第12話 進展
普段より少し文字数が少ないです・・・。
少しでも楽しんでいただけると幸いです!
・・・どうやら、廃墟で眠っていたようだ。かつての私の住処。そして出会いの場。
「ぅうん・・・」
徐々に意識が覚醒する。どうやら誰かの肩に身を預けて寝ていたらしい。
「起きたか」
「・・・クラウス」
「こんなところで寝てたら危ないだろ」
「あ、うん」
「流石に、昔のことを思い出したか?」
彼が不安な顔をして言う。この場は、私の辛い記憶が植え付けられている場でもあるから気を遣ってくれているのだろう。
「うん。でも辛くないよ。だって、ここは皆に会った場所だから」
「なら良かった」
ほっとしたように彼が笑う。その顔は、私が怪我をしたときに見せた初めての笑顔とそっくりだった。
「でも、あと一つだけ、思い出せない」
そう、私の最期。あと一ピースの記憶の欠片が見つけられないのだ。
「ふん、その記憶が一番大切なんだけどな」
鼻で笑いため息をつかれる。
「まぁいい。気長に待つさ」
と、おもむろに髪をすかれる。クラウスが、私の緑の髪を指の間で大事そうに弄んでいる。
「なに、してるの」
謎に胸が高鳴って、声が詰まった。耳が赤くなっているかも。
「これくらいはいいだろ」
クラウスの基準が分からないけど、今すぐやめて欲しい。恥ずかしくて俯く。
「・・・早く思い出せよ」
つぶやかれた彼の言葉は、ドギマギした私には届いていなかった。
***
合宿が終わり、文化祭の準備期間に突入した。
私達は【国の聖女伝説】という劇をすることになった。
「張り切るぞー!」
風魔法を使って演出の役割を任された私は、気合十分だ。
【国の聖女伝説】は今も昔も馴染みある物語だ。その伝説を断ち切るために、私達4人は旅をしていたのだから。
【~闇を封印するため、国の聖女はその命を捧げる。聖女の力は受け継がれ、封印を鎮めた聖女は伝説となる~】
これが残された言い伝えだ。だが、その伝説はカーラの世代で打ち砕かれた・・・はず。
「ん?」
何か引っかかる。
「カーラの代で打ち砕かれたなら、平和に終わったはずだよね?じゃあ、なんで神殿を氷が―」
「リネアさーん!」
クラスメイトの声ではっとする。今の私は、風の演出家だ。とにかく劇の成功に尽くそう。
準備の休憩時間。私は教室で製作途中の舞台を見上げ、雑談を楽しんでいた。
「にしてもバレッタが聖女役か。楽しみ」
「・・・初めはリネアがやるはずだったのに。バーンに邪魔されたわ」
「私もバレッタの方が適任だと思うよ」
バレッタの持つ気高さは、周囲の人間をはっとさせるのだ。
「練習頑張ろうね」
「えぇ」
「リー?ちょっといい?」
廊下から私を呼ぶ声が聞こえた。魔力操作が抜きんでたバーンは、私と同じ演出だ。
「いいよー」
バレッタに断りを入れ、バーンの元へ急ぐ。
「ここで僕が火を使うから、リーとジェットはここで熱風を押さえて欲しい」
「了解!」「承知した」
ジェットと並んでバーンの指示を頭に入れる。と、ふいに教室が騒がしくなった。
「どうしたのかな」
背の高いジェットが教室の中を覗いた。
「クラウスが衣装合わせをしたみたいだな!相変わらず凄い人気だ」
「確か、聖女を守る騎士役だっけ?」
「うん。伝説とは違うけど、毎年騎士役はいるみたいだね」
「へぇ・・・」
聖女のバレッタと、騎士のクラウス。お似合いだと思うけれど、彼女はもうクラウスに興味ないと言っていた。良かった。・・・良かった?
「で、ここでジェットが―」
バーンの解説が始まる。バーンの声と並行して、「かっこいい」「まるで本物みたい」というクラスメイトの声が耳に入ってくる。ちょっと気になり、そわそわしていると、
「リネア、集中して」
気の乱れがバレていたようだ。バーンから叱責をされた。あまりにも真剣な表情に気圧される。
「ご、ごめん」
彼も演出を成功させたいのだろう。私も真剣に話を聞かなければ。
閲覧ありがとうございました!
次話も楽しみにしていただけると嬉しいです。




