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はじめまして、異世界人です。ー15

「ぷきゅ…ぷきゅう……っ」

「ハイハイ、泣かない。いいこいいこ、」

手足がまだ小刻みに震えている中、子竜のお守りをさせられていた。

本当に即効性が高いのか、痛み止めの市販薬よりも早く震えが治まり頭痛もだいぶマシになった。

それでもまだ身体が思うようには動かないのは、倦怠感が抜けてないからだろう。

ダルい。

今まで生きてた中で一番震えたし、一番ダルい。

それなのに子竜のお守りって。

俺が悪いとは全く思わないが、俺がぶっ倒れたから、そのまま全員がこっちに気を取られたんだろう。

いつアルベルトの膝から降りたのかは知らないけど。

彼が子竜を忘れて診察室を出たもんだから、自分でぺたぺた歩いて出てきたらしい。

多分、子竜も疲れたのかも知れない。

俺と同じくらいのタイミングで転がったか、休んでいたんだろう。

だが診察室から出てきたら、大好きなアルベルトはおらず、集まっていた人間も各自仕事したり休憩したりとそれぞれで動いていた。

ドアの前で泣き出したことでようやくヘルガが気付いたらしく、休憩してるアルベルトとダルフを起こすのもどうかと、何故か俺の所に連れてきた。

「悪いがこの子みといてくれ、」

と言い残し、一瞬で消える。

そこからベッドに座らされた子竜をなだめる羽目になった。

いや俺、今動けないんだけど。

無理矢理腕を伸ばして、床頭台にあったティッシュで鼻水拭いて、手?前足?を握って、道場に通う園児達をあやすように、握った親指でさすった。

こんな状態じゃなかったら、頭撫でたり遊んでやることも出来んだけどなぁ。

ってか、アケちゃん、どこいったんだ?

まさかユエリスについていったんじゃないよな?

多分、仕事しに戻ったんだと思うけど、邪魔しちゃダメだろ。

「ピィィ……、」

エメラルドの大きな瞳からはずっと大粒の涙がこぼれていて、ヘルガが一緒に持ってきたタオルがもう機能しなくなりそうだった。

ゆっくりしたい。

いっそ一緒に寝てた方が楽。

「ん、泣き止んだら、あいつらが戻ってくるまで抱いててやる」

「ピィィっ」

一瞬で泣き止んで嬉しそうに布団に入ってくるから、やっぱり言葉がわかるんだな。

こういうドラゴンって獣っぽいにおいで臭そうだと思ってたけど、意外にも何にも気にならなかった。

子竜の身体に沿って腕を回すとサラサラしてて、こういうマスコットに必要なもふもふがないのが残念だな。

手伝ったのに放置されるとか、不憫なやつ。

子竜は意外にちゃんと体温があって、わりと温かかった。

ちょっとデカいけど。

ベッドに対しての俺とこいつのサイズ感がおかしいのは、まあ、仕方ないか。

温かくなったからか、ちょっと眠くなってきた。

起きたらアルベルトに文句言わないとだな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あ、シルフィここにいたのか、」

