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私が約束を果たすまで  作者: Neko
3/18

第3話 流星

今回のテーマは流星群なので、色鮮やかな星々を想像しながら読んでもらえると嬉しいです!


ある日の夜、

一人で寮の周りを歩いていた。村で見た空と同じ空を見上げる。

まだ夏前、夜は少し肌寒い。

「クラウス、クラウス・・・」

目下の悩みの名前を唱える。どこかで聞いたことあるような、無いような。高名な貴族らしいから、村のどこかで聞いたことがあるのかもしれない。

「おい」

「ひっ」

どこかから呼ばれた。この時間なら人はいないと思い込んでいたので驚いた。

・・・よく見ると、ちらほら人が外に出ていた。皆、夜の散歩好きだとは。

「おい、お前だよ。・・・リネア」

ベンチに人影が見える。その人物が私を呼んだらしい。

「あ」

悩みの種がいた。

(どうしよう。明らかに名前を呼ばれたけど、気まずいことこの上ないよ)

逡巡していると、彼が再び声を発する。

「座れよ」

「はい・・・」

「ビクビクするのやめてくんない?他の奴らには普通にしているだろ」

「まぁ・・・」

「・・・俺の名前分かる?」

「クラウス、さん」

これで間違えたら首が飛ぶ、くらいの緊張感だ。

「呼び捨てでいい」

「いや、そんな恐れ多いです」

「・・・あいつはいいのかよ?お前のライバル」

「ジェットはいいんですよ。むしろ、さん付けした方が調子乗りそう」

その時の彼の反応を予想して、ふと笑みが零れる。

「・・・」

「・・・」

「何で俺は駄目なんだ?」

「それは・・。クラウスさんが私を避けてるっていうか、嫌い?・・・ですよね?あんまり親しい呼び方するのは良くないかと思って」

この際、気持ちをぶつけてしまおう。このままずっとクラウスさんを気にしていたら、バラ色の学園生活も送れない。それに、同じクラスの彼に怯える生活なんて耐えられそうにない。

「嫌ってない」

「え?」

突然早口の小さな声で言われ、聞き取れなかった。

「別にお前を嫌ってない」

だから、と彼は俯いて言う。

「呼び捨てで呼んでくれ。・・・それにいちいち怯えるな」

「わ、わかりました」

ドギマギしていると、色とりどりの流れ星が多数落ちるのが見えた。赤、黄、青、白、緑。

「あ、流れ星」

「・・・知ってるか?あの流れ星、300年に一度しかない流星群なんだ」

夜だというのに外出する人が多い理由が分かった。

「へぇー。レアなんですね」

「あぁ。俺にとって大切な星だ」

「300年前の人は、どんな気持ちでこの流星群を見た―」


横にいるクラウスに顔を向けた私は、思わず口を噤んだ。

だって、目の前の彼が凄く切ない表情をして・・・こちらを見ていたから。


「ど、うしたんですか」

思わず声を掛けてると、彼ははっとして顔を背けた。

「何でもない。・・・あと、敬語も止めろ」

「はい。・・・あ、うん!」

嫌われてはいないようで良かった。謎に仲良くなってしまったし、今日はいい日かもしれない。

「そういえば。クラウス、はどうして私の名前を知っていたの?」

初対面の時、いきなり私の名前を確認してきたのだ。ふと疑問に思った。

「どうしてだろうな」

「え、はぐらかされた?」

「どうでもいいだろ」

どうでも良くはないのだけれど、身に覚えのない悪評が轟いていた訳ではないので胸を撫でおろす。


二人無言で空を眺めていると、びゅうっと風が吹いた。

「さむい」

流石にまだ風が冷たかった。身を守るように、両手で肩を抱く。

「・・・大丈夫か?」

クラウスが、手元で炎を灯す。私は、揺らめく炎を瞳に写しながら感謝を告げた。

「ありがとう。クラウスは火の魔法も得意なん―」


違和感。強烈なデジャブが私を襲う。



『■■■■!火つけて!魚採ってきたよ』

『自分でも出来るだろ』

『出力間違えて大惨事にして以来、■■■に禁止されてるの』

『はっ。修行しろ』



「・・・!」

この光景を、私は、知っている。

「まだ寒いか?」

「ごめん、ちょっと考え事してたみたい。火、ありがとう」

「お前―」

クラウスが何かを言いかけた。

が、


「・・・リネア」


威圧を感じる、とある人の声によって遮られる。

「バーン!」

「寒いでしょ。上着持ってきたから、もう戻るよ」

「え、でも」

「いいから」

そう言って、バーンは半ば強制的に私を立たせる。

「クラウス!流星群見れて、楽しかった」

ズルズルと片腕を引きずられるように歩きながら、ベンチに座る彼に言葉を残す。

「またな」

そう言って彼が小さく手を振る。

「うん!」

私も自由な方の手で、ブンブンと手を振り返す。クラウスのことを誤解していたみたいだ。おそらく、彼の私に対する誤解?も解けたと信じたい。これからのクラウス対して、自然体の私で接することが出来ると思った。


「リネア。どうしてクラウスに関わってるの・・・っていうか、呼び方も―」

「そんなに悪い人じゃないよ」

バーンはクラウスのことになると怖くなる。「リー」と呼ばない時の彼は、大抵機嫌が悪いのだ。

「・・・君にとってはね」

ぼそっと吐かれたバーンの言葉は聞き取れなかった。

「バーン?怖いよ。いつもそんな感じじゃないのに。もしかして機嫌悪い?」

「うん。特に、流星群の日は」

「そうなんだ・・・」

気を付けようと思ったが、次の流星群は300年後の話だ。

「じゃあ、空の星も嫌い?」

「え?」

「流星群が嫌いってことは、空に関する話題も避けた方がいい?」

「ははっ。ごめん、そういう意味じゃないよ。今日の流星群に良い思い出がないってだけで、普通に星は好きだ」

「ちょっと・・・。あの流星群は300年に一度だよ?バーンも初めて見るじゃん。いくら私でも騙せないから」

「あはは、そうだったね」

私の発言のどこが良かったのか分からないが、バーンの機嫌は戻ったようだった。



閲覧ありがとうございました!

次話を楽しみにしていただけると幸いです。

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