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186話 箱庭系も大好物です



 ヴェルザンへは何かついでがあれば返事に向かおうと思うが、何もなければ明日返事をすると決めているし、他に連絡しなければならない相手はいない。

 かなり消費して減ってしまった薬品類の製作でもするかと収納を見てみれば、新しい作物が収穫されている。

 異空地で主に収穫を担ってくれているムゥの収納とは、ダイレクトに接続されているので、ムゥが収穫したものがこちらでもリアルタイムで確認できるのだ。

 内容物の移動ももちろんダイレクトに出来るが、こちらについては現段階ではエリィとムゥの双方の許可が必要となっている。


(これはこの前採取したハーブ類か。まだ収穫そのものは少ないとはいえ、無事に根付いてくれたみたいで一安心だわ。そういや時間設定とかまた弄ったほうが良いのかな……よし、製作作業よりも今日は異空地で調整に勤しむか)


 皆に居空地へ行くと告げて、エリィはそのまま彼の地へ入り込む。


 ―――パパパーパパーパッパパァァァァァン♪


 入った瞬間どこぞで聞いたようなファンファーレが鳴り響いた。


「な、何事!?」


 音の出所もわからず、周囲をキョロキョロと見回していると、ルゥが近づいてくるのが視界に入った。


【主君! 見てください! 果樹の花が咲きまし………ん? どうかしたんですか?】


 エリィが挙動不審になっている様子に気付いて、ルゥが首を傾げる。


「ぅぇ!? ル、ルゥ……ぃゃ、何かファンファーレっぽい音がして、でも何処にもスピーカーとかないわよね?」

【音……あぁ! 理解しました! えっとですね、異空地のコントロールパネルを呼び出してもらって良いですか?】

「パネル? ぅん、良いけど……」


 言われるままに操作パネルを中空に呼び出す。


【多分どこかに……】


 地面からエリィの身体を伝って左肩までよじ登り、ルゥがそこからエリィの手元を覗き込む。


【あ、あった。ありましたよ主君。一番上の欄を見てください。レベルアップって書いてるでしょう?】


 そう言われ、画面の上の方を見れば確かに『NEW!! 当地のレベルが10に上がりました』の一文が確認できた。

 本気でゲームっぽい表示の仕方に呆れる暇もなく、ルゥからの指示が飛んでくる。


【そこをタップしてみてください】


 イモムシが『タップ』とか言うのが、どうしても違和感満載で苦笑が洩れる。

 そんなエリィの様子に、ルゥが不思議そうに頭部をコテンと倒すが、それに気にしないでとばかりに首を振る。納得したのかどうかわからないが、とりあえずそのまま指示と説明をしてくれるようだ。

 とりあえずタップしてみると、レベルアップした項目が箇条書きにされている。


・異空地第2区画解放

・出入口自由化Lv.1解放

・建設Lv.1解放

・内部設備Lv.1解放


 今までの異空地は第1区画のみだったようだ。それでもかなり広かったが、更に広がったという事らしい。

 そして出入口自由化。

 どうやら待ちに待った機能解放のようだ。これまで入った場所にしか出る事は出来なかったが、これからは入った場所に関わらず出る事が出来る……但しLv.1とあるようにまだ制限は残っている。例えばエリィ以外の全員に宿で異空地に入って貰うとする。これまではその後エリィが何処かに移動しても、皆が出て来られるのは宿だったのが、今後はエリィのいる場所となるようだ。

 更に使い勝手が良くなった事はとても喜ばしい。

 次に建設だが、どうやら居住家屋や飼育小屋等、どれもLv.1が解放されたようだ。つまり、どれも一番小さく簡素な物なら建てられるという事だ。

 今までは異空地に元々あった物、例えば土や岩なんかを手動で動かして配置換えする等はできたし、畑を耕したりはムゥに教えれば器用にこなしてくれた。ルゥも手伝ってくれるし外で取ってきた植物を育てる事は出来たが、それだけだった。だが今後は出来る事も当然増えていくだろう。


 試しに居住家屋Lv.1を選んでみると、本当に一瞬で小さな木造小屋が建った。

 簡素な木の扉を開けて中を見れば、6畳一間にキッチンのついたアパートの一室の様な内装が目に飛び込んでくる。

 次いで試すのは内部設備Lv.1。まぁお察しの通りと言うか、簡素なベッドなんかを設置できる。


「……異空地にレベルアップなんてあったのね」


 これまであんなファンファーレが聞こえた事がなく、気づいていなかったがこれまでもレベルが上がる度に寂しく聞いてもらえないファンファーレが鳴り響いていたのだろう。もう少し細目に居空地へ来るようにした方が良いかもしれない。

 お試しで建てた小屋だが、あって困るものではないのでそのままにしておく。

 ついでに飼育小屋も、家屋小屋からは少し離れた場所に建設。水飲み場は屋内屋外どちらにも置いておく。


「鶏、探さないとかぁ……いや、牛もか」


 実を言うと牛乳は匂いが苦手だ。どうにも血の臭いに感じてしまい、エリィは苦手だった。しかし乳製品は美味しい。バターもクリームもとても美味しい。ならばなんとかして手に入れねばなるまい!


 あぁ、やばい……本気で楽しい。

 日本人時代、RPGやシミュレーション系が好きだったが、サンドボックス……箱庭系も大好物だった。

 それに何より、実際に捕獲飼育まで至れば、目玉焼き、マヨネーズ、グラタンにケーキ、いずれアイスクリームなんかも空想の産物ではなくなる。もう夢が広がりんぐ過ぎる!

 王都に行くとかほっぽって異空地に籠りたい。

 籠ってレベルアップに勤しみたい。もっともどうすればレベルアップするのか、まだよくわかっていないが。

 今は小さく木造の物しか建設できないが、いずれ石造りだの色々な建設が可能となるのだろう。建築素材だけでなく、建築物そのものの種類も増えていくだろう。

 もうワクワクが止まらない。


 そんなエリィを見つめるルゥと、仕事を終えたのか近づいてくるムゥには、突然木造の小屋や箱が増えたように見えて、目を丸くするばかりだ。


【主、主君! これはいったい……】

【主様ぁ、何か増えたのよぉ? 何なのよぉ?】


 二人の声に現実に意識を戻したエリィが慌てて説明する。が、ニマニマが止まらない。


「ごめんなさい、つい夢中になっちゃってたわ。これはねぇ、小屋よ!」


 うん、まぁそれ以外には見えないだろう。

 徐に離れた場所にある方の小屋を、エリィが指さす。


「あっちは小さいけど中にベッドとか置いた居住用ね。それでこっちは飼育小屋。そのうち何とかして鶏とか牛とか探してくるわ」


 動植物の探索はスフィカことスー達にお願いするのも良いかもしれない。

 そうしていると、蜜蜂達も近づいてきた。ビーネことビー達だ。ビー達には蜜や花粉集めをお願いしている。受粉はそれに伴って出来るので、特に個別で命令は出していない。

 挨拶に来たのかと思ったのだが、そのまま暫くしても離れないので、パネルの画面を切り替えて思念同調欄を確認してみる。


<蜜集めも花粉集めも順調。だけどもっと違う花のも欲しい>


 なるほど、果樹やハーブ薬草類だけじゃなく観賞用の花々なんかも集めて見ても良いだろう。

 エリィはぐるりと辺りを見回した。

 確かに色彩には乏しいかもしれない。早々にアンセとフロルにも着任してもらう事にしよう。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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