ふわふわと意識が浮上していく感覚のまどろみを楽しんでいると、アルベルトの声が聞こえた。

目を開けると、青っぽい黒髪と眼が子竜と俺を覗きこんでいる。

どのくらい寝てたのかはわからないが、まあ、多分一、二時間くらいか。

ちょっとスッキリした感じもある。

相変わらず身体はダルいが、頭痛は治まったしめまいも吐き気もないし、震えも止まっていた。

身体も動く。

一日中稽古して、もう動きたくないみたいな感じ。

「あんたが忘れたんだろう、ショックで泣いてたぞ」

「あはは、ごめんごめん。まだ動物に慣れてなくてね、」

ベッドから起き上がって床頭台から眼鏡を取ろうと手を伸ばしたら、悪びれる様子もないアルベルトが取ってくれたのを受け取る。

グラスコードを首にかけて眼鏡をつけると、ようやく視界がハッキリ見えた。

アルベルトの顔がしっかり見えるようになって、さっき見た時よりも顔色が良くなっていた。

「……竜って動物なんだな、」

「動物だよ。ユリの世界は違うの、」

「竜自体が空想上の生き物だな。現実にはいない、」

「え、いないの?ここ来た時、気にしてなかったのに、」

「情報量が多いと、人間何でもよくなるもんだ、」

「アケだって、」

「あの子はあんたのキレイな顔面に全集中してたと思う」

「そ、そう……。じゃあユリの世界で竜を見たって言う人は、」

「いないな。もしいたとしたら、寝ぼけてたかヤク中か、精神疾患だろ。

ーーーあ、起きたみたいだぞ」

隣で寝ていた子竜が、布団の中でもぞもぞと動きだした。

何故か布団の中に潜っていってる。

布団ごしにお尻が揺れていて可愛いけど。

「起きたなら起きろよ、」

お尻を軽くたたくと、頭の方に戻ってくる。

「ピィィ………、ぷきゅう…」

猫の香箱座りみたいな姿勢になって、前足で目をこすっていた。

何か、目がちょっと腫れてるか。

泣いたからか。

「シルフィ、おはよう」

アルベルトが声をかけると、前足が止まって、彼の方をゆっくりと仰ぎ見る。

身体がぷるぷる震えて、また涙が溢れてきていた。

そんな生き別れた親じゃないんだから。

「ピィィィィィ!!!」

「……うっ…ごめんごめん、次は気をつけるから、」

子竜が彼に飛んで抱きついた。

タックルしてるようにしか見えない。

多分、前足か後ろ足が軽くみぞおちに入ってると思う。

「休憩はもういいのか、」

「うん、ちょっと寝たらだいぶ楽になった。この子次第で始められる」

「そうか、それは良かった。ところで、ウチの子はどのくらい時間かかる?」

「うーん、そうだなぁ……、二時間から三時間くらいかなあ?」

「そんなにかかんのか、」

「持ってかれた量が量だからね。

もし俺以外の人間だったら、今も寝込んでるだろうし、何日かかっても終わらないよ、」

「………、」

ちょっと、何言ってるか、わかんない。

そんな終わらないもんを二、三時間で終わらせるって、絶対魔王じゃん。

りんもその魔王の魔力奪うって、わけわからん。

とりあえず魔王に任せるしかないんだけど。

「ウチの子をよろしく、」

「任せて。悪いようにはしないから、」

魔王がとりあえず味方なら何とかなるか、なんて思いながら、床頭台に置いてある水に手を伸ばした。

緊張感が抜けないままだが、喉が渇いてた事に気付いた。

「ピィィっ」

アルベルトに抱っこされてた子竜が、俺の水を見て鳴いた。

「そいつも喉渇いたんじゃないのか、」

「水竜って、何の水でもイイのかな、」

「俺が知るかよ。これ見て鳴いたんだから、これでイイんじゃないか。嫌なら吐き出すだろ、」

「ピィィ!!」

子竜が光った。

「ーーー!!!」

アルベルトの頭上に大量の水が落ちてきた。

美味しそうにそれを飲む子竜と、全身ずぶ濡れて硬直している彼と、俺も跳ね返った水で半分濡れた。

「………シルフィ……、」

「また濡れんのかよ……、」

今日はホントに、水難の相でも出てんのか。

子竜はこっちの事情知らずで、喉を鳴らして嬉しそうに飲んでいる。

服が張り付いて濡れたまま下に肌引っ張られてるみたいで、気持ち悪い。

周りに水が広がってないのは、アルベルトが魔法を使ったのかも知れない。

魔法凄いな。

「うわっっっ何でお前ら水浴びしてんの!!?」

ダルフがパーティションから顔を出した。

こっちが知りたい。


私情ですが、引っ越しをすることになりまして、準備でバタバタしてます。

更新がもっと遅くなるかも知れないですが、一応少しずつ進めてますので、よろしくお願いします。

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