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神と罪のカルマ  作者: 乃蒼・アローヤンノロジー
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神と罪のカルマ オープニングeighth【04】


「おかしいよなァ。爆発に巻き込まれた時も看板が落ちてきた時も……自分の腹切った時も怖いなんて思ったことがないのによォ」

「もう少しだけ怖いって気持ちを持って欲しいかなぁ。仁樹くんの身体は鉄じゃなくて人の身体なんだから」


 人の身体――

 頬から伝わる朋音の手を感じながら仁樹はその言葉に忘れていたことを思い出した。


「そうだよな……()()()()()()()()()()()()()。眼球も頭も腹も全部急所であることには変わらねェ……」


 『人形』だと。『感情』も『自我』もない存在だと言われてきても、所詮身体は『人』だ。

 その身を切れば赤い血が流れ、その目を潰せば光を失い、その足を失えば自由を奪われる。

 その呼吸を止めれば、その心臓止めれば当たり前のように死ぬ。


 何をいまさら、と。当たり前なことを忘れていた自分の愚かさに頭を抱えたくなる。だが、それよりも前に朋音が両手が仁樹の頬を包み込んだ。


()()()()()()()()。自分を化け物のように言わないで」


 力強い目が間違いを正すように見つめる。

 それはかつて嫌いだった目であり、そして今は強く憧れる目――


「悪ィ……でも、どうしても『人形』であった自分がすぐ傍にいるって思っちまうんだ。今回の事件みたいにまた『人形』に戻っちまうんじゃねェのかって……」


 あの時のように。何も持っていない『無』の自分を。

 何も感じないまま。何も意識しないまま。

 人を次々と襲っていった『人形(自分)』を傍に感じる。


 いまの仁樹は『人形』という皮から抜け出している最中だ。

 だが、最中であって完全に抜け出した訳ではない。

 いつその『皮』を被ってしまうかわからない。


「怖いんだ……あの頃に戻ることが……」


 戻りたくない。

 知ってしまった感情があり過ぎる。その感情を全部誰にも奪われたくない。

 この『恐怖』という感情さえも『人形(自分)』に渡したくない。

 知ってしまった感情が『仁樹(自分)』を弱くする原因になったとしても、必死に胸に抱き込んで蹲ってでも守ってみせる。


「なァ朋音」

「なぁに?」


 その暖かい手に自分の手を重ねる。

 本来ならば触ることすら許されない罪に染まった手でその小さい手を覆い隠す。


()()()()()()()()()()


 人は脆いから。

 その身体も、精神こころも些細なことで深く傷を負い、死んでしまうぐらい脆くて弱い。

 だけど――人は強いから。

 強い、『想い』と『覚悟』があれば身体は精神(こころ)を信頼して動いてくれる。


 『人』は『矛盾』。『矛盾』は『人』。


 例え世界が仁樹という存在を『人』と認めてくれなくても。

 『人』になりたい――


「早く『俺』が俺自身を『人』だと認めたい……」

「うん――大丈夫。その日は絶対くるよ。だって――この『約束の髪』に誓ってくれたもの」


 朋音の手が包んでいた頬沿って――髪に触れた。

 不規則に金と黒で染まった髪を彼女は優しく撫でる。


 『約束の髪』。

 黒である髪は『人形である仁樹(過去の自分)』を表す。

 己の罪。軽蔑する対象。逃れられない真実。

 金である髪は『人である仁樹(未来の自分)』を表す。

 己の願い。渇望する対象。辿り着きたい未来。


 『人形』から『人』になることを誓った――

 それは、〝彼女と共に歩いていくことを誓った証〟――


 罪を犯せば責任が生じる。

 過去を忘れるな。忘れることは大罪だ。

 償いをしろ。例え全てに認められなくても。自己満足だとしても。

 人々から奪った分、人々に与えろ。

 それが財峨仁樹が願う、己を『人』と認めるための必要最低条件だ。


 残りの時間、朋音と共に生きていきたいのなら。

 辛くても罪と向き合え。ボロボロになっても願いに手を伸ばせ。


「大丈夫。絶対に仁樹君の心は私と『約束の髪』が守ってみせる」


 あの雨の日の夜。仁樹は一度、『人形』の皮を被り直しかけた。

 そう……()()()()()()()()。本当に被り直していたら、仁樹は喋ることすらしなかっただろう。

 例え、隣にいなくても。仁樹の心を守る愛しい人の想いはその身に宿る。


「朋音……」

 

 今度は涙で滲むのがわかった。目を瞑ってこらえようとするも叶わない。

 ならばせめて声だけは、と。必死に殺そうとするも詰まらせたような声が抑えきれない。

 そんな仁樹を朋音は我が子をあやすように頭を優しく、本当に優しく撫でていく。


「『人』に、なりたい……」

「仁樹君は『人』だよ。私の大切な愛しい『人』」

「ありがとう……、俺を『人』と言ってくれて……」


 一つ間違えれば何も無い『人形』に戻ってしまう自分を『人』として認められない。

 だけど。もし仁樹が自分自身を『人』だと認められた時が来たら――、

 その時はきっと、彼の中で大きく何かが変わった瞬間なのであろう――……


「『俺』が俺自身を『人』だと認めたら――『約束』」

「うん。『約束』だもん」


 仁樹の自分勝手の約束。それを受け入れてくれた朋音。


『お前が決めた、その『最愛の人への愛』。俺との『約束』にしてくれないか?』


 仁樹が黒髪だった、最後の記憶。

 月明かりが輝く夜の道を二人で並び、初めて恋人として手を繋いで帰った記憶。


『長くなるかもしれない。だけど、俺が俺自身を『人』だと認められたら――』

『〝――――――〟』


 朋音が幼い頃から決めた『愛の証明』。

 いつか彼女の持つたった一つの――〝一途で『揺ぎ無い愛』を誓う男性〟に出会ったときに証明する『愛』。

 その『愛』を。その『約束』を。彼女は待っていてくれる――


「朋音」

「なぁに、仁樹君?」

「愛してる」


 もっと。多く。たくさん。朋音に伝えたい。

 こんなな自分と共にいてくれる彼女に。心の奥から深くから。


 朋音を愛してる、ということを。


(一番最初に思い出させてくれた『愛』という感情を。お前に──……)


「愛しています」

「はい。私も愛しています」


 互いに顔を近づけ、互いの唇が触れる。


 いつか約束が果たされる日を願いながら――

 触れた唇同士が離れ、今度は共に瞳を閉じる。


 仁樹は朋音を抱いてその暖かさを感じながら。

 朋音は仁樹に抱かれてその心音を子守歌に。

 二人はゆっくりと眠りに落ちていく。


 こうして、仁樹は眠ることが出来た――……


すみません……

「え、更新諦めていたと思ってた!!??」という方、本当にすみません。

家出していたモチベーションが戻ってきました。

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