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135話 ハーブを採取



 手作り植物図鑑を見ながら周囲の草木に鑑定をかけていく。

 途中、向こうからやってきたカモネギ獲物を預かり、収納へと入れて素材化すると言う作業を数回繰り返したところで遅めの朝食をとる。

 前回と違い、今回はお馴染みの肉串に塩だのハーブだのを振りかけただけの簡単なものだったが、十分満足できる味だった。

 おかげで調味料の類はどれも残量が心許なくなったのだが、今朝追加購入してきているし何とかもってくれるだろう。


 再び歩き出した一行が足を止めたのは、朝食の場所からさほど離れていない場所だ。エリィが何か見つけたようで地面にしゃがみこんでいる。


【何か見つけたんか?】

【これ、バジルに似てると思わない?】

【バジルってなんなのさ?】


 しゃがみこんだエリィを挟むようにして、アレクとレーヴが同じようにしゃがみこんで手元を覗き込んだ。


【香りも似てるし、これは採取しとこうと思ったんだけど、採取道具を買ってくるのを忘れたなぁと……小型のナイフを代わりにするかどうするか悩んでたのよ】

【ふーん…で、バジルって?】


 レーヴは『バジル』と言うものが何なのか気になって仕方ないらしい。


【この前と、さっきの食事にも使った乾燥ハーブあったでしょ? あれの中に多分混ざってる一つよ】

【美味しい奴じゃないか! それは持って帰らないといけないねぇ】


 レーヴの口調が素になっているらしい事に気づき、ふとエリィの口角が上がる。


【ナイフでもええけど、折角やし魔法で掘り起こすんでもええんちゃう?】

【魔法ねぇ……目的地までどのくらいかかるかわからないから、最初からあまり使ってへばったらマズくない?】

【アタシが掘り起こそうか? 少々使ってもまだ大丈夫だからねぇ】

【やるんやったら僕かエリィがええと思うな。僕もエリィも、制限かかっとったやろ】

【確かにそうね。じゃあ私がやってみるわ。次何か見つけたらアレクね】

【了解や】


 エリィはすくっと立ち上がり、足元のバジルっぽい草に顔を向ける。

 『こういうのって土魔法なのかしらね』とか呟いているうちに、あっさり周囲の土ごと持ち上げていた。

 あまりのあっさり具合にエリィの方が驚いたようで、呆けたように取り分けた草の株を空中に浮かせたまま突っ立っている。

 その様子にフィルが気遣うように小さく呼びかけた。


【エリィ様? 如何なさいましたか?】

【ぇ? あ……何かあっさりできちゃって……しかも取り出した跡もいつの間にか均してるし……】

【なるほど。当然と言えば当然の事にございます。エリィ様の魔力操作は、もうそれは繊細且つ壮麗であらせられましたから、この程度なら造作もない事かと】


 前々世のエリスフェラードの事を言っているのだろう。

 確かに欠片を再び回収出来てから、実は前々世の事も、少しは思い出せるようにはなった。取り立てて言うほどの事ではないので誰にも言ってはいないが。

 エルフレイアの事も、色以外はまだぼんやりとでしかないが、少しは思い出せている。

 地球から境界を越えて零れ落ちた時に、何か変化があったのだろう。本人曰く元々黒髪に黒目だったというのだが、こちら側に落ちた時には髪色はそのままだったが、瞳が桜色になっていた。

 それがエリスフェラードには印象的な事だったのかもしれない。その色だけが何故か鮮やかに思い出せた。


 取り出した草の株を収納へ入れると再び歩き出す。

 なかなか広い森らしく、目的地はまだ遠い様だ。

 瘴気もまだそこまで濃い訳ではないので、今のうちに休んでおこうという話になった。

 結界石を置き、火を熾す。もう慣れた手順だ。

 道行の合間に得た肉はかなりの量且つ種類になっていて、それぞれ好みの肉があればそれを出して焼いて食べた。


 どんどんと周囲の色の明度が下がり、頭上を見上げればもう夕刻の色は随分と端に追いやられている。

 出かけるとは言ったが日を跨ぐとは言っていなかったので、オリアーナ達が心配するかもしれないと思ったが、仮にもこちらはギルド員だ。こんな事は珍しくもない事だろうと思い、頭からポイっと投げ捨てた。

