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22話 遺跡前にて

 


 歩を進めるごとに、白い建造物の輪郭がはっきりしてくる。

 遠目には白く見えていた色も、近づいていけばかなりくすんでいた。土か黴かわからないが、黒く染まっている所さえ見受けられる。

 つる性植物が絡みつき、白と黒と緑が入り混じって、どこか寂寥感が漂う。

 ひび割れ部分で少し折れゆがんだ階段があり、人が2、3人ほど並んで入れる入口があるが、その入り口を塞いでいた観音開きの扉は、2枚とも階段横に落ちて朽ちていた。

 少し離れたところで足を止め、セラと彼の背に乗ったままのエリィが、感知のために意識を集中して様子を窺う。アレクとセラも周辺を警戒しているようだ。


 ぽっかりと開かれた入り口から奥を注視すれば、光がどこからか差し込んでいるのか、薄っすらとではあるが内部が見えた。

 視認できる範囲では、何かが置かれたりしているようには見えないのだが、一番奥の壁には何かあるようだ。少し違和感を感じる。

 外観はただの石造りの家屋で、特殊な形状をしているわけではなく、遺跡と言うにはかなり無理がある。

 とは言え、石造りという事が、そも普通ではないと言われれば、その通りだろうと思われる。森の中なのだし木材が一番手に入りやすい素材だろうに、あえて付近には見当たらない白い石材を使っているのだから、現役時代には何か意味のある建物だったのだろう。

 屋根の方は三角の板張りになっているようで、壁や柱に比べると経年劣化が著しいのではないかと思われる。


「中には何も居ないように感じるかなぁ」

「俺もだ」


 エリィとセラに背を預ける形で周辺を警戒していたアレクが振り返った。


「ほな入ろうや」


 アレクの声に二人とも小さく頷くと、足を踏み出した。

 建物に近づく途中、薄い何かを通り抜ける、馴染みの感触があった。


「結界が生きてんねんな」

「何か普通にすり抜けちゃったけどいいの?」


 エリィ達が使っている、小屋から持ち出した結界石は、通り抜けられる者を登録できるタイプだ。

 最初セラはエリィの収納に入った状態で結界を抜けたため、扱いとしては『招かれた客人』だった。だが、従魔となり同行する流れとなったときに、アレクがいつの間にか登録していたようだ。おかげで現在問題は発生していない。


「魔物だけ排除してるんやろな。瘴気を感知して弾いてるって感じとちゃうやろか」

「魔物以外は歓迎ってことね…って、ええと?」


 頷いていたエリィの声に困惑が混じり、セラの方へと顔を向ける。


「魔物がダメなら、セラだって…」


 そんなエリィの様子に、耳手をひらひらと横に振りながら、アレクがへらりと笑った。


「いやいやいやいや、セラは従魔やん。主人がおるって事は、その辺の魔物とはちゃうって、ちゃぁんと認識されとるんやって」

「なるほど。俺が通れたことは、結界の故障などではないと、そう理解してよいのだな?」


 言われてセラも気になったようで、アレクに確認する。


「故障とかしてるんやったら、最初から作動してへんか、反対に異常反応してる思うで」

「それもそうね」

「ふむ」


 話しながら歩を進めているうちに、階段前に辿り着いた。

 ずっとセラの背に乗せられていたエリィだが、自分を乗せていると、踏み入った狭い室内で、セラが動きを制限される事を危惧したのだろう。もう大丈夫と言ってセラの背からよっこいせと降りた。

 階段は折れ歪んでいたので、セラが先行した場合、階段が跡形もなく崩壊する恐れがある。なので、まずは階段がないと昇降に支障をきたすエリィと、パタパタと飛行モードになったアレクが、同時に中を覗き込んだ。

 

 何もないように見えた内部は、壁の影になっていた場所に木片が散らばっていた。そこは思いのほか明るく、差し込む光を上へ辿れば屋根の一部にぽっかりと穴が開いている。正面から見上げた時には見えなかった部分だろう。

 内部に入る前に床を確かめる。積もった落ち葉や元が何かわからないゴミを、エリィが足で払うと、壁や床と同じ白い石が顔を出した。

 やはりひびなどの破損は少なくないようで、所々に何かの葉がみえる。

 一歩一歩、足場を確認するように進むが、室内はさして広くもない為、すぐに奥の壁に行きあたった。


 壁に手を伸ばすより早く、セラがエリィとアレクの前に進み出た。

 セラの体重で一々音をたてるので、彼には思った以上に足場は悪いだろうに、その行動は滑るように素早かった。


「主殿を護るのは従魔の務めかと思ったのだが、違うのだろうか?」


 呆気にとられたかのような二人に、セラが困惑気味に振り返る。

 それにエリィが盛大な溜息で反応した。


「確かに『従魔』って、ステータスにはあったけど、それを気にしてほしくはないわ。何しろ本人がテイムとかした覚えがないんだしね」

「それそれ、エリィあれから自分のステータスとか確認したか?」

「あれからって言うのが何時なのかわかんないけど、最近はしてないわね」

「え…いや、普通気にならへん? レベルアップしてるかな~とか、スキルやら増えてる「え、面倒くさい」かな~とか」


 心底面倒くさいと言いたげに、被せて言い放ちつつ口をへの字に曲げるエリィに、アレクは信じられないという表情だ。


「ゲームの醍醐味やん!?」

「アレク、ここはリアルであってゲームではないのだよ。わかるね?」


 何故か偉そうに腕を組んで踏ん反り返るエリィがいた。


「まぁそのうち気が向いたら見ておくわよ」


 この話は終わりだと告げるように壁を調べ始めるエリィ。

 触っても特に変わりはないのだが、奥の壁の中央部分に魔力反応を感じるのだ。


「開くか何かするのかと思ってたけど、何も反応ないわね、アレクとセラも調べてみてよ」


 エリィに言われて彼らも調べ始めるが、壁は壁として存在するだけで、やはり変化はない。

 どこかにスイッチでも等と呟きながら、あちらこちらと観察するうち、エリィの身長よりもかなり高い位置、人族の大人だったら胸の高さくらいだろうか、そこに何か模様のようなものが描かれているのが見えた。


「ごめん、セラ、あそこまで持ち上げてくれる?」


 壁にペタリとくっつきながら上の方を必死に指さす。

 承知したと返事をするセラの首が下げられ、そこによじ登ると直ぐに、目の前が上から下へと動いた。

 セラがエリィを持ち上げているのだ。

 

 目の前に模様がある。

 左右対称で小さな点は文字だろうか、何らかの法則に則って並んでいるのだろうが、暗い事とそれ自体がとても小さい為よくわからない。


 そこへエリィが手を当てると、ゆっくりと光を放ち始め…








――――模様ごと、壁が消えた。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。




そしてブックマークありがとうございます!

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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