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17話 霧の中で その1



 あの後デッティの実を2つ追加で割ってもらい、3人で美味しく頂いた。

 やはり同じメニューが続いているのは少々ストレスになっていたようだ。

 熟れて落ちている実の残りは収納に入れておく。下準備に手間はかかるが、味はライチに似ていて、食べて良し、売って良しの優良果実だ。

 セラの言うマロウロという果実も色が黄色と、違いはあるものの味は似ていてデッティの実よりも大きいらしい。


 ――いつか食べてみたいものだ。



 

 予定では今日遺跡に到着するはずだったのだが、着く前に日が暮れそうな為、もう一夜野宿したほうがいいというアレクの意見にエリィもセラも異論はない。

 アレクの話では、遺跡に魔物が住み着くケースは決して少なくないし、ダンジョン化している、もしくはさせている場合など、様々なパターンがあるようで油断はできないそうだ。


 ちなみにダンジョンにはコアがある。

 そのダンジョンコアというものは、一説には瘴気の凝縮塊だとか言われているが、今のところ正体はよくわからないらしい。ただそのコアによってダンジョンが成長したり、特色があったりすると言われている。

 結局はわからないことだらけなのだが。





 一夜明けてみれば、霧が立ち込めていて視界が悪い。

 目指す遺跡近くには先だって立ち寄った泉をはじめ、水場がいくつかあるせいか、時折霧が発生するようだ。


「これ、ちょっと洒落ならへんなぁ」

「そうね、全く見えないわけじゃないけど、気を抜いたらはぐれたりしそう」

「霧が晴れる…せめてもう少し見通しがきくまではここに待機すべきではないか?」

「この面子で普通に戦力になるのはセラだけだと思うしね、アレクも待機でいい?」


 周りの状況を眉間に皺を寄せてみていたアレクが、エリィに問われて振り返る。

 一度エリィを見てから再び、顔を結界の外へと向けた。


「それでええよ、せやけどなぁ」


 歯切れの悪いアレクの様子に、エリィの声に困惑が混じる。


「どうかした?」

「ん……せめてこの木の上にでも移動せえへん?」


 アレクが昨夜の宿となった、大きな木の根元にある洞から上を見上げる。


「この霧の中で、洞の入り口に魔物でも現れたら、僕やセラは飛べるさかい何とかなる思うけど、エリィは逃げられへんやろ?」

「それは…そうね、この魔素量じゃ飛行魔法は使えないし」

「確かに逃げられたとしても無傷という訳にはいかぬかもしれぬ」


 アレクの危惧はもっともなものだったので、すぐにでも移動することにする。

 いつものようにエリィは布団や敷物代わりの毛皮を回収し、アレクはまずは内部に置いていた結界石を、1つ回収するごとにエリィに渡していく。

 結界石4つのうち2つは、洞の外側・入り口両脇に設置したので、全員で洞から出て回収しようと外に出た瞬間―――


「まって! 「まずい!」ダメ!」


 緊張をはらんだエリィとセラの声がほぼ同時に発せられた。

 アレクも一旦石は置き、バネのように小さく跳ね全身で外へと向き直り、低く身体を伏せる。

 エリィは抜刀し「呪符つくっとくんだった」と声に後悔をにじませた。

 咄嗟にエリィとアレクをかばうように前に躍り出たセラは、臨戦態勢で翼をやや広げ油断なく視線を左右へ走らせた。



 ゾクリと背筋が震えるような殺気の乗る気配に息が詰まる。



 もう少し早く動いていればと後悔がよぎるが、唐突に気配を露わにした先ほどの瞬間を思えば、当に狙いはつけられていて、エリィ達が動き出した途端に甚振るかのように殺気を隠すのをやめただけかもしれない。


「来るぞ!」


 セラの声にエリィとアレクも飛びのく。


 エリィ達がいた場所に鋭い爪の覗く両前足がガっと突き立てられた。

 霧のせいで全てが重く水気を含んでいるので、盛大な土埃がたったりはしないが、衝撃で抉れた地面と木片が四散したのが見て取れる。

 その刹那、横に飛びのいた姿勢からぐいっと身体を大きく捩って、セラが後ろ足の爪で相手をとらえようとするが、それを読んでいたかのように相手もすぐさま後方に飛びのいた。

 すかさずアレクが身を伏せたまま、2対の翼を広げて大きく一振りすると、飛び散った羽が矢のようにヒュンと空気を裂いて相手に襲い掛かる。

 相手が飛びのいた先を狙ったように飛ばされた羽の矢は、真っすぐに相手を捉えその左目にまともに突き刺さった。

 目まぐるしい状況に抜刀したまま動けなかったエリィも、左目を潰されたことで動きがとまった相手をやっと視認する。


 大きさはセラより一回りほど大きいだろうか、青灰色の体毛に全身を覆われた狼のような獣がそこにいた。

 首周りには同色の豊かな鬣があり、そこからしなやかな曲線を描く背には体毛越しにでも強靭な筋肉が、その存在を主張している。

 続く尾は自らの強さを誇示しているかのように、気負った様子もなくゆっくりと左右に揺れているが、その顔は左目の痛みのせいか険しく歪み、ガルルル…と低い唸り声が聞こえてくる。


 霧の薄い膜越しに見えたその姿に、アレクが息をのむ音が小さく聞こえた。

 

 


ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


至らぬ点ばかりのお目汚しで申し訳ない限りですが、いつかは皆様の暇つぶしくらいになれればいいなと思っております!


リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。




そしてブックマークありがとうございます!

ゆっくりではありますが、皆様に少しでも楽しんでいただけるよう更新頑張ります。


どうぞこれからも宜しくお願いいたします<m(__)m>

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