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120話 新たな情報を含めて共有する



 ゲナイドが現在までに分かった事をざっくりと話していく。


 パウルが行方不明になった事、怪我をしているようだが、その行方が杳として知れない事。あとパウルの怪我の原因となった、もう一人の不審人物の事も付け加える。

 魔紋入りの送信具があったのだが、その宛先は現在解析中という事

 鍵付き魔具から出た帳簿はまだ調べていないが、手紙類は大したことが書かれていなかった事。

 ただ記名のない封書に、日付と時間、場所の書かれたメモと、雑な地図が一枚あった事。場所についてはヴェルザンが調べている事。

 白暗月29日の夜、パウルが新警備隊舎に居らず、何処にいたのかは不明である事。

 先月のまだ夜と言っても良い程の早朝に、村の外から戻ってきており、その時にコートさえ着ていなかった事。


 それらを話した後、ゲナイドは写してもらったメモと、同じく写してもらった雑な地図をテーブルに広げた。

 メモの方に一旦視線を流すが、地図の方をオリアーナが手に取りじっくりと眺める。


「目印になるようなものが描かれてないじゃないか、これで場所を特定しろと言われてもな」


 エリィもオリアーナの手にしている地図を覗き込んだ。


 ×印と一本の木の絵、これは三角に幹を表しているのだろう線が一本引かれている。少し離れた所に一本描かれたのと同じ木の絵が2本と、もう一本描かれているのは丸に木の幹らしき線という3本の木の絵、その下に丘を表現しているらしき曲線。更に離れた所に五角形、これは家だろうか…。


「そうなんですよ、他の情報を合わせて考えてみても、村の外ってだけじゃあ、さっぱりなんですよね」

「それでメモの方は白暗月…先月の末か、私はナゴッツ村だな、うぅむ……」


 オリアーナとゲナイドが唸っているのを後目に、エリィは雑な地図を凝視している。


(地図とくれば何かを隠した場所というのが定番よね。何を隠したのかわからないけど、人に見つかったら困る、もしくは見つけて欲しくない物というのは大きく間違ってないでしょ、となれば人が余り近づかない、近づきたくない近づけない、どれかに当てはまると考えれば魔の森方向?

 ぃゃ……魔の森方向は兵士もギルド員も向かうから、反対方向の方がずっと人目に触れにくい…三角の木というと、前世でも針葉樹はこう表現した気がする。針葉樹2本と広葉樹1本が生えている丘から少し離れた針葉樹の所にお目当てのものがあるって事で良いかしらね。

 私が出かけられれば良いけど、無理ならアレクかフィルに探してもらうのが良いか…あぁ、つい忘れがちよね…ついでに鑑定……ぁ? 微かにだけど魔力が残ってる。魔具に保管されてた事が影響してるのかしら…残っているうちの一つはあの死体のモノと同じみたい…つまりパウルのモノって事ね。そうか、この魔力を探せばこの地図の場所も特定できるかも。隠したいと強く思ったのなら、魔力なり痕跡が残ってる可能性があるわね)


  そんな事をしたり考えたりするのに没頭していると、どうやら周りの声が聞こえていなかったようだ。


「エリィ!?」

「おい、大丈夫か?」


 ハッと顔を上げれば、心配そうなオリアーナとゲナイドの顔と目が合う。


「ごめんなさい」

「まだ少し眠いんじゃないか? そんなに成長した後だしな。気づかず呼び出してすまなかった。部屋で休んできていいぞ?」

「お嬢の言うとおりにした方が良いだろう。馬鹿ウルが行方不明だから気は抜けんが、たぶん怪我もしているようだしここを襲撃してくる可能性は低い。怪我以前にそんな度胸も技量もある奴じゃないしな」

