10話 仮名では済みませんでした
名前:セラフィム
性別:男性
種族:スティル・ルラレ・クルファース(対応意訳:星空のグリフォン(月亜種))
誕生日:白の暗月 28日(対応意訳:2月28日)
状況:やや貧血
称号:エリリアード(仮)の従魔
以下、鑑定しきれなかったのか空欄も目立つが、ずらずらとなかなかハイスペックそうなステータス数値が並んでいる。しかし重要なのはそこではないとばかりにエリィは《称号》の部分を凝視する。
仮面さえなければ盛大に目をこするというネタ行動に出ていたことだろう。
ネタ行動はできないまでも、首を大きく傾げ「まさか縦読み?」などと呟いている。その横で翼を広げ浮かんでいるアレクが難しい表情をしているが大きなため息とともにエリィにジト目を向けた。
「ホンマ、エリィは斜め上っちゅうか、規格外やなぁ…この世界の生きモンは方向性の範囲内であれやこれや習得するモンやと思とったのに、テイムしてまうとか…」
「私のせいじゃない。大事なことだから何度でも言うわ、私のせいじゃ・な・い」
エリィ越しに覗き込んだアレクがセラフィムに尋ねる。
「アンタさんはええのん?」
尋ねられた方は少々面食らっているようで、顔も引き気味にこてりと首を傾げた。
「何か良くないのか?」
「良いか悪いかやあらへんのやけど、セラフィムさんにしたら仮名もろただけで《従魔》ってありえへんくない?」
「ふむ」
「「「……」」」
「いやいやいやいや、マジでいやいや! 『ふむ』やないて! 従魔やで!? アンタさん、エリィに逆らわれへんねんで!? 嫌な事でも強制的にさせられるんやで!? それって屈辱やあらへんの!?」
「地味に人の事貶してない? 私、強制なんてする気ないわよ」
誹謗中傷だわ、とむくれるエリィを通り越してアレクの視線はセラフィムに向けられたままだ。
「貴殿らの人となりはまだわからぬし、《従魔》という立場がどういう扱いなのかもわからぬが、元々旅の同行を願い出たのは俺だ。そこに何か付随条件が加わったところで大差なかろうと思うのだが、どうだろうか?」
「アンタさんが変に男前なんはようわかった。後悔はせえへんってこっちゃな」
「うむ」
放置されていたエリィがセラフィムの方へ顔を向ける。
「本気で一緒に行くつもりなの? 観光目的とかじゃないから危険な場所とかもあったりするのよ? その上セラフィム自身が言ってたけど、どういう人なのか知らないままでいいとか、正気の沙汰じゃないわよ」
アレクはセラフィムが同行することに反対していたが、エリィもあまり乗り気ではなかったようだ。
そんなエリィとアレクを見るセラフィムの鋭い金色の目が、優しげに細められた。
「そんなものは同行すれば追々知れよう。それにエリィ殿…であったか、貴殿は言っていたではないか、強制などしないと」
「そ、それはそうだけど」
エリィとアレクを見つめていた瞳に一瞬何かが滲んだように見えたが、ついと顔を背けられ目を閉じてしまわれれば、そのあとの言葉が続けられなくなった。
「俺にはもうないのだ。だから改めて願う、どうか同行を許してはくれまいか?」
「はぁ…エリィの方向性は魔法系やと思とったんやけど、どうやら帰還転生時に色々と貰うてるみたいやし、従魔になったんやったら襲われることはあらへんしな。僕はもう反対はせえへんわ」
これでもかと言わんばかりの大きな溜息とともに、アレクが半眼のまま床に降りて丸くなった。
「何でアレクが諦観の空気を醸すのよ、納得がいかないわ。それにそう、あれ何よ《エリリアード(仮)》って、そんな名称きいたことがないんだけど?」
「あ~、それな、エリスフェラード様って言うたら『違う!』言うて怒ったやん? せやけど、こっちの世界では愛称と真名が必要なんや。せやから《エリリアード(仮)》。他になんぞ希望があるんやったらそれに沿うで? 今やったら無料で変更するんも吝かやない」
足元に丸くなり、畳んだ両手の上に顔を乗せたまま、3本の尾をパタパタと返事宜しく振って応えた。
「……はぁ、色々と疲れたわね、アレクもこんなだし、今日はここで休みましょ…お腹もすいた気がするけど、食べる気力がないわ」
おやすみ~と言って、ベッドにこんもりとある毛皮を一枚とり、浄化して血の跡を消してからそれにくるまってエリィは目を閉じた。
外を満たす雨音は、いつの間にか少し激しさを増していた。
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