 そして夜はもう間もなくやって来るだろう頃になって、エリィが立ち上がった。


【主殿?】


 一番に反応したのは近くで丸くなっていたセラだ。だかそれ以外も然程間を置かずに身を起こしている事に、エリィは苦笑を漏らした。


【大丈夫、別に何か感じたとかじゃないから】

【せやったら何で立ち上がってんねや?】

【折角だし、採取したものをムゥ達に預けておこうかなって思っただけよ。そうしたら増産してくれるでしょ?】

【ならばそのまま異空地でお休みになられますか?】


 フィルの問いかけにフルフルと首を振る。

 異空地で休息する方が安全なのはわかっている。それに居空地に退避できない場合があるとも思えない。

 しかし全てに絶対はないとエリィは思っているのだ。

 何らかの事情で居空地に退避できない場合が出たとして、野営の諸々の感覚が鈍るのは自分にとって得策ではない。だから今異空地に行くのはあくまで採取物を預けに行くだけであって、そこで休むわけではないのだ。

 ただこれはエリィの考えであって皆がそれに倣う必要はない。


【私は外で休むつもり。だけど異空地で休みたいと言う者はそうしてね。安全に休息する場所があるんだから】

【俺はここでいい】

【僕も久しぶりやし、お外を堪能しよかなぁ】

【エリィ様のいらっしゃる場所がワタクシめの居場所でございますので】


 セラ、アレク、フィルが秒も置かずに返事をしてきたが、レーヴは悩んでいるようだ。


【アタシはどうするかねぇ……とりあえずエリィ様は異空地に行くんだろう? じゃあとりあえずそれについて行ってから考えるかねぇ】

【採取物を渡してくるだけなんだけど…まぁ良いか、それじゃ行ってきます】

【行ってくる】

 

 フィルがついて来ようと思ったのか腰を浮かせかけたが、言うより早くエリィとレーヴの姿が消えた。



 異空地の様子は相変わらず穏やかだ。結晶草と結晶樹もちゃんと根付いたのかちゃんと大きくなっている。

 ただ今の所やはり受粉が大変なようで、果樹はあまり実が出来ていない。

 そんな果樹の花の所にキラキラとした小さな影が見える。


【ルゥ】


 花の所で何かしていたらしいクリスタルなイモムシはくるっと顔を振り向かせた後、ポテンと地面に落ちた。

 結構な高さから落ちて、あんな硬質に見える身体が大丈夫なのかと慌てて駆け寄るが、本人が至って元気なようだった。


【主君! なんだか久しぶりな気がします。どうしたんですか?】

【新しく見つけた草を4つ程持ってきたのよ。また植えて良いかしら…?】

【はい、もちろん!】


 収納から今日見つけた4つの株を取り出していると、何かが背中にぶちあたってきた。

 姿勢を崩すほどではないが、後で危ないからやめる様に言った方が良いだろうかと眉根を寄せて蟀谷を押さえていると、嬉しそうな声が脳内に響く。


【主様!! 主様なのよ!! ムゥずっと会えなくて寂しかったのよ!?】


 何週間何か月も会っていない訳ではないのだが、ずっと一緒にいたせいか、ほんの短い間でもやはり寂しい様だ。


【ごめんね、ムゥ。頑張って作業ありがとうね、怪我とかしてない?】

【ムゥは痛いのはないなのよ! ルゥがいっぱいいっぱい教えてくれるなのよ!】

【そっか、沢山勉強したんだね。偉い偉い】


 背中から肩を経由してきたムゥがエリィの手の中にある株を見て、首を傾げるかのように身体を傾けている。


【主様ぁ、これなぁに?】

【これ? 今日新しく見つけた草で、ここでまた育てて欲しいなと思って持ってきたの】


 ムゥが身体をぐうっと伸ばして間近に顔を寄せ、観察しているのかじっと見つめていたが、くいっと顔をエリィの方へ向け嬉しそうに身体を震わせた。


【とってもいい匂いがするるの!】


 どうやらスライム……はわからないが、ムゥは芳香もしっかりと感じられるようだ。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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