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118話 白暗月29日 その1

そのうちエリィに話させようと思ってはいたのですが、補足資料として置いときます! ちなみに作中の現在時期は緑明月(3月)末です。


1か月30日

1年で12か月

1週間は 火風水土光闇の曜日があり1か月5週間


白の明月:1月

白の暗月:2月

緑の明月:3月

緑の暗月:4月

青の明月:5月

青の暗月:6月

黄の明月:7月

黄の暗月:8月

赤の明月:9月

赤の暗月:10月

紫の明月:11月

紫の暗月:12月





 この村で門番に従事する顔ぶれは、あまり変わる事がない為、警備隊の一部と言うより別な組織という印象があった為の思い込みだ。


 門番以外は定期的な巡回と、魔物に遭遇した際の討伐が主な仕事となり、それ以外は訓練等を除けば比較的のんびりとして過ごせてしまう。それに対して門番は壁上の巡回警戒、人の出入りの警戒及び確認、そしてそれらに対して報告書の作成が必要となり、とても不人気な職場となっている。


 ヴェルザンの場合はそれに加えて、ある意味自分の縁者と言う変なフィルターも掛かっていた。

 ひょんな事から知り合いとなった平民の子供に、少しばかり特殊なスキルが備わっていると知る機会があったのだが、当時は家族と暮らしており、ヴェルザンは距離を保ち一平民の子として見ていた。

 しかし、その後彼が孤児となった事を知り、スキルの事もあった為シセドレ公爵家で保護することになり、いつしかヴェルザンに仕えていたという経緯がある。

 それがザイードだ。


「ザイード、もし覚えていたらで構いません。白暗月29日に何かありませんでしたか?」


 ラドグースに声をかけられたかと思ったら、他の2人が固まったりして、ザイードは目を白黒させていたのだが、改めてヴェルザンに問われて少し深呼吸をすると落ち着けた。


「ぅえっと…白暗月29日の人の出入りすか? ちょっと待っててください~」


 ザイードが小走りに部屋から出ていく。どうやら現在自分にあてがわれている部屋へ向かったようだ。廊下の方から小さく、扉を開け閉めする音が聞こえてくる。

 そして待つ事暫し。


「すんません、お待たせしました~」


 戻ってきたザイードは、酷く分厚い……最早辞書レベルと言って良さそうな書類束を抱えていた。

 あんぐりと口を開けたまま呆然と見ている面々を後目に、ザイードは重そうな書類の束をテーブルに置き、空いた皿をその端の方に置き直すと、そのまま『白暗29、白暗29…』と呟きながら、書類を漁り始めた。


「な、何? その重そうな束」


 まだ少し動揺が残っているのか、思った以上に平坦な声でナイハルトが訊ねた。


「重そうってこれすか~? これでもマシになったンですよ~。以前は皮紙でしたからもっと大変だったんすよね~、植物紙に変更してくれた上に感謝感激すよ~ッ!」


 高価な植物紙とはいえ、報告書など多岐に渡って使用する部署等は、やはり皮紙から植物紙に徐々に変更されているようだ。


「ただ植物紙の方はよく引っかかって書き辛いのが難点すけどね~ッ!」

「一応改善点として報告はしましたが、対応して頂けるかどうかは不明ですけどね」

「ん? なんでヴェルザンが報告?」

「警備隊の方の備品も、物によってはギルドが一括手配しているのですよ」

「あ!」


 ザイードの呟きに反応するヴェルザンに、ナイハルトが質問したりしていると、ザイードが大きな声をあげた。


「あった! 白暗29!」


 全員が身体ごとザイードの方へ向き直る。


「えっと、この日は……あ~、そっか、この日は備品の搬入があった日か……となると、ぅぇ? そうだったそうだった」


 書類を見ながら一人首を捻ったり頷いたりしているザイードに、ラドグースがイライラと声を荒げた。


「んだぁ!? 一人でぶつぶつ言ってんじゃねーよ! わかるように話しやがれ!」


 ナイハルトから無言の拳が、的確にラドグースの後頭部を捉え静かになったが、そんな空気を読まないザイードの声が明るく響いた。


「この日はギルドの荷物が搬入されてるすよ~、で、その一部が警備隊の方にも納められてるす」

「モーゲッツ大隊長については何かありませんでしたか?」

「大隊長ねぇ……報告には行くんすけど、どうだったかな……」


 何とか思い出そうとしてくれているのだろう、ザイードが腕組みをしたり頭を掻いたりしている。

 固唾を飲んでそれを見守っていると、急にザイードが顔を上げた。


「思い出した! その日、夜にいつもの報告に行ったんすけど、大隊長いなかったんすよ。報告には新警備隊舎の方に行くんすけど、いつもは2階の執務室で踏ん反り返ってんのに、その日はいなくて、メイドさんと備品の整理をしたんで、間違いないすね」

