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121話 初調理と蜂族の情報

ほんのちょっぴり飯テロ…なのかもしれない?



 フィルに宿からの転移を頼み、現在はトクス村の外に居るエリィ、アレク、セラ、フィル。

 一方レーヴは異空地から出てもらい、そこから単身こちらへ近づくように移動してくれるようにお願いしてある。

 その際に蜂族も探してもらうよう頼んでいる。

 エリィ達もレーヴと合流を目指して移動をしながら、地図の場所と蜂族を探す予定なのだが、如何せん気温がかなり低い。

 前世で言うなら3月末だと言うのに、今日は日差しがあっても寒さが沁みて来て、呼気が白いくらいで、地図の場所は兎も角、蜂族は探せる気がしない。


「何でこないに寒いんや……」

「まぁ、予測された事態ではあります」

「どういう事だ?」


 ぼやくアレクにフィルがした返事を、セラが聞き咎めた。


「セレスもアンセもフロルも、皆精霊ですから」

「「「………」」」


 しれっというフィルに3名が無言になった。

 精霊だからどうしたと突っ込みたい気持ちはあるのだが、恐らく続く言葉は予想がつく、というかついてしまう。


 ―――精霊だから、季節を呼ぶ役目もあるのだ…と


 きっとそれほど齟齬はあるまい。

 セレスティオンは風を操るのが上手く、暖かな春の風を呼び込むのだろう。フロリセリーナなんて、名前からして花関係に思えるし、アンセクティールもそれなりに関与しているのではないかと思われる。


(何が『猛省してもらうのに良い機会だから、まだ放っておいて良い』だ……こっちはこっちでどう考えてもお急ぎ案件じゃない。あぁ、本当に頭が痛い。

 とはいえ一つずつ片付けていくしかないわよね…まぁ、可能な限り急ぐとしますか)


 エリィが険しい表情で全員を一瞥してから、少しばかり肩を落としで息を吐く。


「とにかく一つずつ確実に片づけていきましょ……だけど、その…可能な限り巻き巻きで…」

「…せ、せやな」

「承知した」

「畏まりました」


 フィルの返事に青筋が立ちそうになるのを何とか宥めつつ、木々を確認していく。

 この辺りは平たんな場所なので、地図を気にするとしても、ぽつんと1本だけ生えている針葉樹があれば確認する程度で良いだろう。

 そして蜂の方だが、前世の蜜蜂であれば冬眠することなく、巣の中で細々と食事をするなどの最小限の活動はしているだろうから、微かでも音や気配はするはずである。それを頼りに探すとしよう。


 そういえばカムランからと言って、ゲナイドが持ってきたマトゥーレは果実の甘さだけの素朴な菓子だったが、砂糖だの蜂蜜だのはこの世界の人里に来ても、未だ見た事がない。

 他の調味料も稀少で高価格なので、そのうちお金を得る手段に活用させてもらおうと考えているが、もしかすると甘味は更に高額な可能性がある。

 時盤や魔具等、必要なものを揃えるのにお金は必要だ。しかも価格もわからないので稼ぐ手段は多いに越した事はない。


 そんな事を取り留めもなく考えながら、木々を確認していると、セラがどこからかハシビロさんを捕まえてきた。

 お昼ご飯はハシビロさんに決定という事で、さっさと収納すれば、さっくり解体してくれる。今は成分化は必要ないと思われるので、解体素材化で止めておいた。

 折角朝市で調味料も少ないながらに手に入れたので、この世界での初調理と洒落込もうではないか。


 正直前世も家事が好きだったわけではない。一人暮らしで必要に迫られて渋々していただけだが、それでもどうせ食べるなら美味しいほうが良いと、スパイス等の調味料は無駄に数が揃っていたのだ。


 蜂族探しは皆に任せて、エリィは昼ご飯の準備をしようと決めた。

 火を熾し、水無限湧きの魔具鍋で湯を沸かしながら、ハシビロさんの胸肉に下味を揉みこむ。

 あっさり塩味でも良いのだが、少しばかり乾燥ハーブも砕いて放り込む。

 見た目と香りで選んだバジルっぽい乾燥ハーブをメインにして、揉みこんだ後はしばらく放置。

 その間にミガロ芋を魔法で準備した水できれいに洗い、軽く水気を拭ってから蒸かす。とは言っても蒸すための調理器具などは村では売っておらず、手に入らなかったので、籠を使ってのなんちゃって蒸し器だ。もっと大きな町に行けば売っているのかもしれない。いつか行ってみよう。


