表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
59/63

神と罪のカルマ 敗者復活戦first【02】


「料理長も食べてくださいよ!」

「当たり前じゃないか~」

「でも、こうも(から)いと食べ切れる自信がありませんわ」

「まだまだあるもんねー。なんか(から)さだけでお腹いっぱい」


 (から)い食べ物のメリットとして食欲増進という効果があるはずなのに全く役目をはたしていないという状況。改めて寸胴の中身を確認してみるが、皿に盛った分は減っているもののまだまだ赤々としたものが大量に残っている。

 しかも(から)さによって舌がやられるだけでなく体力ももっていかれた。休憩時間のはずがカレーによって更なる疲労が加算されてしまったというわけだ。

 一体彼らが何をしたというのだ……


「どうした、お前たち。うるさいぞ」


 若者たちの絶望と悲しみに包まれる休憩室。そんな暗い雰囲気の世界にアルトボイスが声をかけてきた。


「あぁ……店長~」


 アルトボイスの正体である店長――次屋沙季(つぎやさき)は休憩室に集まる若者たちの顔をぐるりっと見て呆れたように溜息を吐いた。


「〝 静かで居心地の良い料理店〟をモットーなのに、お前たちがうるさくてどうする」

「「「「「…………」」」」」


 先月発狂したあんたが言うか――とは言ってはいけない。店長の拳は強いためで言ってはいけない。


「え~と……店長ー。いまはお客様いませんし大丈夫ですよ」

「そういう問題じゃ無いだろう。まったく……。で、何やっているんだ?」

「このカレーどうしようかって考えていたとこッス」


 頭を描きながら呆れた表情で騒ぎの発端を聞く店長に仁樹は原因である寸胴を指差した。


「カレーをか? 皆で食べればいいじゃないか?」

「辛過ぎてムリなんスよ」

「そんなにか?」


 仁樹の言葉に店長は首を傾げ、近くにあった味見用の小皿にカレーを淹れて口に流す。


「………少々辛いが、若いから大丈夫だろう」

「だからなんで『若い』と大丈夫なんだよ!! つーか、『少々』じゃねぇし!!」


 雅晴のツッコミが再び炸裂。しかも内容がプラスされているときた。


「あ゛ー!! お袋はこーだし、親父はあーだし!! なんでこの店経営していけてんだぁ!?」

「その親父とお袋が天才だからだ」

「そうなんスよねェ。そしてその天才に振り回されるのが俺らなんですよねェ……」


 彼ら二人が天才である証拠がこのグーテンタークだ。

 マイペース過ぎる料理長に厳しそうに見えてしまう店長。だが、隠された本性は大胆不敵な性格。

 そうでなければ『天才』とは呼ばれないのであろう。


「まぁ没にするにしても捨てる選択肢はないからな」

「んなもん、わかってるよ」

「でも、今日一日で食べれませーん」

「カレーだから日持ちがよいのではありませんか?」

「そうだが、寸胴ってこともあって場所をとられちまう」

「お袋が全部食ってくれよぉ」

「一人で食べられるか、阿呆」

「なら、皆さんで持ち帰りませんか?」


 全員が悩む中、一人手を挙げて提案する和成。


「ほら、皆さんが持ってくるタッパに入れましょうよ。そして、各自家で甘いものを入れて食べれば……」

「そうだね。それがいい!」

「寸胴も洗えるし、俺としても料理の宿題となっていいかもな」

「それに皆様の夕食にもなりますわ」

からいけど、しゃーねーか」


 グーテンタークでは担当関係なく料理の研究をしていて、自宅で調理したものを食品用タッパにいれて店に持ってきては食べて貰い感想を貰うという仕組みがあるのだ。

 そのため、調理場には各々の食品用タッパが置かれている。


「……あれ?」


 意見も一致して全員が調理場に向かう中。一人椅子からゆっくりと腰を上げようとした時、ふっ、と仁樹は思い出した。


「俺が最後に持ってきたのって………!!」


 思い出してからの行動は早い。すぐに足を蹴って厨房へと走り出す。

 ゆっくりしていたのが不覚。既に若者たちは厨房の内にて各々の食品用タッパが置かれている場所に立っていた。


「おっ!! 仁樹のタッパでけぇじゃん!!」

「畜生、遅かったァ!!」


 仁樹が持ってきたパックは既に雅晴の手の中にあった。


「なんだ、仁樹。そんなに喰いてぇのかよ」

「全くもって思ってねェスよ」


 前回作成して持ってきた山葵風味の海鮮パスタを入れてきた食品用タッパ。アドバイスや駄目出しを貰った後に何か持ち帰るときの為に、と置いといていたものだ。しかも他のよりも一回り近く大きい。大量に作って盛ってきたのが仇となったのだ。


「コレにギリギリまで入れれば俺達の配分減るぞ!!」

「させるか……!!」


 何が何でも危機から逃れなければならない。料理長には悪いが、あの激辛カレーを夕飯に大量に食べるのだけは勘弁したい。

 余談だが、ここで自宅でこっそり捨てるという考えをしないところはグーテンターク従業員のいいところ。

 手を伸ばして何とか雅晴からタッパを奪い捕ろうとする――が、そんなことは誰だって気付くものなので。雅晴は素早く仁樹の後ろへとタッパを投げられた。


「あッ!?」

「キャッチー!!」


 投げられた先には華麗にタッパを手に取る美佳。そして、そのまま寸胴が置かれている休憩室目指して厨房を飛び出ていった。


(しまった――!)


 だが、しかし。目的地はわかっているのだ。

 仁樹は足を急回転させて入り口に方向転換。自分の口を守るために休憩室を目指す。


「美佳先輩ストップ!!」

「するわけないじゃん!!」

「してください!!」


 仁樹の願いを聞き入れる気など全くない。

 かくなる上は力尽くでも――、と踏み出そうとしたが。その動きは何者かに動きを止められたのだ。

 ……いや。何者かではない。止める者など分かっている。


「先輩、離れて下さい!! おい、和成!! お前も離れろ!!」

「悪ぃな。お前を押さえてないと俺の舌が危ない」

「本当にすみません、先輩!!」


 背後から羽交い絞めするのは雅晴。腕で腰に巻き付くのは和成。


「仁樹、考えろ。犠牲は一人の方がいいだろ」

「その犠牲になりたくねェんスよ!」

「なれよ、そのぐらい!!」


 正論を言ったら暴論が返ってきた。


「美佳。悪は俺たちが押さえている。だから早く!!」

「了解!!」

「悪はアンタらだ!! 此処には俺の味方はいねェのか!?」


 犠牲者が決定したからか。自分たちの無事を確信した先輩たちは明らかに楽しんでいる。そして、必死に抵抗しているが為す術の無い仁樹。

 どう見ても仁樹が可哀そうだ。

 可愛そうだから慈悲があるのだろう。

 

「こんにちは~………あれ?」

「えッ、あ?」

「仁樹君、何してるの?」


 予想外の人物が登場してきた。



登場人物紹介


●次屋幸司郎……

グーテンタークの料理長。沙季の夫。

料理の天才。若者を巻き添えにした試食会をよく開催する。


●次屋沙季……

グーテンタークの店長。幸司郎の妻で希世の叔母。

経営の天才。仕事中毒でストレスが溜まると発狂して暴れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