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私が約束を果たすまで  作者: Neko
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第4話 デジャヴ

少しでも楽しんでいただけると幸いです!




「まりょくさい・・・?」

手元の資料を眺めながら、初めて見る単語を復唱する。


「そうだよ。魔力を持つ僕らが、魔法を使って決められた種目をこなすんだ」

「私達、入学して間もないよね?大丈夫かな・・・」


日頃授業を受けているとはいえ、人前で見せられるような魔法はまだ習っていない。恥をかくのでは、と不安を感じた。


「準備期間は十分にあるし、各々種目も決められているから平気だよ。僕もリーを手伝うし」

「ありがとう・・・!」


何とバーンは火の扱いがクラスで一番上手だった。その上、細かな魔力操作が群を抜いて上手く、大雑把な技しか出来ないリネアの師匠である。


「それで、種目がこれね」

「そう。僕とリネアとバレッタさん、それにクラウス。4人で【玉運び】だ」

「ただ運ぶだけじゃないっぽいね」

資料に書いてある、【魔法での妨害可】の文字を見て嘆く。

「だね」

「よし!今日から特訓しよう!バーン付き合って」

「うん。・・・他の二人はどうする?」

「チーム戦だし、一応誘おっか。私がバレッタさんを誘うから、バーンはクラウスをお願い」


そう言うや否や、席を立つ。思い立ったが吉日、当日恥をかかないために練習開始だ。


**


「待って、バレッタさんって・・・誰?」

クラスメイトのはずだけれど、全く分からない。

「うーん・・・。あ、ジェット!」

数人で談笑しているジェットに声を掛けた。


「なんだ」

「話の途中でごめんね、バレッタさんってどこかな?」

「お前、クラスメイトの名前も知らないのか」

「違う、場所を聞いているだけ」


ジェットにだけはバレたくない。私がクラスメイトの顔も覚えていないことを知ったら、きっと嬉々としてマウントを取るから。


「本当か?」

「いいから、知ってるの?」

「・・・ふっ、お前の横にいるじゃないか」


憐れみを含んだその言葉を聞いて、反射的に横を見る。・・・誰かがいた。いつの間に私の傍に立っていたのだろう。


「初めまして、リネアさん。私、バレッタです。お会いするのは『初めて』かしら」

その声には聞き覚えがあった。


「あ、あの時の!」


クラウスの牽制をしてきた彼女だ。あの時と変わらない妙な威圧感は、彼女の個性らしい。今でも謎の圧を感じる。・・・この圧は、名前を憶えていなかったことに対する怒りではないと信じたい。


「お前、クラスメイトも覚えてないのか?たかが数十人覚えられないなんてまずいんじゃないか?」

「ぐっ、これから覚えるからいいの!じゃ、ありがとう。私はバレッタさんに用があるから」

バレッタさんと共に教室を出る。バーンとは運動場で待ち合わせている。


外通路を歩きながら、バレッタさんと会話を続ける。


「魔力祭の話でしょう?」

「そうです。これってチームでやる競技だから、練習を開始したくて」

「・・・ねぇ」

「何ですか?」

「あの、きょ、協力とかってしてもらえるの?」

「もちろん、4人チームですし」

「違くって、私とクラウス様の仲を取り持ってくれるのか聞いてるのよ」


少々顔を赤に染めたバレッタさんが、怒ったように言った。


「わぁ」

「・・・何よ」

「いえ、青春って感じで嬉しかっただけです」


恋バナ、というやつだ。私に彼女の恋路を任されている重大局面。


「私でよければ、協力しますよ!」

「ありがと。私のことはバレッタと呼びなさい。これからは仲間よ」


初めての女子友達。そして頼られた喜びから、私は重大な任務を請け負った。恋のキューピット役だ。


***


青々とした自然の芝の上で、話し合いが行われた。クラウスも素直に来てくれたようだ。

「じゃあ、早速作戦を決めようと思うんだけど・・・。まずは全員の得意魔法を聞いておこうかな。私は風、バーンは火、クラウスは氷。バレッタは?」

「私は土ね」

「なるほど・・・」

「他のクラスの人から聞いたんだけど、これって進行役と妨害役に別れるのがセオリーみたいだよ」

「へぇー」

「玉っていっても、一人で運べる水晶を、決まった位置に収める競技なんだって。二人で水晶を運んで、残りの二人で敵から守ったり妨害したりする」

バーンの話を聞き終えたバレッタがさっと手を挙げた。

「じゃあ、私は妨害役ね。地面を操作して邪魔するわ」

「僕も妨害役かな。火で二人を守れるし、敵の妨害も焼き尽くせる」

二人共、もう魔法の具体的なイメージが付いているのだと知り私は感心した。この学校は尊敬できる人ばかりだ。

「じゃあ、私とクラウスで水晶運びね。その前に、・・・私は魔力操作が苦手だから、少しバーンと特訓しても良い?」

ばちん、とバレッタに向けてウインクを放つ。その視線の意図を理解した彼女は、僅かに顔を輝かせていた。

「じゃあ、私はクラウス様と作戦を考えておくわ」


恋のキューピットとしての初任務、達成だ。


***


夢を見た。


『様子を見てくる!』

『待て、■■■。お前一人で対処できなかったらどうする。俺も付いていく』

『大丈夫!』


二人目の言葉を無視した人物は、空高く舞い上がる。

その視線は、禍々しいオーラを放つ神殿を捉えていた。

空を見上げ、三人目が言った。その声は、怒気を含んでいる。


『■■■、落ち着こう?本来、これは一人でする役目じゃないことは分かっているはずだ』

神殿から放たれる力は、徐々に周囲を黒に染め上げていく。時間は残されていない。

『・・・ごめん』


宙に浮いていた人物が、神殿に向かうべく高度を上げた。

焦燥感からだろうか、誰の声も聞こえていない。


『おい!!』


二人目が、空に浮かぶ人物を引きずり降ろさんと足元に氷柱を作る。

当たりの温度が一気に下降した。

伸ばしたその手は、―届かない。

伸ばされた手を意図的に無視した人影が、徐々に小さくなっていく。


『くそ!』


三人目がやるせない怒りを地面にぶつける。

二人目は、すでに神殿に向かって走り出していた。


閲覧ありがとうございました!

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