第15話 バーンの追憶
過去のバーン視点で物語が進みます。
またもや少ない分量です・・・。申し訳ありません。
―かつて、想い人と親友を同時に失った記憶を思い出す。
『なんだよ、これ・・・』
リネアとクラウスを追いかけて辿り着いた神殿は、すでに凍りついていた。
『嘘だろ』
闇の魔力の気配は無い。・・・風も氷も感じない。
『入るわよ』
カーラの静かな声に冷静さを取り戻す。彼女も辺りの異常さに警戒しているようだ。
靴音を響かせ、神殿の奥深くに進む。どんどん寒くなっていく。氷に僕らの姿が鈍く反射している。最下層に辿り着いた。
そこには―、
『っ!』
座り込んだクラウスが凍っていた。
『おい!』
ガンガンと叩くも壊れそうにない。その上、特殊な魔力で僕の炎が効かない。異常な冷たさに背筋が凍る。
『・・・何でよ』
カーラが絶望したように呟き、その場に座り込む。
『どうしてこうなるの?二人が居なくなるなら、私一人で良かったじゃない!』
『リネアは!?』
神殿の中央には何もない。いや、何かがキラリと輝いた。せめて姿さえあれば―、
『これって・・・』
星形の透明な石、いや、氷だ。
『リネアのものよ。クラウスが作ったの』
『じゃあ、この氷は全部・・・』
途方もない大きさの氷だ。全て、溶けない氷。
『そう、クラウス。あいつ・・・自分の生命を全部使ってるわ』
『リネアはどこだ?』
『多分、消えた。闇の魔力と共に自分を消したのね』
『・・・は?』
理解が追い付かない。じゃあ、何故クラウスは凍っている?
『・・・バーン、ここを出なさい』
瞳から光を失ったカーラが立ち上がる。
『私は人間をやめる。3人の魂を転生させるわ』
『僕らを?』
『このままじゃ私が嫌なの。私の旅に皆を巻き込んでしまった・・・』
既に彼女の桃色の髪が透けている。
『ほら、行きなさい』
神殿の主となったカーラは、柔らかくほほ笑んだ。
『私はいつまでもここにいるから』
―生まれ変わるたびに、文明が栄えていく。いつの時代もカーラは一人で神殿にいた。
『リネアはまだなの?』
『・・・そうね。死ぬときに諦めの感情を抱いていたみたい。クラウスと貴方は、この世に強烈な未練を残してるから無事だけど』
『クラウスもこの世界に?』
『あら、とっくに出会ってると思ってたけど。たまに訪れるわよ』
―それから何回目の人生だろうか。クラウスに会った。
『クラウス!』
その時、彼は有名な一座の主役で簡単に見つけられた。
『・・・バーン』
『リネアに会った?』
『いや、まだ』
『君とリネアに何があったのか聞いてもいい?』
そして、彼から一部始終を聞いた。僕は怒りが抑えらえずに・・・、初めて親友を殴った。
『お前しか!彼女を助けられなかったんじゃないか!』
その言葉を吐いて以来、クラウスとは会うことはなかった。
**
だが今、彼と出会って確信する。
クラウスはリネアを諦めてなんかなかった。僕と同じように彼女を探していたんだ。
気の遠くなるような300年間をずっと耐えていたんだ。
閲覧ありがとうございました!
次話は、現代視点に戻ります。




