでるし、愛着もあんのよ。正直ホスグエナとワッケランにはいい加減辟易してたのよねぇ……。

 って事で続きなんだけどぉ~、神樹がどうのっていうのは、タッド爺ちゃんがどうせ話したんでしょ? まぁできたらこれ以上の拡散はしないで欲しいんだけど、まず、そこはどう?」


 間延びしたりしなかったり、これは素がどうのと言う話ではなく、彼女が自分の人となりを掴ませ低くするための防衛策の一つなのかもしれない。そんな事をエリィが考えたりしていると、ソアンが口を開いた。


「手法とか、そう言う話だろうか?」

「ソレも含めて一切合切」

「なかなか難しい事を言ってくれる。しかしそれを確約しないと、話してくれないのだろう?」

「ん~そうねぇ~……じゃあ先に結論から言っとくけど、その神樹の問いは実行不可能なのよぉ~。何でかっていうとぉ~……あんた達、いえ、ゴルドラーデンだけじゃない、ノークヴェーンもケクターナトも、エルフや獣人、他にも沢山の異人種を攫っていいように使い、挙句その文化も土地も奪って来たから。

 後で話そうと思ってた事だけど、あんた達にナジャデール王国を蔑む権利なんかない。

 だってそうやってあんた達に何もかも奪われ踏みつけられた者たちが、やっとたどり着いて立ち上げた国家なんだから」

「「「……!!」」」


 黙り込む貴族面々に、わざとだろう明るい声音でパトリシアが続ける。


「まさか初耳とかふざけた事言わないわよねぇ~?」


 エリィは一度パトリシアに意識を向けてから、貴族たちの方へ顔を向ければ、ソアンとヴェルザン、そしてオリアーナ以外が、目を見開いて固まっていた。


「……すまない、私は初耳だ…」


 ローグバインの呟きにヒース達も同調するように頷く。


「これだからお貴族様って碌なもんじゃないっていうのよぉ~」


 呆れたような声を出すパトリシアに、ソアンが沈痛の面持ちで低く口を開いた。


「そうだな……表面上人身売買などは禁止したが、それも厳格に処せば国が回らなくなってしまう。だからその話は王族の中でも伝えられないか、全て終わった話として伝えられる。しかし略奪行為を看過しているのも確かだろう?」

「ま……待ってください。私はそんな話は聞いた事がない」

「それはあんたがまだ未熟だからじゃないのぉ~? でもまぁ、これでこの話は信じてもらえそうよねぇ~?」

「……あぁ、私も家を飛び出し、ギルド員として働くようになってから知った」


 オリアーナも令嬢で居た間は知らなかった事らしい。


「そうですね、この周辺国家の恥部ですから……実際私もオリアーナ様と同じく、家を出て、ギルドに勤めるようになって初めて知りました。

 ギルドは色々な所と地味に繋がりもありますし、何よりギルド所属員達にはナジャデールだろうが何だろうが、利用できる者は利用すると言う方も多く、情報には事欠きません。

 ですが、その事実と神樹の話がどう繋がるのです?」


 ヴェルザンからの問いに、パトリシアがいとど背けていた顔を向け直した。


「さっきも話したように、あんた達に奪われたモノの中に、それに必要なモノがあったから。

 神樹の問いには結晶樹か結晶草の葉を使うの。

 ただ結晶樹は誰も見た事ないんじゃないかなぁ~、だけどエルフは結晶草は育てていたのよ。

 魔素が減り続ける中、それでも比較的濃い土地で、自分達の魔力を与えながら育てていたの。理由は簡単、薬の素材になるから。

 だから神樹云々はおまけでしかなかったんだけど……そういう事だから結晶草がもうないの。だから実行不可能。わかったぁ~?」


 しんと静まり返り、皆が自分の考えに沈み込む中、エリィもふむと考え込んでから、小声でそっとパトリシアに話しかけた。


「(少し聞きたいんだけど、パッタル達がそのナジャデールとかを避けるのは、もしかして『盗賊国家だから』と言う理由ではない?)」


 気づいたパトリシアも声を潜めて答える。


「(あぁ、彼らの行動を考えると、ナジャデールには一番行くんじゃないかって考えますよねぇ~…。ただナジャデール本国と言うか中心は、そんなに荒れていないんです。まぁ厳しい土地なので裕福とは言い難いですが、住民の多くは自分達の出自を蔑んでなんかいませんし。

 問題は国境付近。そこを強硬派というか、武闘派というか、そう言った輩が押さえてましてね…。

 ただその強硬派が国境を警備しているおかげで、他国の者が国内を荒らしたりできず、住民感情も平穏を保てると言った側面もあり、害悪とも言えません。

 まぁその強硬派のせいで、いつまでもその蔑称が消えないんですが)」

「(なるほどね。じゃあパッタル達は強硬派との揉め事を避けてるだけなのね)」

「(その側面はあると思いますよ。彼らの一座の中には、単に旅芸人一座と言う認識だけの者もいるはずですし、小さな子供らもいますから)」

「(ありがと。ところで……話が変わって申し訳ないんだけど、その結晶草と言うのがあれば、その判定と言うかは可能なの?)」

「(え? あ、あぁ、それは…はい。可能です。

 私もできますし、聖英信団にいるエルフは大抵出来たんじゃなかったな…どうしてです?)」


 エリィはコテリと小首を傾がせて、そのまま念話でルゥ達に話しかける。


【ルゥ、今話しかけて大丈夫かしら?】

【これは主君! 勿論です! それでどうしたんですか?】

【居空地に結晶草と結晶樹があったと思うんだけど、どのくらい育ってるの? 葉っぱを数枚貰えたらと思ったんだけど】

【結晶樹の方はやっと2ヤルってところですね! まだまだ大きくなりますよ! 何にせよもうしっかり根付いているので、そこは安心できます。

 結晶草の方はやっと蕾が付きましたが、まだ開花には暫くかかりそうですね。って、葉ですか? 葉なら少々刈り取っても問題ないです。もうかなり繁殖していますから】

【そう、ありがと。

 フィル、元々その結晶樹と結晶草は何処からとってきたの? あの時はそのまま有耶無耶になってしまってたけど】

【はぅ、エリィ様がワタクシめにお声がけを……何たる幸運!】

【浸ってないでさっさと返事しな! ったく…】

【煩いですよ、レーヴ。

 あぁ、結晶草と結晶樹でしたね。結晶草はセレスの住処に自生していた物です。まぁあの時点でセレスは不在でしたが】

【うっせぇ!!】


 セレスも名付けをしなおし他も済んでいるので、今は念話も何も解禁になっている。ただ居空地への立ち入りだけは制限されたままだが。


【結晶樹の方は?】

【そちらは少々遠出をいたしまして、神域との境界に芽吹いていた物を、失敬して参りました。】

【神域って……勝手に持ってきてよかったものなの? あの時も聞いた気がするけど】

【問題ございません。境界と言っても神域側ではございませんし、何より生えている草も木も、気に入らなければ刈ってしまわれる方ですから……】

【それは……なんというか……まぁそっか、ありがと。

 じゃあその結晶草なんだけど、葉を数枚貰って人族に渡しても良いかしら…そのまぁ、色々思う所があると思うし、私も別に乗り気って訳じゃないんだけど】

【勿論でございます。

 既に全てエリィ様の物。どうぞ良いようになさってくだされば幸いでございます】


 仲間達との念話だが、相手を限定する事ももちろん任意だし、名付けただけのノルシーク(旧カデリオ氏)には届かないようにもできるので、全てが筒抜けになる事はない。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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