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104話 残酷な『お願い』 その末路

すみません、グロテスクな表現を含む回です。

苦手な方はご注意ください><

グロですが、やっと『ざまぁ』です。



 あぁそうか……この騒がしいゴミを静かにさせれば、この頭が割れそうな痛みは軽くなるのかもしれない。

 目の前が白くなる……耳に届いていた音が遠くなっていく……。





「あら、カデリオったらどうしたの、そんなところに蹲って。さぁ、お腹減ったでしょ? お昼にしましょう」

「カデリオ大丈夫? 少ないけど一緒に半分こして食べようよ」


 ――小さなデボラ姉さんと小さなズースが笑ってる。


(二人の後ろにはバーキス兄もいるし、あれは…顔は見えないけどペルタナック夫妻と兄ぃだ。あぁ、皆揃って笑ってくれてる)


 兄ぃはペルタナック家の長男、バーキスは次男、デボラは長女だ。カデリオは彼らにとってただの孤児で居候、そしてズースと仲が良いというただそれだけだ。だけどとても優しい。

 兄ぃもバーキス兄も夫妻も、自分達だって生活が苦しいのに、デボラとズースが、やせ細ってもう死を待つばかりだったカデリオに手を差し伸べてくれた。


 神殿で行われる5歳の『祝福の儀』でカデリオは魔力ナシと判定された。


 カデリオの生家であるモーゲッツ家は男爵位を持っている。とは言えほぼ平民と変わらない名ばかりの男爵家だ。それでもそんな貴族の末席にしがみつく両親からすれば、カデリオは出来損ないでしかなく、少ないとはいえ魔力を持つ嫡男のパウルを優先し、カデリオを家から追い出す事は当然の事だった。


 名だけの貴族家に使用人などはおらず、たまに家にやって来る村長とかが、敷地の隅っこで忘れられた、壊れかけの物置に身を寄せていたカデリオを哀れんで、わずかばかりの野菜屑なんかを恵んでくれた。

 だけどそれも暫くだけだった。カデリオはもう立ち上がることもできず、自分は死ぬのだと、どこか他人事のように感じていた。

 そんなカデリオに救いの手を差し伸べたのが、隣地域をまとめていたペルタナック、そこの娘であるデボラと、3男ズースであった。

 来季の作物種の分配の相談に来たペルタナック夫妻が連れてきていたデボラとズースが、たまたま裏手に遊びに来たおかげで、虫の息になっていたカデリオを発見できたのだ。

 モーゲッツ家の全員がそんな子供は知らないと言ったので、ペルタナック家に連れ帰ったのだが、これが結果的に仇となった。


 隣接しているペルタナック家とモーゲッツ家に税収の差は殆どないのだが、ペルタナック家の方は堅実な領経営を行っていて、貧しいながらも安定していた。しかしモーゲッツ家とその上のメナルダ子爵家はそうではなかった。だから嵌めたのだ。


 ―――ペルタナック男爵家がモーゲッツ男爵家の次男カデリオを攫ったと―――


 彼らを知る誰もが酷い言い掛かりだとわかっていたが、上のメナルダ子爵も嵌める側であれば、話は変わる。白を黒にすることなど造作もない事だった。

 調査のため呼び出されたペルタナック夫妻と長男は、その移動中に殺され、急遽家を継がなければならなくなった次男バーキスは、薬まで使われてもはや呼吸するだけの人形だ。デボラはメナルダ子爵が愛人にすると連れ去られた挙句、娼館に売り飛ばされた。ズースも人形になった兄と娼婦に身を落とした姉を何とか助けようと、メナルダ子爵に言われるまま、逆らう事も出来ずに裏社会に身を沈めた。


 そして生家への望まぬ帰還を果たしたカデリオは、余計な事を言わぬようにと、地下室に閉じ込められた。

 いずれは口封じに殺すつもりだっただろうが、口も頭も軽いパウルのおかげで、ペルタナック家の悲劇を知ったカデリオは、殺される前に地下から逃げ出し、そのままズースを追いかけた。

 それから先は、嬉しい事も悲しい事もすべてズースと一緒だった。



(俺の家族はズースだ…ペルタナックの皆だ……だから彼らの邪魔にしかならないこのゴミは……ここで始末してしまおう)




