第9話 ずっと前の物語
普段より少し短い文量です。
徐々にリネアの過去を描いていこうと思います。
―暖かい夢を見た。
『暖かいねぇ』
赤茶髪の青年と肩を並べて座る。
私は、隣を見て語り掛ける。
『この旅も長いけど、夜の寒さは慣れそうにないなぁ』
『安心して、僕がいつでも温めるから』
冗談めかして青年が言う。その笑顔は暖かい炎に照らされていた。
『・・・そろそろ、旅も終盤だ。寂しい、ね』
表情を悟られないように、膝に顔をうずめた。
『リ■■。全てが終わったら、何したい?』
『・・・ずっと4人で旅してたい』
思わず、声が震えてしまった。
『終わりたくないよ・・・』
『・・っ。ねぇ、■■ア。あのさ、』
顔を赤くした青年が、意を決したように姿勢を正す。
『この旅が終わって・・・君が無事だったら、伝えたいことがあるんだ』
―今度は、苦しい。
『おい!!止まれ。降りて来い』
息を切らした銀髪の青年が、鬼の形相で睨みつけてくる。
『飛んできた私にもう追いつくなんて・・・』
私は高い位置から、青年を見下ろしていた。
『冗談はいいからこっち来いよ』
『・・・嫌』
『お前一人じゃ無理だ。・・・死ぬぞ』
青年は脅しているつもりだったが、逆効果だった。
『いいよ。それで3人が助かるなら後悔は、ない』
既に闇は街を覆いつくしている。
時間がない。
手遅れになるタイムリミットは刻一刻と近づいている。
『―許さないからな』
ぞっとする。表情の抜け落ちた顔で青年は言った。
『いいか、■ネ■。いつか絶対にお前を見つけてやる。俺は・・・、ずっと、お前が―』
今その先を聞いたら後悔する。私は、彼に被せるようにして叫んだ。
『じゃあ、約束!もし、来世で―』
**
「・・・っ!」
思わず飛び起きた。徐々に夢が鮮明になってきている。映像を見ている感覚から、自分が夢の主のような感覚に変化しているのだ。
「あとちょっと・・・」
完全に思い出すには、決定的な何かが必要だ。もやもやとした感情が渦巻いている。
「何が足りないの・・・」
まだ・・・、今の私が忘れている感情と記憶がある。
***
夏季休暇が終わり、ふとした瞬間に寒さを感じる季節になった。
この時期は、毎年とある行事が行われる。
「強化合宿だって!」
「そうだよ。えっと、【文化祭に向けて魔法の練度を高める目的】があるらしい。あと・・・、【生徒同士の親睦を深める目的】だって」
と、バーンは資料のある一点を指さす。
「バーン、楽しみだね!」
夏季休暇中、彼はずっと傍で宿題を手伝ってくれた。いつまでたっても頭が上がらない。
「この合宿でも負けないぞ!」
ほのぼのとした空気を裂く声が鼓膜を揺らす。
「ジェット、合宿くらい楽しんでみたらどうかな?ずっと気を張っていたらリーも疲れちゃうし」
「うんうん」
私はバーンの言葉に大げさに頷く。ふむ、とジェットが少し黙った。
「・・・それもそうだな。じゃあ、リネア、合宿は楽しむぞ!」
「その言葉、覚えておいてね!」
私は、【肝試し】や【キャンプファイヤー】の文字を見てウキウキしていた。
同じ世代の友人と何かを成し遂げる、その事実が何故か猛烈に嬉しかった。
**
―夢だ。夢であって欲しい。辛い、苦しい。
『出ていけ!』
石を投げつけられる。辺りは草木がなぎ倒されていた。周囲は人、人、人。
『お、お前のせいだろ!これじゃ農作物が全滅だ!クソ!!』
『ち、違う・・・』
頭から血が流れる。痛い。
『とぼけるな。お前ならこの村に報復するのは簡単なんだろ?』
『そんなことしない!』
私は必死に叫ぶ。
怒りで魔力が暴走した。
後悔する間もなく、周囲にゴウっと突風が吹き荒れる。
『ば、ばけもの・・・』『こっちくるな!』
怒りが恐怖に変わり、人々が逃げ出していく。
幼い子供は親に手を引かれ、こちらを怯えた目で見て、そして去っていく。
『うっ、ひぐっ』
鉄の匂いがこびりついて離れない。
私は両手で涙を拭いながら、住まいに帰る。
孤独な私を迎えてくれる人なんて、誰もいないけれど。
―頭の血を流してくれるのは、空から降り注ぐ雨だけだった。
閲覧ありがとうございました!
次話も楽しみに待っていただけると幸いです。




