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魂の動揺
全てを手に入れようとして
全てを落としてきた
海の底に落としたそれは
拾おうにも沈んでいくのみ
鏡の中の一人を見つめすぎて
広い海原を忘れた
揺蕩う魂
落としたものと共に
沈んでゆく
海は広くて
あまりに広くて
自分を忘れそうになった
海は美しくて
あまりに神聖で
自分が穢れて見えた
全てを抱える海は知っていた
自分が何を大切にすべきかを知っていた
全てを生み出した海は知っていた
自分がどうあるべきかを知っていた
形の定まらない魂が
叫んでいる
私の名前を呼べと
母なる海の真ん中で
私の名前を呼んで
私の存在を示して
私の輪郭を描けよ
輪郭の定まらない
誰にも認知されない
名前のない穢れた魂が
大海原の上にひとつ
荒波に揉まれて
魚に騙されて
鳥に突かれて
揺蕩える
揺蕩えて
沈む
海の色に
染まっていく
失って
後悔して
もがいてあがいて
それでも浮くことなんてできずに
光から
海面から
遠ざかっていく
底なしの孤独を抱えて
揺蕩えている