 エリィが昼食の準備をしている間、皆は蜂族を探してくれていたが、今の所成果はない。エリィも待ち時間の間は探索をかけたりしていたのだが、引っかかるのはネズミやウサギだけだった。


 ついでに朝市で買ったミルクを使ってバターを作ってみる。

 容器にミルクを入れて振るだけの簡単なお仕事だ。様子を見ながらひたすら振り、塊が出来れば完成。

 料理は実は面倒くさいと思ったりもするのだが、こういう実験みたいな作業は大好きだ。

 漬け込んだ胸肉をフライパン(と言って良いだろう)で焼き、塩で味を調えれば完成。胡椒は見当たらなかったのだが、何時か探したい。

 蒸かしたミガロ芋に作ったバターを乗せて、こちらも軽く塩を振れば完成だ。


 沸かした湯でお茶を準備しながら念話を飛ばす。


【ちょっと早いけどお昼ご飯にしよう。戻ってきて】

【もうそないな時間かぁ、戻るわ~】

【承知した】

【! すぐに戻ります】


 戻ってきた順に料理を渡し、食事にするが、アレクとセラはお代わりを所望し、フィルは何故かレシピを求めてきた。

 フィル曰く『エリィ様のお手を煩わせる等!!』と叫んでいるが、まぁ手伝ってくれるなら有難いので、今後はお願いするとしよう。


 その場で居空地に入り、ムゥとルゥにも料理を置いてくると、レーヴの分を収納にいれて後は片付けた。

 そろそろ木々の密度が更に下がり始めようかと言う頃合いで、やっとレーヴが合流できた。先にレーヴに食事を食べるように料理を渡すと、何故か滂沱の涙を流しながら食べていた。

 辛うじてかもしれないが美味しいと言える味だったと思うのだが解せぬ……。


 食べ終わった食器を受け取り収納へ放り込んでいると、レーヴが話しかけてきた。


「エリィ様、美味しかったよ!」

「そ? なら良かった。泣きはじめるからそんなに不味かったかと不安になったわ」

「感涙の涙だよ!!」

「はいはい、それじゃまた探し始めよっか」

「あ!! 待って、エリィ様、探してるのは蜂族なんだよねぇ?」


 レーヴが勢い込んで拳を握るが、表情が少しばかり冴えない。


「えっと、実はね、蜂…見つけはしたんだよ…」

「ぉ、レーヴ凄い! どこ? 案内は頼める?」


 更に表情が沈むレーヴに、エリィも気づいたのか首を小さく傾けた。


「だけどねぇ、蜂は蜂でも、蜜蜂じゃなくて…魔物の蜂なんだよ」

「……ふむ、魔物の蜂かぁ」

「いえ、エリィ様アリかもしれません」


 そんな必要はないのにしょげかえるレーヴと腕組みして唸っているエリィに、フィルが少し考え込んでから口を開いた。


「魔物の蜂というとどっちでしょう? 色は何色でしたか?」

「色? 蜂の? たしか黒と緑の縞々で……」


 そこまでレーヴに聞いたフィルが、くるりとエリィの方へ身体ごと向き直った。


「深森蜂なら、蜜蜂の集めた蜜も狙うはずです。レーヴが見つけた深森蜂から蜜蜂の居場所を得られるかもしれません」

「なるほど、じゃあレーヴ、その蜂の居場所に案内お願い」

「ぁ…行くしか……ないよねぇ」


 レーヴの情報が有力な手掛かりになりそうなのに、彼女の顔色は優れないままだ。


「い、急がなくちゃいけないねぇ、間に合わなかったら困るし」


 要領を得ない彼女の言葉に、アレクが怪訝な表情で問いかける。


「間に合わへんだらって、なんぞあったんやろか?」

「見つけたし、まだ生きてはいたさ、ただねぇ」

「なんなんや…」

「スヴァラーに捕まっちゃってて、だから早く行かないと間に合わないかもって…」


 『スヴァラー』って何だろう?とエリィは疑問に思ったが、それを訊ねる間もなくセラが自分の背にエリィを乗せ、全員が駆け出して行った。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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