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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ 敗者復活戦first【04】



 街から離れた場所にて――


「グロいなぁ……」


 スーツ姿の女性が呟く。


 林の中。いくつもの「立入禁止」と黒字で書かれた黄色いテープを張り巡らせて人々の侵入を拒む。そのテープに囲まれた中で女性は立っていた。

 人々――、と言っても全員ではない。当然だが()()()()()()()()()()()()()()()()たちの侵入は許している。

 何人ものの人々がテープ内の林の中を注意深く歩き回る。

 決して見落とさないように。汚してはならないものを避けながら。

 では、この人々は何者か。それは近くに停められている黒と白の車によってはっきりと分かるであろう。

 黒と白の車――パトカーと普段見かけることは無いであろう警察の車合わせて数台がこの場が〝どんな場所であるか〟を物語っていた。


 女性の近くにはブルーシートが広がっている。


 その下には――まだ「女性」と呼ぶには幼すぎる、

 『少女』の、〝死体〟が――……


「親よりも先に死ぬなんて……」

「警部」


 きっとブルーシートの下で眠る少女の親は自分とは年齢が変わらないのではないだろうか。そんな想いで呟いていると後ろから自分の『階級』を表す声が聞えてきた。


「どう、(けい)? 凶器とか落ちていた?」

「いえ。まだそれらしきものは……」


 声の方へと振り返ると女性の部下に当たる同じくスーツ姿の若い男性が一人。暑い気温の中でそのような格好である為に彼の額には汗が大玉で浮かび上がっていた。

 それでも、彼のやや猫目の黒い瞳には疲れが見えない。


(さすが、私が見込んだ男だ)


 自分の部下――形原 景(かたはらけい)を心の内で褒めながら、再びブルーシートへと視線を向ける。


「何度見ても慣れる気がしません」


 景もまた悲しき表情でブルーシートを眺める。


「慣れなくていいのさ。慣れてしまったら、『死』を軽く見てしまうことと同じじゃないか」

「そう、ですね……、水津地警部」

 

 彼のも気持ちは間違ってはいない。

 母親のような気持ちで景に接する女性――水津地翔子(みづちしょうこ)は少女の死を悲しむその背中を叩いて自分より上にあるその顔を上げさせる。


「この子の為にも。この子の親御さんの為にも。私たちは必ず犯人を捕まえなきゃいけないんだ」

「――はい」


 その『正義』の心を忘れるな。

 もう一度広いけれども若い――大人だけど自分からしたらまだ子どもである背中を叩き、悪を許さない心を奮い立たせる。

 それが年長者ができること。彼よりも大人の自分ができること。


「ところで、華花菜は?」


 部下の背筋を直し、続けて視線を動かしながら「華花菜」という人物を探し始める。その言葉に景は「あぁ、あいつなら……」と林を囲むテープから抜けた道路へと視線を向けた。


「景~。先輩と後輩は常に一緒にいるものじゃないか」

「いやぁあいつがあそこにいることに拘ってたので、なんかあるのかと……」


 そういいながら視線を逸らす景に「情けない」と短く溜息を溢す。


「惚れてるからって、公私はちゃんと分けないと駄目じゃないか」

「ほほほほ惚れてるって、まままま毎回、何いってるんでしゅか!!!」

「その慌てようと噛みようで誰も気づかないと思っているのかい? 君たちの関係はもはや捜査一課の酒の肴になっているよ」

「えぇ!?」


 本気で気付いていなかったようで顔を真っ赤にしてテンパり始める景。そんな面白い部下をその場に放置して歩き出した。

 向かう先は先ほど自分が口にした名の人物のところ。テープを潜り抜けて道路へと出る。すると、先ほどまで木々が遮っていた日の光が自分へと降り注ぐ。

 暑い――と心の中で愚痴りながら道路に立つお目当ての人物への方へと向かっていく。


 背筋を伸ばして凛として立ち、きっちりレディーススーツを着こなす。

 その姿は毅然としていて、若いながらも見るもの全員を委縮させてしまいそうだ。

 顔立ちについては――きっと彼女への第一印象を位置づけるであろう。

 勝気な女性と例えられる目つきで絶対に不義を許さないと訴えているように見える。

 強くて美しい――まるで彼女を見ていると『華』を思い出させる。

 名前は、飛田華花菜(ひだかかな)

 そう、朋音の親友だ。

 そして同時に新米刑事でありながら誰もが認める優秀な推理力を持つ人物でもある。


「華花菜ぁ~」


 だが、しかし。誰もが認める優秀者でも新米は新米だ。

 振り返った華花菜は警部を見つけると「しまった」という顔で言い訳もすることなくその場で頭を下げた。


「申し訳ありません」

「なんで謝らなければいけないか……分かっているかい?」

「新米でありながら自分勝手な行動をしてしまいました」

「宜しい。全く景が甘いからって新米で後輩なんだ。先輩と一緒に行動するように」


 その景が頼りない時もあるがそこらへんは臨機応変に、と。下げ続ける華花菜の頭を軽く叩いて説教を終了させる。


(まぁ、私もこの子には甘いんだけどね)


 何の運命か。叩かれたところに手を当てている華花菜――と彼女の片割れである兄。この二人と警部――正確には警部の父と大きな関わりを持っていた。

 それは華花菜に『警察』という将来を選択させるほどの大きな関わりを、だ。


『華花菜をよろしくお願いします』


 彼女の片割れ。華花菜をそのまま男性にした顔が先程の彼女と同じく自分へと頭を下げてきた時を思い出す。


「警部?」


 いつの間にか自分の世界に入り込んでいたらしい。華花菜の呼ぶ声で意識を目の前へと戻した。――しかし、一瞬だけ思い出していた『彼の顔』と華花菜の顔が重なる。


「あはは。やっぱり似ているね」

「はい?」

「いや、こっちの話さ」

「警部」


 そこへ先ほど放置していた景が二人の元に駆け寄ってきた。


「何だい?」

「凶器らしきものが発見されました」


 その言葉に警部だけではなく華花菜も素早く反応した。

 凶器――この事件を紐解く大切なパーツの一つ。


「すぐに見せてください」


 警部の口調が変わった。


 警部と景が再び林の中へと消えていく中。華花菜は少しだけその場に立っていた。その視線は事件現場の林――ではなく、自分たちが住む街へと向けられる。

 日本の首都には到底及ばないがそれでも大きな街な町であることは変わらない。多くの人々によって賑わう街を見つめ、華花菜はすれ違っても聞き取れない声で呟いた。


()()()……偶然よね?」



登場人物


すみません。第一巻に登場していたのに書いていなかったですね……


●水津地翔子……

華花菜の上司。階級は警部。

時に母親のように華花菜と景に接している。華花菜の尊敬する人。


●形原 景

華花菜の先輩。階級は巡査。

頼りなさそうに見えて実は頼りになる。華花菜に片思い中。

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