「そう言えば確かに先月末に消耗品などの搬入がありましたね」


 ヴェルザンが答える言葉にザイードが大きく頷く。


「大隊長んところには、備品の搬入があれば一応一部はもっていくんすよ。ま、持ってっても、あの人事務仕事なんかしやしませんけどね、そこは体裁って奴で。だけど備品と一緒に必ず酒も持って行くんで、いつもはその酒は大隊長本人に渡すんすけど、あの日はいなかったから、メイドさんと整理したって訳すよ。

 報告書には書かれてないすから、村のどっかに居たのかな、ちょっとわからんす」

「他には何かない? 大したことじゃなくてもいいの」


 ナイハルトに問われて、ザイードは再び記憶の抽斗をひっくり返し始めた。


「ん~、ホントに大したことじゃなくてもいいすか?」


 若干心許なさそうな表情で訊ねるザイードに、他の3人は揃って大きく頷く。


「そっちは俺が見たとかじゃなくて、聞いただけの話なんすけど、備品の搬入の時、いつもなら荷馬車1つに御者一人って感じでくるすが、そん時は荷馬車以外に馬に乗った人が居たとか何とか……」

「詳しく!」

「そう言われても俺も晩飯ん時に聞いただけ素から……馬に貴族っぽい人が子供連れて居たとか、だけどすぐ居なくなったとか、そんだけすよ?」

「貴族……ですか」


 ヴェルザンがぽつりと復唱する。


「俺じゃなくてドッガって奴ですけどね」

「ドッガって元ギルド員のドッガ?」


 ナイハルトに心当たりがあったのか、ザイードに訊ねる。


「そう、そうすよ~。ドッガのおやっさん、ご存じでしたか~」

「えぇ、私も世話になった事があるもの、ラドグースもね。だけど、そう……ドッガさんが見たって言うならその通りなんでしょうね」

「だな、おやっさんの目なら信頼できる」


 言うや否や、ナイハルトが立ち上がり、ラドグースの腕を引く。


「ほら、行くわよ」

「! っちょ、何処に!? なんで俺まで!?」

「ドッガさん所に確認に行くのよ。それに通信魔具の片割れはアンタがもってるでしょーが!、ほれ、さっさとして」


 ヴェルザンとザイードが呆然と見つめる中、ナイハルトが爽やかに笑う。


「お皿の片づけ押し付けちゃうけど、許してネ。私達はドッガさんに話を聞きに行ってくるわ」

「……あ、は、はい。どうぞ気を付けて行ってきてください。こちらもザイードにもう少し訊ねておきます」

「えぇ、お願いネ。それじゃまた後で」


 抵抗するラドグースの腕を掴み、問答無用で引きずってナイハルト達が部屋から出て行った。

 部屋に残されたヴェルザンとザイードに沈黙が落ちるが、少ししてヴェルザンが口を開いた。


「ザイード、他に何か思い出せそうですか?」

「ん~、すんません、他は……すれより、申し訳ないですッ。俺がヴェルザン様に報告しとけば」

「いえ、それは気にしないで下さい。誰が考えても気づくはずがないでしょう」

「……はい」

「反対に貴方に感謝しなければ。よく思い出してくれました。おかげで新たな糸口を得ることが出来るかもしれません」

「でも、馬に乗った貴族ってだけじゃ……滅多にない事すけど、今までもなかったわけじゃないですし」

「えぇ、必ずそれが手掛かりになるとは限りませんが、何もなかったことを思えばずっといい状況です。本当にありがとうございます」

「や、やめてください~ッ、俺はヴェルザン様にまだまだ恩を返し足りてないんすからッ!」


 じたばたと情けなく狼狽えるザイードに、ヴェルザンの笑みが深くなる。


「あちらにも一応伝えておきますかね」

「あ、じゃあ魔石を」

「いえ、ザイード、貴方の魔力はまだ戻っていないでしょう? ローグバインの伝書箱に一報を抛り込んでおけば十分でしょう。後はあちらが判断します」

「そっすね」


 ザイードは浮かせた腰を再び下ろし、何とはなしに半割された魔石の片割れを見つめた。

 それに気づいたヴェルザンも魔石を一瞥するが、そのまま扉の方へ視線を流す。


「朗報を期待しては……いけませんかね」





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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