「あぁ、頭が悪くて助かったよ。お前らと同じ頭の出来だったらと思うと、気持ち悪すぎてゲロっちまうな」

「!……な、んだと…」


 無精髭に埋もれているせいで、パウルには見えなかったかもしれないが、カデリオの口元はニィッと弧を描いて、不自然なほど吊り上がった。


「本当に……心の底から嬉しいよ」


 だらりと伸ばされたカデリオの両手は、足を進めるたびにゆらりと揺れる。それはまるで死霊か何かと見紛うような動きで、パウルは思わず恐怖に顔を引き攣らせた。


「よ、寄るな……お前なんか俺様の足元にひれ伏し……」


 その先の言葉は続けられなかった。


「ぎゃああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁああああ」


 ゆらゆらと近づいていたカデリオが、自分の腰にぶら下がる得物にのたりと右手を伸ばしたと思ったら、次の瞬間にはそのギラつく刃はパウルの足の甲に突き立っていた。


「やっぱり煩いな。どうしたら静かにしてくれるんだ?」


 足の甲から剣を抜くと、その拍子にパウルは後ろに倒れ込むようにして尻もちをついた。傷つけられた自分の足を抱え込み、だけど顔だけはカデリオを見上げたまま、じりじりと距離を取るように後ろへずり下がる。

 無様に腹を揺する様子に、カデリオは芝居の一幕のように大げさに呆れて見せた。


「末席とは言え仮にも貴族に連なる者が騒ぐなよ。みっともねぇ。お前らの口癖じゃねぇか」


 言葉とは裏腹に、先が血で汚れた剣を、脂汗をかきながら恐怖に染まった顔で見上げて来るパウルの肩めがけて突き下ろした。


「痛いいた、い痛い、ぐあああ、や、やめろ、ひぎゃあああああ」

「よく鳴く豚だ……いや、豚様に悪いか」


 パウルがずり下がった分、へへっと薄ら笑いを浮かべながらカデリオが足を前に進める。

 もう取り繕う余裕も考える暇もないのだろう、パウルが尻もちをついた姿勢から、くるりと半転して四つん這いで逃げ出す。

 少しだけ逃げる様を見送る様にじっと佇んでいたが、パウルの希望を砕くかのように一気に距離を詰めて足の腱を横一線に断ち切った。


「いやだ、やめろ、い、たい、痛い、こ、殺さ、ないでくれ……」


 この状況に至ってまで命令形だった言葉が懇願に変わる。


「聞こえねぇな」


 ぼそりと呟くが早いか、腱を切られ身を丸くして地面に横たわる肉塊の首元の地面に剣を突き刺し、ニチャリと粘着質な笑みをその顔に刻んでから、剣をゆっくりと引きパウルの喉を切る。大きな血管を傷つけないように気道をうまく切ることが出来た事に、悍ましい笑みが深くなった。


「あぁ、静かになった。俺はまだまだだな、最初にこうしときゃ良かったのによ。だけど、ここじゃまずいか。おやっさんの店の近くを汚すのは流石に気が引けるってもんだ」


 痛みと恐怖にこれ以上ないほど顔を強張らせたパウルからは、ヒューヒューという空気の音が聞こえるだけだ。

 そのパウルの上着の後ろ襟をひっつかむと、ずるずると路地から離れる様に引きずる。

 軽く周囲を一瞥した後、村の外へと肉塊を引きずって運ぶ。

 もし見る者があれば、まるで悪魔の所業に思えただろう。



「この辺なら良いか、随分離れたしな……もっと早く潰しとくんだったよ。なぁ、お前もそう思うだろ?」


 辺りにあるのは夜の闇と、足元を照らす小さなランタンの灯火だけ。

 さぁと吹き抜けるひんやりとした風が、この惨状に似つかわしくないが、それもまた一興というものだ。

 掴んでいた後ろ襟を振り払うように離すと、剣を逆手に持ち替え、両手で勢いよく肉塊を貫く。


 グチャ

 グチャ

 ズチャ


 何度も。

 何度も…。

 何度でも突き刺す。

 足元の物言わぬ肉塊が千々に切り裂かれ、内臓がどろりと地面に吐き出されても、その作業を繰り返す。




ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期投稿になるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価等して頂けましたら幸いです。とっても励みになります!


修正加筆等はちょこちょこと、気づき次第随時行っております。お話の運びに変更は無いよう、注意はしていますが、誤字脱字の多さ他等、至らな過ぎて泣けてきます><(そろそろ設定も手の平クル~しそうで、ガクブルの紫であります;;)

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