「すみません」

「気にするな。さっきも話してたんだが、もう一度言っておくぞ。今日一日は念の為宿に居て欲しい。だが明日になれば一応軟禁解除だそうだ。警戒は怠れないがな」

「早く休んだ方が良い。食事も億劫かもしれないから、食べられるときだけ部屋から出てくれば良いからな」


 オリアーナの言葉にこくりと頷き、その場から部屋に向かって歩き出したエリィの背中越しに、続く会話が聞こえていた。


「あ、それとゲナイド、済まないんだが、少しだけ宿の警護を代わって貰っても良いだろうか?」

「えぇ、そりゃ構いませんが」

「ちょっと自室に行く用が少し、すぐ終わると思うから頼む」

「今から行くんですかい?」

「あぁ、ちょっと行ってくる」

「わかりました。んじゃお気をつけて」


 そんな会話を聞きながら、エリィは部屋へと入り、扉を静かに閉めた。





 部屋に入り、施錠と結界をすませると、爆睡していたアレクも起きていたようで、全員の顔がエリィに向けられた。

 爆睡していたアレクを揶揄いながら、異空地に向かう事を告げると、全員が立ち上がったので、そのまま異空地に移動する。


 遠く、ムゥが作業をしているのが見えた。多分その近くにルゥもいる事だろう。

 レーヴは何処だろうとあちこち見回せば、何時の間にやら大きく育っていた木に梯子を立てかけ、上半身を葉の茂みの中に突っ込んで何かしていた。


「レーヴ」


 名を呼べば、がさりと大きな音を立てて、するりと梯子から降りて来る。

 あんな着物ドレスでよく動けるものだと感心するが、そんな事を考えている間にレーヴがエリィの前まで来ており、さっと片膝をつく。


「エリィ様、会いたかったよ!」


 はいはいと苦笑気味にレーヴを立たせると、エリィは思わず訊ねた。


「さっきは何してたの?」

「さっきと言うと、あぁ、あの木の作業かい?」


 右手人差し指を優雅に頬に押し当てながら、レーヴが返事をすると、すかさずフィルの言葉が飛んでくる。


「全く、最早取り繕う気もなしですか」

「うっさいねぇ。いいじゃないか、エリィ様が良いって言ったんだから問題ないはずだよ」

「とうとう記憶改竄ですか? エリィ様はそのような許可を出していらっしゃいませんよ」


 ガーンと書き文字が後ろに書かれた場面のように、レーヴが口元を押さえて後ずさる。

 更に言い募ろうとするフィルを、エリィがまぁまぁと宥めた。


「別に言葉遣いくらい話しやすいようにしてくれれば良いわ。フィルも、すっかり戻ってるけど、もっと砕けて良いからね?」

「ほらぁ! やっぱりエリィ様はそんな小っちゃい事に拘らないって思ってたよ! フィル、アンタは小っちゃいんだよ」

「ぅ、ハイ……レーヴ、貴様…」


 折角矛を収めてくれようとしたのに、レーヴが煽るような事を言うせいで、またも一触即発な状態に逆戻りだ。

 それを再び宥めて、多分そういう事だろうと予測をつけつつも、再度レーヴに訊ねる。


「それで何してたの? 受粉?」


 先程までレーヴが立てかけた梯子の上で、上半身を葉の中に突っ込んでいた木を見れば、小さく白い花が幾つも咲いていた。

 微かに甘いながらも爽やかな芳香が鼻を擽る。


「あぁ、その通りだよ」


 ふぅとエリィが小さく肩を落とす。

 ルゥから折角掌握のスキルを貰ったというのに、蜂を探しに行く暇もなかったのだ。溜息も漏れると言うモノだろう。


「ごめんね、蜜蜂探しに行く暇もなくて」


 エリィがしゅんとして小さく言えば、レーヴがきょとんと首を傾げるのと同時に、フィルがムッとした表情を浮かべた。


「蜜蜂?」

「エリィ様が謝罪なさる必要などございません! 探しに行く間などなかったのですから!」

「ぁ、ぅん…そうね、レーヴを迎えに行きがてら探そっか。ついでに他の探し物も」


 レーヴは分からないようだが、それも仕方ない。掌握スキルのあれこれは、レーヴの意識がなかった間の事だったからだ。

 それとは別に、今レーヴが異空地を出れば、他の皆と違って遺跡外のポイントに出る事になる。かなりトクスから離れた場所なので、合流できる時にしておいた方が良いだろう。そのついでに蜜蜂と、地図の場所を探せれば良いと考えたので、その場にいる全員に地図の事他を共有した。


 オリアーナもゲナイドも、急な成長によってエリィが休息を必要としていると思っている。食事もほっぽって良いとお墨付きを頂いたのだから、がっつりと引き籠り、しっかりとこの時間を有効活用させて頂くとしよう。


 ―――さぁ、再びフィルに転移を頼んで、外へお出かけだ。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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